BLしんせいか
教団本部は、街の外れにあった。
いや、「外れ」というより――
隔離されていた。
白い石で組まれた巨大な建築物。
無駄に天井が高く、無駄に左右対称。
正面の門だけで、赤竜亭が丸ごと入るサイズだ。
「……でかすぎない?」 アレンが呟く。
「宗教施設って、こんなもんじゃない?」 セリオが言うが、声が引きつっている。
なぎは、嫌な予感しかしなかった。
門をくぐった瞬間、
**“それ”**が視界に入る。
壁画だ。
広間の壁一面を覆う、巨大なフレスコ画。
そこには――
二人の男が描かれていた。
剣を持つ戦士。
杖を持つ魔法使い。
……顔が、似すぎている。
「え」 アレンが立ち止まる。 「ちょっと待って、あれ」
「俺たちだな」 セリオが即答した。
背景には、神々しい光。
雲。
意味ありげな輪っか。
なぜか上半身はやたら美化されている。
「……誰が描いた」 なぎの声が低くなる。
案内役の信者が、誇らしげに胸を張った。
「昨夜のうちに、急ぎで」
(一晩でここまで?)
さらに進む。
別の壁画。
今度は――
二人が背中合わせで立ち、無数の影から民を守っている図。
「こんな場面、ない」 セリオが言う。
「ないな」 アレンも言う。
信者は微笑む。
「“あったかどうか”は、重要ではありません」
(きたよ)
「重要なのは、“象徴性”です」
最悪の単語が出た。
次の壁画。
二人が同じ杯から酒を飲んでいる。
「飲んでない」 アレン。
「一回もない」 セリオ。
「“杯を分かつ”――」
やめろ。
さらにその奥。
ステンドグラス。
光を通して浮かび上がるのは、
二人が並んで眠っている姿。
布の掛け方が、やたら神話的。
「寝相まで盛るな」 なぎが言った。
「事実を基に、解釈を加えました」 信者は真顔だ。
「基にするな」
床にも問題があった。
モザイク模様で描かれた紋章。
二本の線が絡み合い、円を描く。
「これ、なに」 なぎが聞く。
「お二人の“魂の交差”を表した聖印です」
(聞かなきゃよかった)
アレンが本気で青ざめる。 「俺、今すぐ帰りたい」
「無理」 なぎは即答した。 「ここまで来て“聖人ご本人失踪”は、世界が終わる」
セリオが低く言う。 「もう始まってないか?」
そのとき。
鐘が鳴った。
重く、深く、逃げ場を塞ぐ音。
信者たちが一斉に跪く。
「聖人様方のご到着を――
教祖様に、お伝えいたします」
扉の奥から、
気配だけで分かる“何か”が近づいてくる。
なぎは、壁画の最後の一枚を見た。
そこには、文字が刻まれていた。
――「理由なき親愛は、神に最も近い」
(やばい)
(世界が、もう一段階、踏み込んでる)
なぎは、静かに息を吸った。
「……なあ二人」 「これ、たぶん」
「逃げるタイミング、」 「もう過ぎてる」
教団の扉が、ゆっくりと開いた。




