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BLを聖人認定
「聖書に描かれている二人は、実在の人物だとルミエルから聞いています」
教祖はそう告げ、わずかに顎を上げた。
その声には迷いがなく、疑問を挟む余地すら与えない。
「ですので――」
一拍。
「お二人を、聖人として認定します」
(やめろやめろやめろ)
頭の中で、同時に何度も声が響いた。
それ以上、意味を乗せるな。
それ以上、勝手に物語を足すな。
そいつらは――
ただ仲が良いだけの男二人だ。
使命も、啓示も、救済も、終末も関係ない。
神の声を聞いたこともなければ、世界を導く気もない。
同じ部屋で、
同じ時間に帰ってきて、
飯を食って、
どうでもいい話をして、
並んで寝ていただけだ。
それだけだ。
……なのに。
聖人って、なんだよ。
誰かが意味を与えた瞬間、
それは「ただの関係」ではいられなくなる。
気づけば世界は、
説明も同意もないまま、
BLを――
勝手に神話に仕立て上げ、神格化し始めていた。
この世界、
本当に大丈夫なのか。




