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教祖腐り始める
「お久しぶりです、サクラさま」
ルミエルがそう呼ぶと、女はゆっくりとこちらを向いた。
「久しいな、ルミエル」
落ち着いた声。年齢は分からないが、妙に整った顔立ちをしている。
黒髪、黒い瞳。――日本人みたいだ、と思った。
「隣の方が、“聖典”をお描きになったと聞いたが」
視線が、なぎに向けられる。
「神ナギさまで、相違ないか?」
「ち、違います」
即座に否定した。
「ただの冒険者です。神とか、そういうのじゃないです」
だが次の瞬間、サクラは静かに膝をついた。
「神よ」
床に手をつき、頭を下げる。
「あなたの存在を、より近くで理解したい」
距離が、近い。
(……なんだこいつ)
歳の割にやけに美人だが、想像していた教祖像と違いすぎる。
初対面でこの距離感は、正直きつい。
「ちょ、ちょっと待ってください」
思わず一歩下がる。
「そういうの、やめてください」
サクラはゆっくり顔を上げた。




