教祖BL本を読む
ルミエルは、本を胸に抱いたまま、いつもより背筋を伸ばしていた。
「教祖様への謁見は、三日後です」
「……早くない?」
「通常は半年待ちですが、緊急案件として申請しました」
なぎは、聞き返す気力を失った。
「緊急って、なにが」
「魂の成長に関わる重大事項ですから」
(軽い気持ちで描いた二次創作が、宗教案件に昇格した瞬間である)
「ちなみに、どこまで説明した?」
「はい。
・異性との交わりを伴わず
・自らを高め
・想像力と集中によって
・魂を震わせる修行法、
と」
言葉だけ聞くと、だいぶそれっぽい。
「……絵の内容は?」
「詳細な挿絵が、理解を助けると思いまして」
(やめろォ!!)
「なぎさん」
ルミエルは、少し困ったように微笑んだ。
「教祖様は、常に新しい“高まり方”を探しておられます」
「それ絶対、ろくな結果にならないやつだろ」
「もし正式に認められれば、教義に追加される可能性もあります」
なぎの脳裏に、最悪の未来が浮かぶ。
――異世界新興宗教公式推奨・薄い本。
「私、責任取れないからな?」
「大丈夫です」
なぜか、すごく安心した声で言われた。
「なぎさんは“導いた側”ですから」
(やめてくれ。その言い方が一番まずい)
三日後。
なぎは、自分が異世界で一番行きたくなかった場所に立つことになる。
――教祖様の間。
(どうしてこうなった)




