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腐女子の執念

るみえるの寝息が、規則正しく聞こえてきてから、

私はそっと体を起こした。

ベッドを軋ませないように、

息を殺して、机へ向かう。

ランプに小さく火を入れると、

薄い橙色の光が、机の上だけを照らした。

――今だ。

あの二人の顔が、脳裏に浮かぶ。

剣士の背中、

魔法使いの指先。

戦闘中に交わした視線。

無意識に、距離が近すぎる立ち位置。

これはもう、運命だ。

私が書かなきゃ、誰が書く。

紙を引き寄せ、ペンを握る。

手は少し震えていたけれど、

それは恐怖じゃない。

高揚だ。

「……はやく、書かなきゃ」

小さく呟いて、息を整える。

今日は徹夜でも構わない。

明日の疲労?

そんなものは、あとで考えればいい。

異世界に来て、

命がけの冒険をして、

それでも――これを書かずに眠れるわけがない。

私はペンを走らせた。

音を立てないように、

でも、迷いなく。

ランプの光の下、

夜は静かに、更けていった。

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