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腐女子の指名
早急に帰らなければならない。
そんな考えが、唐突に頭に浮かんだ。
アレンとセリオの薄い本を書くこと。
それが、私がこの世界に来た理由なんだ。
たぶん。
……いや、違う。
ぜったいに、そうだ。
根拠なんて何ひとつないのに、
その確信だけは不思議なほど揺るがなかった。
このままダンジョンの奥に進んだら、
体力も、精神も、いろいろな意味で削られていく。
それに――
これ以上ここにいたら、
私の妄想が、現実に追いついてしまいそうで怖かった。
「……みんな、これ以上消耗したら命に関わるわ」
自分でも驚くほど、
声は落ち着いていた。
冗談みたいなことを考えていたくせに、
口から出た言葉だけは、やけに現実的だった。
「早急に、帰りましょう」
私は一歩前に出て、
仲間たちを見回しながら、
撤退――帰還を提案した。




