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いけない妄想

「あのパーティー、210号室の人たちだよね」

酒場の隅で、なぎは声を潜めて言った。

ダンジョン前で準備をしている、男戦士と男魔法使いの二人組を顎で指す。

「……そうですね。装備と顔、一致します」

「男二人で相部屋ってさ……そういうことだよね」

「どういうことですか?」

即答だった。

本気でわからない顔だ。

「だから……男二人で同じ部屋だったら、やること決まってるじゃん」

「?」

ルミエルは首を傾げる。

「就寝、装備の手入れ、魔力循環の確認……ですか?」

「いや、そうじゃなくて!」

「夜番を交代で行う、という意味でしょうか」

「違う!」

「では、どの行為を指しているのですか?」

真顔で聞き返されて、なぎは言葉に詰まった。

「……いや、いい。忘れて」

「?」

ルミエルは不思議そうにしながらも、それ以上追及しなかった。

(この人、ほんとに何も知らないのか

 それとも、知ってて全部聖別してるのか……)

なぎは、210号室の二人組を見る。

二人は普通に地図を広げ、戦術を話し合っていた。

「……たぶん、俺が汚れてるだけだな」

「?」

「なんでもない。ダンジョン行こう」

「はい」

ルミエルは頷き、ゴブリンの干し肉を一口かじった。

――やっぱりこの世界、ズレてる。

そして一番ズレてるのは、たぶんこのシスターだ。

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