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シスター酒をのむ

「……ところで」

料理を食べ終えたあと、ルミエルはカウンターに視線を向けた。

「その琥珀色の液体は、何ですか?」

「あ? 酒だが」

バルドが当たり前のように答える。

「お酒……」

ルミエルは少し考え込むようにしてから、私の方を見た。

「修道女でも、飲んでいいのでしょうか」

「いや、私に聞かれても」

「私の宗派では、依存しなければ問題ありません」

そう言って、彼女は席についた。

バルドがニヤリと笑う。

「度数は強えぞ?」

「構いません」

グラスに注がれた酒を、ルミエルは一度だけ香りを確かめ、

――躊躇なく飲み干した。

「……っ」

一拍遅れて、頬がほんのり赤くなる。

「からい……でも、身体が温まりますね」

「修道女が言う感想じゃねえな」

「神は寒さよりも、判断力の低下を戒めています」

そう言いながら、彼女は二杯目を要求した。

「え、飲むの?」

「ダンジョンでは血を流しますから。

ここでは、血以外を流したいですね」

意味が分からない。

三杯目に入ったあたりで、ルミエルの口数が増えた。

「なぎさん」

「なに」

「あなた、死にかけたのに、まだダンジョンに行くつもりでしょう」

「……まあ」

「では次は、私が前に立ちます」

グラスを持つ手は少し揺れているのに、目だけは真剣だった。

「弱いまま死ぬのは、神の敵ではありません。

でも――学ばずに死ぬのは、罪です」

その言葉だけは、酒に酔っていなかった。

「……シスター」

「はい」

「酔ってる?」

「少し」

正直だ。

赤竜亭の喧騒の中、

金髪碧眼の修道女は酒を飲み、

私は思った。

――この人、ヒロインだわ。

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