全滅降伏
祝勝会の空気が、まだ完全に緩みきらないうちだった。
扉の前に控えていた近衛が、短く名を告げる。
「――ローマ公国より、使者です」
大広間に、わずかな緊張が走る。
女王
「通しなさい」
扉が開き、黒衣の男が一歩進み出た。
装飾は控えめだが、立ち居振る舞いには明確な格式があった。
その場で片膝をつき、深く頭を垂れる。
ローマ公国使者
「女王陛下」
女王
「用件を」
使者は一瞬だけ言葉を探すように息を整え、
そして、はっきりと告げた。
ローマ公国使者
「我々ローマ公国は――
全軍、全権をもって、降伏いたします」
沈黙。
誰も杯を置かない。
誰も驚きの声を上げない。
ただ、その言葉の重さだけが、場に落ちた。
アレン
「……早いな」
セリオ
「合理的です。戦う理由がありません」
女王は表情を崩さず、使者を見下ろした。
女王
「条件は?」
ローマ公国使者
「領土、軍備、外交権。
すべて、女王陛下の裁定に従います」
その言葉に、使者自身の声がわずかに震えた。
女王は、ゆっくりと視線を巡らせ、
ナギ、セリオ、そしてサクラを見る。
サクラは、状況がよく分かっていない顔をしていた。
サクラ
「……もう、終わりですか?」
ナギ
「ああ。少なくとも、“戦争”はな」
女王は一度だけ目を閉じ、
そして、静かに告げた。
女王
「ローマ公国の降伏、受理します」
その瞬間、
この戦争が「完全に終わった」ことを、
全員が理解した。




