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法王の最後

(信仰を守れたのか、否か)

王都の大聖堂は、まだ崩れてはいなかった。

だが、祈りの声はもう無い。

ザビエルは一人、祭壇の前に立っていた。

報告書はすべて読み終え、机の上には積まれている。

――公国軍、壊滅。

――戦線、消失。

――敵影、単騎。

「……神よ」

声に力はなかった。

祈りというより、確認に近い。

側近たちは既に逃げた。

異端審問を進言したあの男も、どこかへ消えた。

ザビエルだけが残った。

彼は理解していた。

あれは「異端」などではない。

奇跡でもない。

悪魔でもない。

あれは、神の外にいる存在だ。

だからこそ、恐ろしかった。

信仰とは、神の理解の内側に世界を収める行為だ。

だが、サクラは理解の外にいた。

祈りも、裁きも、意味を持たない。

ザビエルは震える指で聖印を握りしめた。

「私は……間違っていない」

そう言い聞かせるように呟く。

だが、次の言葉が続かない。

自分は、神の名で戦争を始めた。

神の名で、敵を異端と呼んだ。

神の名で、人を殺した。

そして今、

神は何も語らない。

「……沈黙もまた、神の御心か?」

問いかけた瞬間、

自分でも気づいた。

それは祈りではなく、言い訳だった。

床に膝をつく。

額を石畳に押しつける。

信仰は、まだここにある。

だが、確信はもう無い。

ザビエルは最後に一度だけ、顔を上げた。

「もし、私が間違っていたのなら……」

言葉はそこで途切れた。

赦しを乞う言葉を、彼は最後まで言えなかった。

それでも立ち上がり、剣を取る。

逃げなかった。

投げ出さなかった。

ただ、信じきれなかった。

それが、ザビエルの最期だった。

歴史書にはこう記される。

法王ザビエルは、異端に敗れたのではない。

彼は、神の沈黙に敗れた。

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