タイトル未定2026/01/01 12:38
最初に異変に気づいたのは、前線の歩哨だった。
「……空が、おかしい」
見上げた空は、雲一つないはずだった。
だが次の瞬間、星のような光が一つ、昼空に浮かび上がる。
「魔法……か?」
否定する声は、誰からも出なかった。
あまりにも規模が違いすぎた。
後方陣地にいた将校が、慌てて伝令に叫ぶ。
「魔法使いを探せ! 詠唱だ、長い詠唱が来るぞ!」
だが――
来なかった。
公国軍の頭上、ただ一人、空に立つ影があった。
黒い外套。杖も魔法陣もない。
それなのに、空そのものが、その存在を中心に歪んでいる。
「……あれは、何だ」
誰かが呟いた瞬間、声が届いた。
サクラ
「メテオ」
たった一言だった。
短文詠唱ですらなかった。
次の瞬間、空が割れた。
星が落ちる。
否、星ではない。
大地を滅ぼすためだけに存在する、質量と熱と魔力の塊。
逃げる暇はなかった。
祈る時間もなかった。
光。
衝撃。
そして――音すら消える。
数万人いたはずの公国軍は、
悲鳴を上げることすら許されず、地表から消失した。
焦土だけが残る。
生き残った者はいなかった。
報告も、証言もない。
ただ、遠く離れた後方で、
この光景を“感じ取ってしまった”魔術師が、膝から崩れ落ちた。
「……神の、加護……?」
違う。
あれは、加護ではない。
この世界の理が、
一人の魔法使いに譲歩した結果だ。
そして、人々は気づく。
神が戦場に立ったのではない。
神が「受け入れる」と決めた人間が、
そこにいただけなのだと。




