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ザビエルドン引き

ザビエルは報告を、途中までしか読まなかった。

紙を握る指に、力が入る。

「……くだらん」

幕舎の中の空気が固まる。

将校

「ですが、敵軍の士気は――」

ザビエル

「黙れ」

報告書を卓に叩きつける。

ザビエル

「敵兵を食うなど、ただの冒涜だ。

神の名を借りた獣にすぎん」

将校が恐る恐る言う。

「自軍の兵には手を出していないようで……

そこは、一線を――」

ザビエル

「線?」

ザビエルは鼻で笑った。

ザビエル

「そんなものは、都合よく引き直せる。

今日は敵、明日は味方だ」

幕舎の外から、兵たちのざわめきが聞こえる。

誰かが吐いたらしい音も混じっていた。

ザビエル

「聞いているだろう。

兵が動揺するのは当然だ」

将校

「では、どのように――」

ザビエル

「“人を喰らう異端”として広めろ」

即断だった。

ザビエル

「理解しようとするな。

理解した瞬間、心が引きずられる」

一歩、前に出て低く言う。

ザビエル

「信仰とは、考えるためのものではない。

信じ切るためのものだ」

外で、兵が乾いたパンを落とす音がした。

ザビエルはそれを一瞥もせず、祈りの姿勢を取る。

ザビエル

「神は試しておられるのだ。

あのような忌まわしい姿を見せてまで、

我らの純潔を量っている」

だが、その言葉に

確信はなかった。

祈りの声が、幕舎の中で空しく反響する。

その夜、

ザビエル軍の兵たちは

敵の強さではなく、敵の“異様さ”に怯え、

士気だけが、理由の分からないまま沈んでいった。

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