前線
前線・ザビエル軍との遭遇戦。
女王軍先遣隊の後方。
なぎPTは「切り札」扱いで配置されたが、本人たちは特に何もしていない。
「……で、私たちは何をすればいいの?」
なぎが首をかしげる。
剣も抜いていない。
アレンが前を見る。
「いや、普通に戦況見るだけでいいんじゃないか?」
セリオもうなずく。
「命令も来てないしな」
その横で、サクラがなぜかパンパンに膨らんだ布袋を抱えている。
「サクラ、それ何だ?」
「布教用です」
「戦場だぞ?」
「戦場だからです!」
意味がわからない。
――その時。
前線から伝令が走ってくる。
「敵左翼、なぜか崩れました!!」
全員「?」
なぎがきょとんとする。
「……なにかあったの?」
アレンが双眼鏡を見る。
「いや、敵の隊長が馬から落ちたらしい」
セリオ「偶然だな」
さらに別の伝令。
「敵、陣形を立て直そうとしてますが……強風で旗が絡まりました!」
なぎ「風?」
サクラ(小声)
「神の息吹……」
「言うな」
次の瞬間。
ドン!!!!!
前線で爆音。
「敵の火薬庫が、なぜか誘爆しました!!」
沈黙。
アレン「……なぎ」
なぎ「なに?」
アレン「何もしてないよな?」
なぎ「してない」
セリオ「見てただけだよな?」
なぎ「うん」
全員がサクラを見る。
サクラは両手を広げて叫んだ。
「見ましたか皆さん!!!」
「これが!!」
「神ナギ様の!!」
「なにもしてないのに勝つ奇跡です!!」
「盛るな!!!」
しかし遅かった。
前線の兵士たちがざわつき始める。
「おい……」
「今、後ろにいるのって……」
「神らしいぞ」
「何もしてないのに勝ってる」
「マジかよ……」
士気ゲージが音を立てて上がる。
なぎは本気で困惑する。
「え、なんで盛り上がってるの?」
アレン「知らん」
セリオ「俺らも怖い」
サクラはすでに兵士に囲まれていた。
「信じる者は剣を振らずとも勝つ!」
「具体的な理屈はありません!!」
「適当すぎるだろ!!」
その頃、ザビエル軍側。
「……報告しろ」
「はっ」
「敵は特に動いていません」
「ですが、我が軍の士気が下がり」
「敵の士気だけが異常に高いです」
「なぜだ」
「わかりません」
再び女王軍側。
女王が静かにつぶやく。
「……勝っているのね?」
副官「はい。理由は不明ですが」
なぎは小さく言った。
「私、帰っていい?」
サクラ「ダメです!!」
こうして、
なぎPTは
「なにもしてないのに勝つ部隊」
として前線に名を刻んだのだった。




