謎の士気
【王城・軍規編纂室】
机の上には分厚い書類の山。
その一番上に、新しい項目が追加されていた。
『第七章・士気維持について』
書記官:
「……女王陛下、こちらですが」
女王:
「読み上げてください」
書記官:
「はい。
『補給時、兵士の精神安定のため、
サクラ教教祖による声掛けを推奨する』」
女王:
「……」
アレン:
「待て」
セリオ:
「いつの間に“推奨”になった」
書記官:
「続きます。
『なお、信仰は任意とする。
信じない方が効果が高いとの報告あり』」
アレン:
「理論が破綻してる」
セリオ:
「軍の公式文書に載せる内容じゃない」
(扉が開く)
サクラ:
「呼ばれた?」
女王:
「サクラ」
「これはあなたの活動ですか」
サクラ:
「はい!」
「現場の声を反映しました!」
アレン:
「勝手に反映するな」
サクラ:
「でも見て!」
「士気、三割増しよ!」
セリオ:
「理由が“よくわからない安心感”ってなんだ」
ナギ:
「……それ、私関係ある?」
書記官:
「神ナギ様の存在が背景にあると」
ナギ:
「やめて」
女王:
「……」
女王はしばらく沈黙し、言った。
女王:
「“正式採用”は保留します」
サクラ:
「えー!」
女王:
「ですが」
(全員、注目)
女王:
「“黙認”はします」
サクラ:
「実質OK!!」
アレン:
「一番危ない判断だ」
セリオ:
「載らないけど消えないやつだな」
ナギ:
「なんで広がるの……」
――――――――――
【東部・ザビエル軍 本営】
重苦しい空気の中、
ザビエル側の将軍たちが集まっていた。
将軍A:
「……報告を」
参謀:
「敵軍ですが」
(地図を指す)
参謀:
「兵力は確実に我々が上です」
将軍B:
「では、なぜ負ける」
参謀:
「それが……」
書類をめくる。
参謀:
「敵兵の士気が異常です」
将軍A:
「異常?」
参謀:
「はい」
「包囲されても動揺しません」
「不利でも笑っています」
将軍B:
「正気か?」
参謀:
「理由を分析しましたが」
(沈黙)
参謀:
「“よくわからないが勝てる気がする”そうです」
将軍A:
「……それは戦術か?」
参謀:
「いえ」
将軍B:
「信仰か?」
参謀:
「宗教らしいですが」
(資料を差し出す)
参謀:
「“信じなくていい宗教”とのことです」
将軍A:
「意味が分からん」
将軍B:
「神は?」
参謀:
「女の子です」
将軍A:
「???」
将軍B:
「敵は正気なのか?」
参謀:
「さらに」
「教祖は最下位で、雑用をしています」
将軍A:
「……」
将軍B:
「……」
将軍A:
「理解できる要素が一つもない」
参謀:
「ですが」
(はっきりと)
参謀:
「戦場では、事実として」
「彼らは“なぜか”勝っています」
将軍B:
「偶然か?」
参謀:
「すべてが偶然です」
将軍A:
「……一番厄介だな」
ザビエル側本営に、
重い沈黙が落ちた。




