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士気あがる

王城・兵舎。


戦争前夜。

本来なら重苦しい空気になるはずの場所で――

なぜか、ざわざわと妙な盛り上がりが起きていた。


「なあ、お前それ持ってる?」

「持ってる持ってる」


若い兵士が、懐から一枚の紙を取り出す。


―――

【神ナギ様に祈るとこうなる】

・敵が減る(予定)

・怖くなくなる(気分)

・たぶん勝つ

―――


「これ、昼に配られたやつだろ」

「教祖直筆らしいぞ」


「雑じゃね?」

「雑だけど、なんか効きそうじゃね?」


別の兵士が真顔で言った。


「昨日さ」

「これ読んでから寝たら」

「夢に光る女の子出てきた」


「それ神じゃね?」

「神だな」


信仰、成立。


そこへ古参兵が割って入る。


「お前ら」

「その紙、どこで手に入れた」


「教祖様が自ら配ってました!」

「雑用しながら!」


「……教祖が?」


古参兵は眉をひそめる。


「普通、教祖って」

「もっと偉そうじゃないか?」


「それがですね」

若い兵士が誇らしげに言う。


「サクラ教では」

「教祖が一番下らしいです」


「は?」


「雑用担当で」

「支給管理して」

「神と聖人の下で働くそうです」


「……なんだそれ」


別の兵士が腕を組む。


「でもよ」

「一番下のやつが」

「一番前線に立ってる宗教って」

「ちょっと信用できね?」


沈黙。


「……確かに」


その時、兵舎の外が少し明るくなった。


「今、光らなかった?」

「雲の切れ目じゃね?」


「いや」

「さっきも光ったぞ」


「神、近くにいない?」


ざわつく兵士たち。


そこへ、息を切らした伝令兵が飛び込んできた。


「聞いてくれ!」

「隣の中隊!」


「何があった?」


「全員」

「出陣前に祈ってた!」


「どこに!?」


「神ナギ様に!!」


兵舎が静まり返る。


そして誰かが呟いた。


「……これ」

「もう信仰だろ」


「うちの部隊もやるか?」

「やっとくか」

「減るかもしれないし、敵」


誰かが紙を掲げる。


「神ナギ様に祈ります!」


「「「おおー……」」」


こうして、

戦争前夜の王国軍では、

いつの間にか――


・出陣前に祈る

・神の話をすると安心する

・教祖サクラを見かけると縁起がいい


という、

**よくわからない習慣**が定着し始めていた。


なお、

当の教祖サクラはというと――


「お水持ってきました!」

「祈祷用紙足りてますか!?」

「追加刷りますね!!」


誰よりも忙しく走り回っていた。


それを見た兵士が呟く。


「……あの人が一番」

「信じていい気がする」


信仰、完全定着である。

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