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シスターのゴブリン調理

シスターは迷いなく、ゴブリンの死骸を引きずり始めた。

「ちょ、ちょっと待って! それ本気で食べる気ですか!?」

「はい。可食部も多く、魔力含有量も高いです」

「そんな説明いらないですから!」

私は目を逸らしながら叫んだが、シスターは淡々と解体を始める。

手際が異様にいい。まるで魚を捌くみたいだ。

「まず内臓は除去します。胆嚢は毒性があるので破棄。

血は魔力臭が強いので洗い流します」

「……慣れてません?」

「修道院では、貧しい村の救済も行いますから」

いやそれゴブリン関係ある?

ゴブリンの肉は、思ったより赤く、筋肉質だった。

臭いも強烈というほどではない。

「下処理さえすれば、

・干し肉

・スープ

・香草焼き

に向いています」

「選択肢が現実的すぎる……」

シスターは、腰の袋から塩と乾燥ハーブを取り出した。

「常備品です」

「なんで常備してるんですか!?」

「ダンジョンでは、食料は自給が基本ですから」

火を起こし、小鍋に水を張る。

肉を小さく刻み、香草と一緒に放り込む。

ぐつぐつと煮える音。

……不思議と、さっきまでの地獄みたいな恐怖が薄れていく。

「味は……」

「最初は抵抗ありますが、

脂が少なく、腹持ちが良いです」

「感想が完全にサバイバルなんですよ……」

一口、恐る恐るスープを飲む。

――あれ?

「……まずくない」

「でしょう?」

薄味だが、体が温まる。

何より、生きてる実感があった。

「ゴブリンは弱い個体が多いですが、

数が出やすく、再生産も早い。

初心者の食料源としては優秀です」

「そんな観点で見たことなかった……」

シスターは私を見て、少しだけ微笑った。

「あなたは運がいいです。

初めてのダンジョンで“食べられる敵”を学べたのですから」

その言葉を聞いて、私は思った。

――冒険者って、

剣を振るうだけじゃ、生き残れないんだ。

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