緊急会議
王城中央に位置する円卓の間には、夜が明けきらぬうちから重臣たちが集められていた。
高く吊るされた燭台の火が揺れ、石壁に落ちる影は、まるで互いを疑うかのように歪んでいる。
「――陛下ザビエルの挙兵は事実か」
沈黙を破ったのは、白髪の宰相だった。
低く押し殺した声でありながら、その一言は場の空気をさらに張り詰めさせる。
「確認されております」
情報局長が一歩前に出る。
「西方三州にて蜂起。聖職者を中心に支持を集め、すでに一万近い兵を動員している模様です」
ざわめきが広がった。
一万――それは単なる暴徒の規模ではない。
明確な意志と準備を伴った、反乱軍の数だった。
「信仰を盾にするとは……」
軍務卿が歯噛みする。
「民は神の名に弱い。鎮圧は容易ではありませんぞ」
「問題はそれだけではない」
今度は外務卿が口を開いた。
その顔色は、燭台の光を受けて青白く見える。
「北方、聖ローマ公国が兵を集結させています。すでに騎士団二個隊、歩兵四個連隊が国境付近に展開中との報告が」
円卓の間が、完全な沈黙に包まれた。
「……介入する気か」
誰かが、絞り出すように呟いた。
「名目はいくらでも立ちます」
外務卿は首を横に振る。
「信仰の保護、秩序の回復、異端討伐……ザビエルの反乱は、彼らにとって都合が良すぎる」
宰相はゆっくりと円卓を見渡した。
老いたその眼差しには、疲労と覚悟が同時に宿っている。
「つまり我々は、内乱を鎮めねばならぬ一方で、外敵の侵攻にも備えねばならぬということか」
「二正面戦争になりますな」
軍務卿が苦々しく答えた。
重臣たちの間に、焦燥が滲む。
誰もが理解していた。
この会議での判断一つが、国の命運を左右するということを。
「時間はない」
宰相は静かに言った。
「ザビエルを放置すれば、支持はさらに広がる。だが、軍を動かせば聖ローマ公国に隙を見せる」
円卓の中央で、燭台の火が大きく揺れた。
まるで、この国の未来そのものが、風に晒されているかのように。
「――選ばねばならぬな」
その言葉に、誰も答えなかった。
答えを口にするには、あまりにも重すぎたからだ。




