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戦争のにおい

陛下ザビエルが反乱を起こした――。

その一報は、夜明け前の王都に不吉な鐘の音のように響き渡った。


信仰の名のもとに掲げられた挙兵は、しかし誰の目にも明らかな叛逆であった。

ザビエルは自らを「神意を代行する者」と称し、王権と聖職の双方を否定する声明を発表。

それに呼応するように、地方の司祭や不満を抱えた貴族、さらには行き場を失った傭兵団までもが彼のもとへ集い始めているという。


王都では動揺が広がっていた。

民は噂話に耳を塞ぎ、貴族たちは互いの腹を探り合い、王城の回廊には重苦しい沈黙が満ちている。

誰が味方で、誰が敵なのか――もはや、確かなものは何一つなかった。


さらに追い打ちをかけるように、北方国境からも不穏な報せが届く。

隣国、聖ローマ公国が兵を集めているというのだ。

それは表向きには「信仰の秩序を守るための備え」とされているが、実態は明白だった。

補給路はすでに確保され、騎士団は動員され、司教による祝福の儀式までが密かに執り行われている。


この内乱を、彼らが好機と見ていることは疑いようがない。

ザビエルの反乱に介入する名目で国境を越えれば、それはもはや援軍ではなく侵攻だ。


一つの反乱が、やがて国を割り、信仰を裂き、戦火を大陸全土へ広げていく。

その予兆を、王都の誰もが感じ取っていた。


そしてまだ、この戦争の本当の始まりすら、告げられてはいなかった。

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