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ザビエルによる聖戦宣言文
ザビエルは、密かに兵を集めていた。
それは徴兵ではない。
命令でもない。
呼びかけですらなかった。
ただ――居場所を失った者たちが、集まってきた。
異端審問で職を失った下級聖職者。
サクラ教を受け入れられず、教会を追われた信徒。
女王の改革で地位を奪われた地方貴族。
そして、信仰を理由に剣を抜く意味を探していた若者たち。
彼らは自らを「兵」とは呼ばない。
「巡礼者」だ。
「回復を望む者」だ。
夜ごと、修道院の地下。
廃聖堂の裏。
国境沿いの農村。
ザビエルは一人ずつ会った。
演説はしない。
奇跡も見せない。
ただ、こう言う。
「神は、まだこの国を見捨てていない」
それだけで、十分だった。
聖ローマ公国からは、
剣が流れた。
鎧が流れた。
古い聖旗が、慎重に運び込まれた。
正式な支援ではない。
記録にも残らない。
だが、確実な“後ろ盾”だった。
兵の数は、少しずつ増える。
十人が百に。
百が、いつのまにか千に。
ザビエルは数を数えなかった。
数えれば、それは軍になる。
彼が欲しいのは――信仰だった。
それでも、
夜、一人になると、
彼は必ず同じ祈りを繰り返した。
「これは、私の戦いではない」
何度も。
何度も。
そう言い聞かせるように。
遠くで、王都の鐘が鳴る。
それはもう、彼の神のための鐘ではない。
だがザビエルは、
その音を“挑発”だと解釈した。
――準備は、整いつつあった。




