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最下層ボス調理

わたしは、床に残った最下層ボスの残骸を指さした。


「……店長」

「帰る前に、こいつ調理してよ」


一瞬、空気が止まる。


アレンがゆっくりと振り向き、

シスターは「え?」と小さく声を漏らした。


店長は残骸と、わたしを交互に見て――

深く、ため息をついた。


「お前なあ……」

「最下層ボスだぞ?」


そう言いながらも、

剣を握る手は、もう慣れた動きだった。


「部位によるな」

「魔核はそのまま売れ」

「外殻は硬すぎる、出汁にもならん」


淡々と、解体の算段を始めている。


――やるんだ。


店長は剣を軽く振るい、

今度は《切るための一閃》を放った。


炎は使わない。

骨と筋を正確に断ち、

肉だけを無駄なく切り分けていく。


「火を通せばいけるのは、ここ」

「内臓は処理を間違えると毒になるから捨てろ」


まるで、

いつもの仕込み作業のような手際だった。


アレンが引きつった笑顔で聞く。


「……これ、食べられるんですか?」


店長は顔を上げずに答える。


「食えるかどうかじゃない」

「どう食うか、だ」


切り分けられた肉から、

ほのかに魔力の香りが立ち上る。


「持ち帰るぞ」

「赤竜亭で調理すりゃ、看板一歩手前だ」


そう言って、店長はふっと笑った。


「……ああ、もちろん」

「調理代は、別料金な」


――結局、

一番強かったのは、その現実主義だった。

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