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最下層ボス
最下層ボスが、動いた。
ただ一歩。
それだけで――
ドンッ!!!
衝撃が爆発し、
全員が吹き飛ばされた。
壁に叩きつけられ、
床を転がる。
「がっ……!」
アレンが血を吐く。
剣は、砕けていた。
セリオは詠唱を試みるが、
言葉が途中で途切れる。
「魔力……持っていかれて……」
ナギは立ち上がろうとして、
膝から崩れ落ちた。
「……力、入らない……」
最下層ボスは、
ゆっくりと腕を振る。
それだけで、
空間が裂ける。
見えない刃が走り、
アレンの鎧が裂け、
セリオが壁に叩き伏せられる。
「……逃げ、ろ……」
アレンの声は、もう掠れていた。
ナギの視界が暗くなる。
(……ここまで、か)
そのとき。
ルミエルが、
一人だけ、立っていた。
だが――
彼女の息も荒く、
肩が震えている。
最下層ボスが、
初めて彼女を見た。
『……まだ、立つか』
次の瞬間。
拳。
直撃。
ルミエルの体が宙を舞い、
床に叩きつけられる。
動かない。
完全に、
詰み。
最下層ボスは、
全員を見下ろし、
低く告げた。
『調理されるのは――』
『お前たちだ』
ナギの意識が、
途切れかけた、その瞬間。
床に伏したルミエルの指が、
わずかに、動いた。
モーニングスターが、
床を引きずる音。
カラン……。
まだ、
終わっていなかった。




