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最下層へ

さらに、さらに下層。


階段はいつの間にか、

「降りる」というより

「吸い込まれる」形に変わっていた。


空気が重い。

息をするだけで、

体力が削られていく感覚。


「……ここ」

ナギが小さく呟く。

「最下層だよね」


返事はない。


代わりに――


ゴゥン……ゴゥン……


心臓の鼓動のような音が、

ダンジョン全体から響いていた。


広間。


天井は見えず、

床は赤黒く脈打っている。


中央に立つのは――

玉座。


そして、そこに座る“それ”。


人型。

だが、皮膚は石と肉の中間。

無数の傷跡。

首には鎖。


目が、ゆっくりとこちらを向く。


『……来たか』


声だけで、

膝が笑う。


「……ボス、だな」

アレンが剣を握り直す。

手が震えている。


セリオは魔力を練ろうとして、

顔をしかめた。


「魔力濃度……異常だ」

「詠唱、通らないかもしれない」


ナギは唾を飲み、

一歩前に出た。


「倒せば……」

「終わりだよね」


その瞬間。


玉座の存在が、

ゆっくりと立ち上がった。


床が、割れる。


『終わり?』


低く、嗤う。


『ここは――』

『“厨房”だ』


空気が、

完全に敵意へと変わった。


ルミエルは、

静かにモーニングスターを握る。


「……最下層は」


一拍。


「下処理が、難しいですね」


最下層ボスが、

一歩、踏み出した。


本当の戦闘が、

始まろうとしていた。

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