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モーニングシスター

店長からもらった給料で、いちばん安い剣を買った。

少し重いけど、振れないほどじゃない。

「今日は一匹倒したら帰ってこい」

そう言われていたのを、思い出す。

ダンジョンの入口に立つと、心臓がうるさい。

動悸が、耳まで響いてくる。

階段を降り、最初の空間に入る。

――何もない。

さらに奥へ進んだ。

「……いた」

ゴブリン。

私は、考える前に剣を振り下ろした。

一撃。

ゴブリンはあっさり倒れた。

「……やった」

バイトと、店長の料理のおかげだ。

そう思った瞬間、緊張が切れた。

私はその場に座り込んだ。

――その時。

奥の通路から、足音。

ゴブリンが、四匹。

慌てて立ち上がり、入口側へ逃げようとする。

だが、そこにもいた。

さっきまで、いなかった。

(……ダンジョンが、生んだ?)

戦って勝てる数じゃない。

逃げ場もない。

足が、動かない。

恐怖で、腰が抜けた。

「……助けて」

ゴブリンたちが、ゆっくり近づいてくる。

もう、終わりだ。

そう思った、その瞬間。

「――神に仇なす者たちよ」

低く、澄んだ声が響いた。

「肉塊に還りたまえ」

次の瞬間、風を裂く音。

修道服の女が、モーニングスターを振り回した。

一撃。

二撃。

ゴブリンたちは、一瞬で動かなくなった。

「……間に合いましたね」

そう言って、女は私に駆け寄る。

「大丈夫ですか? 傷、治します」

光が、視界を包む。

《ヒール》

痛みが、消えた。

顔を上げると、

金髪碧眼の修道服の少女が、そこにいた。

まるで――

天使みたいだった。

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