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静かな一日

作者: SekiGremory
掲載日:2025/12/18

朝は、カーテンの隙間から差し込む光で始まった。

目覚ましの音はない。誰かに呼ばれることもない。

部屋が少しずつ明るくなり、夜が終わったことを知らせるだけだった。


彼はしばらく目を開けたまま天井を見てから、ゆっくりと身体を起こした。

机の隅に置かれたパソコンは、昨夜のままスリープ状態で、小さなランプが淡く点滅している。

扇風機が一定のリズムで回り、外からはまばらな車の音が聞こえた。

すべてが、いつも通りの位置にあった。


顔を洗いに立ち上がる。水は冷たく、鏡は少し曇っている。

特別に確認することは何もなかった。

机に戻り、パソコンの電源を入れる。

画面が、いつもよりわずかに遅れて明るくなった。


新しい通知はなかった。

それで気分が沈むこともない。


作業中のプロジェクトを開く。

保存されていないファイルが一つ、画面の端に残っていた。

数行のコードを読み返し、小さなミスを直して保存する。

軽いクリック音が鳴る。

彼はその音に慣れていた。

物事が、とても小さく、とても静かに前へ進む感覚にも。


時間は、区切りなく流れていく。

彼は原稿のほうにも手を伸ばした。重要な章ではない。

文章を少し整え、余分な一文を削り、短い一行を足す。

今すぐ完成させる必要はなかった。

ただ、触れておくことで、自分がまだここにいると確かめる。


気づけば、同じ姿勢のまま長く座っていた。

立ち上がり、キッチンへ向かう。

朝食は簡単なものだった。パン一枚と、水。

ゆっくり食べる。スマートフォンは見ない。

返す必要のあるメッセージは、ない。


机に戻ると、光の角度が変わっていた。

太陽が高くなり、机の端を照らしている。

彼はカーテンを少しだけ引いた。

画面が見やすくなり、作業を再開する。


ビルドが通らないこともある。

ログを読み、エラーの行を探し、修正する。

もう一度実行する。

今度は問題なく動いた。

彼は特別な反応を示さなかった。

こうなるべきだった、という程度の納得だけが残る。


昼になって、ようやく空腹を自覚した。

画面の時計が時間を示している。

外へ出て、いつもの店で食事を買う。

多くを注文する必要はない。

持ち帰り、ひとりで食べる。

料理はすぐに冷めたが、最後まで食べきった。


昼の時間は、ほとんど音もなく過ぎていった。

ベッドに横になり、完全には眠らず、目を閉じる。

白い天井には、数えるものが何もない。

しばらくして起き上がり、再び机に向かう。


午後は、午前とよく似ているが、少しだけ遅い。

音楽を流し、止め、また流して音量を下げる。

結局、そのままにした。

他の誰も気づかないような細かい部分を整える。

行間。

同じ言葉の繰り返し。

少し長すぎる一文。


ふと、窓の外を見る。

空の色が変わっていた。

特別な出来事は起こらない。

ただ、光の向きが変わり、影が長くなる。


ファイルをもう一度保存し、新しい名前を付ける。

誰かに送って確認してもらう相手はいない。

それでも問題はなかった。

仕事はそこに残る。

見られなくても、消えるわけではない。


外が暗くなり、彼は立ち上がって灯りをつける。

黄色い光が部屋を満たす。

机の上を少し整え、パソコンの電源を切った。

画面がゆっくりと暗くなり、ランプが消える。


夕食も簡単に済ませる。

皿を洗い、乾かす。

動作は決まった順番で進む。

考える必要はない。


眠る前、ベッドに横になり、もう一度天井を見る。

今日という日は、昨日と大きく変わらなかった。

明日も、たぶん同じだろう。


彼は灯りを消した。

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