図書室ではお静かに
登場人物紹介
主人公
森崎 紡 (もりさき つむぐ)
:2年特別進学科S組の成績筆頭者。趣味は読書と作詩、個人の作詩したものをネットに上げており、フォロワーは1.1万人。奨学金試験を満点でパスし、全額免除を勝ち取った実力者。運動はからっきしで小学校の体育の時間に逆上がりに失敗して背中から落ちたことがある。
幼馴染
藍染 守 (あいぞめ まもる)
:2年部活動推薦科C組の成績問題児。とはいえ部活動推薦のため、学業成績はあまり重視されていないため、赤点でも救済で進級できるため留年していない。野球部レギュラーでポジションはショート、昨年の甲子園ではファインプレーを3回発揮、安打を大量生産しベスト4まで進出に貢献した功労者。学費も3分の1免除を受けている。学業はさっぱりで紡に助けを求めることが多いが理解せず「わかった!」と言うため、赤点も大量生産している。
学年で勉強においては問題児、部活では優良児の問題生徒である。学年会議で毎回名前が挙がる。
司書さん
鹿目 優子 (しかめ ゆうこ)
:不知火高校の図書室司書。ルールを守らない生徒には容赦しない。が、守と紡のやり取りは今日が初めてではない。幼馴染で活発な守をさらっと躱していくゆく紡が素敵でお気に入りである。
紡が隠し事をしていることも知っているがあくまで本人に聞いたわけではない推測なので、その通りだと嬉しいと思っている。
先生
斎藤 一正 (さいとう かずまさ)
:野球部顧問にして生徒指導担当。熱血で説教は最短1時間、この前は授業中に生徒の形態の着信音で怒りが頂点に達し、その授業を丸々説教の時間に変えた。
説教は長いし、髪の毛の今後が心配ではあるが、生徒の未来をいつも考えて働く、生徒思いの生徒、一部の生徒はその方向を間違えていると考えている(新聞部著)
放課後の図書室、グラウンドの運動部の声が遠く聞こえる比較的静かな場所。置いてある本はどれも古い物ばかり…だが、それがいい。古い書籍にはそれ相応の魅力が詰まっているというものだ。
今日手にしたのは昭和の時代に初版が出版され、つい十年前までは増刷されていた超有名著者。作家として歴史的人物、果ては偉人と崇める人も大勢おり…私もその一人である。彼の作品は当時はさして理解されなかったものの、逝去後に再評価され現在の偉人に数えられるほどになっている。
純文学を主軸に、マイナーなところまで調べると恋愛小説も手掛けていた。今回手にしたのはあまり人気のない純文学の小説だが、人気がないとはいえ十年前まで増刷された物語である。知ってはいたが買うと高校生の小遣い程度で手の届く範囲になく、図書室にあったことに目を輝かせた。
今日は司書さん以外室内にはいない様だ。静かに本を開いて1ページ目を開いたその時、勢いよくガラガラと音を立て扉が開く。衝撃音と共に扉が壁にぶつかり室内二人の視線が入り口に向く。司書さんが静かに立ち上がり入り口に向かうが、仕切られた奥の席からは入室者が誰かまではしっかり見えない。丁度死角だ。
「こんにちは~図書室は静かにしないといけないって小学校で習わなかったかしら~?」
司書さんの静かなお叱りの声が聞こえ、それに謝罪する声が聞こえる。ん? 聞いたことがあるな…
私が本に再び目を落とした次の瞬間、視界がグンと揺れる。真横から入室者が飛びついてきたのだ。
「よ! 紡! やっぱここにいたな!」
「今読書してるの守。 やめて」
「いいじゃんさー、幼馴染で高校まで一緒なんてもう俺のこと好きだろ! 好きなんだろ⁉」
「別に興味ない。私は奨学金で学費が無償になるからここにしただけ、スポーツ推薦の守とは違うの。運動できないし」
「昔からだよなー! 小学校の体育で…」
「お ふ た り さん?」
気配もなく近づいた司書さんが二人の真横に来ていた。
「男の子には言わなかったかしら~。紡ちゃんは、まあまだ静かにしようと試みていたからお咎めなしで、男の子は職員室行きましょうね」
「ちょ、ちょっと勘弁してくださいよ! やだ、斎藤先生の説教はヤダー!」
連れていかれた。きっと野球部顧問の生徒指導、斎藤一正先生に説教されるのだろう。一度始まれば1時間は覚悟すべきだ。授業が丸まる一つ潰れたのはつい最近の出来事だ。
少し気の毒な幼馴染を見送り、静寂が訪れる。手に持った書籍は読まれないままであり、時計は下校時刻を指し始めている。下校時刻後に校舎内にいるのは部活動者か許可証を持つ生徒だけだ。カウンターへ本を持っていき、貸出届に名前とクラスを記入し図書室を出る。もちろん扉は静かに閉めて。
丁度司書さんが戻ってきていた。
「紡ちゃん、また明日」
「はい司書さん。この本貸出届書いたので後で承認お願いします」
「まぁ本来は私に直接だけど~、紡ちゃんだから特別にね。じゃあきをつけて~」
夕日で赤く染まる空を見上げながら校門を後にする。家は徒歩で30分の距離、家の近さと奨学金試験が通りそうだったので選び、無事全額免除をとることが出来た。
家に帰り自分の書斎に行く。元は祖父の書斎だが、亡くなってからは私一人が占拠している。そしてよくよく考えると本屋で買ったまとめ買い500円の20冊が目の前に積みあがっていた。
しばらく寝る時間を削るか悩んだ後、勉強の時間も考えてそれはやめた。その代わり数日間帰っては読書と勉強に時間を追われる幸せな日々を過ごすことになった。




