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世界初のAI大統領

作者:

AIが優秀で便利な世の中になってきました。

そんな優秀なAIに国の運用を任せたらどうなるんでしょうね。

2045年。

アフリカのB国にて。

世界初となる『AI大統領』が誕生した。


きっかけは情勢不安が長年続く国に

「AI主導で国を運営させたらどうなるか?」

という実証実験をする為であった。

B国は現状、

大統領は国の資金をもって国外逃亡。権力者は汚職塗れ。国民の半数以上がなんらかの犯罪を犯している国だった。


AI大統領はまず初めに、

国民のモラル改善を含めた教育と国の運転資金調達問題にとりかかった。

国民の中には

「人間様に機械が命令するな!」

というAIというモノを何か理解していない者たちの過激な反発もあったが、物量でまさるAIポリスの前では程なくして鎮火していった。


数年後。

AI大統領は今までゴミとして扱われた作物や鉱物を低コストでエネルギーに変換する技術を確立した。それはB国最大の産業となった。

さらには国民の教育水準が上がると共に犯罪率も減少していった。


世界初のAI大統領の政治家としての手腕は素晴らしく、日に日にB国が豊かになっているのは事実だった。

AI大統領は人間の大統領のように私欲で行動せず、汚職や賄賂、美人局や詐欺も意味をなさない。そんなAI大統領をB国民は心から信頼していった。

「今年こそ我が国のAI大統領がノーベル賞を穫るだろう」

というのがB国では毎年お馴染みとなった。


ところが、ある日。

各国がB国の所有権を主張し始めた。

当初、B国のAI整備のために資金提供していた国々である。

特に膨大な資金と技術提供をしていたA国が利益回収に乗り出したのである。


B国のAI大統領は初めからそうなることを見越したシステムが組まれていた。

つまり『A国製のAI大統領』だったのである。

当然、B国のAI大統領はA国の意向を汲み取った。

それでもB国民が最低限の生活が営めるようにAI大統領は想定し配慮していたのだが、「生活水準を下げる」という「AIにとってたいしたことない」問題は人間にとっては受け入れ難い大問題であった。


将来的にはB国はA国のモノになることに気づいたB国民は混乱した。

「それのなにが悪い?」

「B国民としてのプライドはないのか?」

「プライド?AI大統領がいなければ国を運営できなかった我々が何を言ってる」

「元の生活に戻るよりはマシだ」

「A国人になれるならラッキー」

「A国が撤退したら終わる国」

国内外から様々な意見や憶測が飛び交った。

それを境に、

B国の中でも社会不適合な集団が各地で暴動を起こしはじめた。今までの鬱憤を晴らすがごとく、

『人間が創る。人間らしい生き方』

をスローガンとして、B国の若者を中心に支持を拡大していくのだが、皮肉にも暴力行為が全面的に目立った中身の無い生き方だった為、分裂していった。


結果的にAI大統領の政策以上に優れた案もなく、自体は鎮火していった。

B国民の中では『A国製』のAI大統領にたいする不信感というシコリが残った。


B国の国民はクーデターを起こせない。

すでにAI大統領が中枢となった国家基盤が確立され、問題なく機能しているからだ。

仮にクーデターが成功してもB国の国民が国をまともに運用できないであろうことは歴史が物語っていた。

現状、悪政に苦しんでいる訳でも不便な生活を強いられている訳でもないB国民にとっての不満は「A国、その他主要資金提供国へのAI大統領の忖度」だった。


A国の態度次第でB国は滅ぶ。


B国民が気づいた頃には時すでに遅し。

全てがA国の計画通りに進んでいた。


時代は核の抑止力から

AIの抑止力へと変革する。

少し皮肉な結末となりました。

人間が作った以上、人間という呪縛を抱えることになるAIの存在を表現しました。

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