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外は危険なのでダンジョンにコモります!  作者: 雨傘音 無咲
遠い昔の因縁、絶対の死
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【第二十二話】呪われた罪(1)

 『てめぇのもう一方の目も抉り出してやるッ! クソネズミィ』―ネズミ相手とはいえ、我ながらすごい啖呵を切ったものだ。思い返してつまづくところはあるものの、それで後悔をするとは思えない。

呪枝の騎士なる異形の戦士に追い込まれるように、必然的に対峙する事になった相手は巨大鼠 ―ジャイアントラット、とでも呼べばいいのか。名前なんてこの際どうだっていい。大切なのは自分が何をすべきか、と肉体に指令を送る事に他ならなかった。

 完全に姿を現した巨影の正体。呪枝とは何なのか、何故ここまでネズミが巨大化しているのか。常識的な疑問は今になってもその有効性を証明できずに燻っている。

 今はそれでいい。憎むべき現実感を佩く大鼠と目の前の巨大鼠の因果は判らない。

プラガハのように呪われているのか、その皮膚が爛れながらも異様に肥大化した体を動かす化け物が災厄の刺客であると ―"敵である"と、解ればいい。


 「まずは目から破壊()るぞ。お前の宣告通りにな」

隕石のような爆発の余韻を残し、騒然とした空気の取り留めのない雑念を切り裂くように、彼の言葉は冷ややかに、殺意の類すら存在しない ―言葉以上の意味は持たせなかった最鋭最軽量の意思が水滴に混じって、地に落ちた。

次の音が鳴る前に ―なんてのは現実的じゃない。だが意志はそれに引けを取らないかったろう、猛攻に次ぐ猛攻が繰り広げられた。杖を槍に変形させ、それを武器とした。儀剣は使わない。生溶肉(スライム)や大鼠ならいざ知らず、このサイズ差だと有効とは思えない。"何よりもまず、死なない事"、それを意識して、前のめりにならずに淡々と大雑把な動きの中から自分でも掴める機会を窺い、鋭い刺突を繰り出す。毛すら捲れた爛れた皮膚を一撃ずつ、腫瘍を潰するように ―悪化させるウィルスのように、踏み込まずダメージを蓄積させる。

積極的な攻撃手(アタッカー)は俺の役割じゃない。

俺の役は死なない事、邪魔にならないレベルで先頭に関与できれば御の字の弱者は生きるだけでいい。ここで自己犠牲精神に溢れる肉壁に立候補してもどうにもならない。

 猛攻とは言っても、それはフルトーさんの話だと思うかもしれない。俺は役に立たず、小突いているだけだと思うだろう。だが、そうじゃない。俺は謎の手応えを感じている。自分の位置は、彼のような大嵐の中の雨。荒れ狂う暴風や奔雷ではなくとも、雨にはなれている。抵抗の機会を減らし、着々と体力を削る。身動きをしようとも思えない、邪魔で不明瞭な敵! 俺はそれになれている!

 しかし同時に、戦いの中で ―戦う個人として存在を持てたからこそ理解できる。謎の手応えの正体じみた違和感。

見た目(ガワ)だけの別物だな、こいつ…」

いや、正確には違うのかもしれない。自分の言葉を即座に否定するようなマネこそしたが、完全に撤回するわけじゃない。なんだろうな…『隠し味』とでも言えば伝わるのかな? 桃を切ってるのに、種を感じない、みたいな。違和感。果物を食べているのに、ジュースの味がする、みたいな。違和感。そういうのが積み重なって、何の確証ましてや証拠がなくとも判断できる情報。巨大鼠(こいつ)はネズミだけど、目の前の敵(こいつ)巨大鼠(ネズミ)じゃない…!

「中になにか…」

「《反傷撃(ガードナ)》ッ!」

「ひっッ!」

彼の防御魔法によって出現した防壁によりなんとか俺には中らなかったが、後ろの壁が身代わりにでもなったかのように見えなかった攻撃の正体を知らしめている。石造りの迷宮の、その易しく壊れてくれないだろう壁は機能を失ってた。壊されたから? いや、違う。()()()()()から…これまた証拠なんてないけど、場所が異常遺跡(ばしょ)だ。疑わしいのはやっぱり…

生溶肉(スライム)を吐いたのかッ!」

石柱さえも巻き込んで抉るようにして完膚なきまでに接触した部分を溶かす特徴、強まってこそいるが、消去法で生溶肉(スライム)しかない!

「フルト ―」

「仮説がある!」

噛みつきかかっている巨大鼠の前で耐えている彼に確認を取ろうとすると同時に、彼の口からは発せられた言葉からして、なにか仮説が生まれたらしい。それは問題ない。戦闘中でも分析するのはおかしくない。だが気になるのはその仮説の内容! 俺の考察が正しければ、

巨大鼠(こいつ)の頭をぶった切るッ! お前はその傷跡に合わせて儀剣で後追いするように斬れッ! いつやるかはお前に委ねる…確実にやるぞ」

「…はい!」

彼に大局的な命令をされて理解する、こいつの攻撃パターン。前足で蹴る。後ろ足で蹴る。見極めてそこそこの速度で行われる突進。あとは噛みつくくらいのもの…ここにさっきの生溶肉(スライム)のブレスを加えても、ほとんどの攻撃はこいつの体の前方が起点だ。逆に言えば、後ろにいれば攻撃のターゲットになる事はない。皆無とは断言できないけど、いくらかは安全だろう。となると確実性を重視するなら背後からの奇襲…いや待て、そんな荒業を決行できるならもっと前に決着はついてる。事はそう単純じゃないだろう。様子を見るに、ターゲッティングはかなり雑だ。というか、動くもの全てを敵として一応攻撃しておく、程度なのかもしれない。こうも単純なら囮にでも簡単に引っかかってしまうそうな気がする。

なにか、囮でもあれば…

囮 ―動きさえすればいいのか?

「ちゅう?」

「大丈夫、俺はね」

思い詰めている俺を肩の子ネズミ、ちゅーたが気遣う。こいつの前で同族っぽいの一心不乱に刺し殺しちゃったから、合わせる目がないというか…"ネズミ"?

「ちっ…ちぃゅう…?」

「…お前の大丈夫は…分かんないかもしれない…」

すっごい、我ながら残酷な作戦を思いついた。


 【 】


 「ちっ…ちちぅ?」

木を隠すなら森の中、本を隠すなら図書館の中、人を隠すなら人ごみの中と、相手の属する属性だけで判断してそいつと共通する属性の持ち主を傍に置く事による効果は多かれ少なかれあるのだと思っていた。


「頑張れっ、ちゅーた!」

「なぁなぁで囮にした奴の言えた言葉か…?」


それと同じ理屈で、俺は巨大鼠への囮として同じ"ネズミ"であるちゅーたに白羽の矢を立てた。直接突き刺したと言っても過言ではないほどに突然で、充分な了承や理解を得られたのかは謎であるにしても、まぁまぁ、見栄えだけは良さそうに見える。

 この状況、多分まだ巨大鼠はちゅーたを認識していない。さっきまでいた敵の置いていった何か程度にしか思っちゃいないだろう。俺もぶっちゃけそう思う。遠目だから豆粒程度しか見えないが、きっと逃げずに堂々と仁王立ちでもして ―俺とは違うから期待を全うできている事だろう。


「ち…ちゅちゅちゅちゅーちゅ! ちゅちゅ、ちゅちゅちちちゅーちゅ! ちゅちゅちちちちゅ!?」


なにか挑発をしているのは解る。だがそれ以外、特に内容が判らない。まぁ、わかってほしいのは俺じゃなくて巨大鼠の方だし、問題なし…


「ヴ、ヴォヴァヴァヴァヴァヴァ!!!!!」

『やれるもんならやってっみろ!』と言っていたようなものなのか、それとも意味のない唸り声ですらない自然に叫ぼうとした ―有機的な器官を通して行われる無機質な発声なのか。どちみち、彼の行動が意味を成しているとは思えなかった。

「…ちゅ……ちー!」

ちゅーたは逃げた。その体躯の矮小さを鑑みれば、そりゃ逃げに逃げたのだろう。幸い。しっかりと彼の存在を認識していた巨大鼠は彼を追いかけて、俺達の潜んでいた己の背面方向に向けて突進した。


「さぁ!」

「おうッ!」

方向は確定した。今戦場となっている仲介水槽の狭さもあって、小回りの利かないこいつなら今更方向転換するのは不可能。なら、あとは単調な作業だ。

右回りで一回転しようとするそいつに合わせ、右から相対したフルトーさんが勢いを殺すように ―地に打ち付けるように、切断はもののついでと言わんばかりの一撃で断頭刑を執行する。そうしても突進の勢いは完全に殺せない。だからその運動を完全に断ち切る為に ―出現した玉虫色の肉塊をぶった切る為に、俺は儀剣を振るった。

フルトーさんの一撃を断頭刑と形容するのなら、俺のは介錯とでも言えるだろう。無論現れた生溶肉(スライム)を、ではない。巨大鼠への介錯だ。


― それもこれも、全ては真の罪人を引き出す為に。


【あとがき】

 ダクソのデザイン集がkindleで安かったので無印とⅢのやつを購入しまして、ダクソリマスターの方もやり直してます。クレイモアが強いとか言われてますけど、私はもう墓王の大剣以外使えません。

病み村はクソ、最下層ルートからのはもっとクソ。所々ゲロとかあるし、吹き矢亡者は嫌い。

…冷静になると苔玉って何なんだろう?


至らぬ点ありましたら、どうぞご意見お願いします。


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