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豚丼食べて豚人間になりたい!

今回は短編小説のようなものです。

 ある日の仕事終わりの22時過ぎ。

「今日も疲れたな〜。また帰りが遅いって奥さんに言われるんだろうな〜、あーストレス。とりあえず、たくさん食べて帰るか。」


 私は駅前の牛丼屋に入って、

「豚丼大盛りつゆだくで」

 と注文していた。


 店内には私以外に1組。

 テーブル席で30歳ぐらいのギャルママと、中学生ぐらいに見える女の子2人が座っていた。


 いろんな事情はあるのだろうが、こんな時間に子どもと牛丼屋に来るなんて、さすがギャルだなー。



「はい、豚丼大盛りつゆだく3つです。」

 ギャルママ家族の注文が到着したようだ。

 私と同じ豚丼大盛りつゆだくの注文か。若干の親近感を感じる。


 そんなことを思いながら、


「はい、豚丼大盛りつゆだくです。」

 と私のところにも豚丼が来た。


 待ってました!と、私は仕事終わりの疲れから解放されるために、豚丼をムシャムシャと食べ始めていた。


「えっ・・・・・」

 半分ぐらい食べた頃だろうか、顔に何らかの変化を感じる。目が開きにくく、鼻が何か上に向いてきているような、顔に肉もついてきてる?


 気のせいかと思いながら一杯食べ終えたが、その瞬間更に、顔ならびに体全体が熱くなる。その何とも言えない刺激に、私は気を失っていた。



 気を失う間にこんな声が聞こえていた気がする。


 ?「私は豚肉になった豚の霊です。人間に食べられるために私は殺されました。何とか復讐したいと思い、強く願った結果、私の肉を食べた人間を豚人間化させる能力を得ました。あ、豚人間なので別に命を奪ったりはできません。ただ、あくまで豚だった私の痕跡を残すだけです。」



 気がつくと、私は震えた。

 店内にある鏡に豚の顔がうつっていたからだ。

 そんな訳ないだろと、スマホの自撮りモードで見てみたが、やはり豚の顔だった。


 目がめちゃくちゃ細く、鼻が思いっきり豚鼻で、

 贅肉もついている。というかまんま豚みたいな顔。私は思わずマスクをつけた。



 ふと先程のギャルママ家族を見ると、3人とも豚の顔になっていた。さっきまでの顔は、よくチェックしてはいなかったか、平均以上の容姿だった気がする。それが今では目が細くて豚鼻で、脂肪もついているといった豚の顔。



 見ていると、ギャルママ(豚顔)と目が合い、こちらに近づいてくる。


 ガン飛ばしたように思われたかなと警戒していたら、「うちに来ない?」と。



「えっ、何だって?」


 ギャルママ(豚顔)

「だってあなたもそんな顔になったら、元の家に戻れないでしょ!? 私、旦那と離婚したばっかりでさ、今後の生活をどうしようかとか思っていたのよ。新しい男でも作ろうかなと思ってたけど、こんな醜い豚の顔じゃあ無理じゃない。でもあなたとなら大丈夫そうと思ってさ。」



 さすがギャル。

 ノリが軽いと思いながらも、でも確かにそうだ。

 こんな自分の原型のない、豚の顔で自分の家族が納得するだろうか・・・・?


 顔も体型も全く違うため不審者だと通報されるかもしれない。



 ま、最近、妻と子どもとのやり取りにストレスたまっていたのも事実だしな・・・・・。



 私は、あっさりとそのギャルママ(豚顔)と一緒になることを考え、ギャルママ(豚顔)の家についていった。




「フガフガフガフガ!!!!」


 そして今、ギャルママ(豚顔)とお互い豚のようにフガフガと鼻息を荒くして、愛し合っていた。


「ホント豚みたいで醜いな」

「それはこっちのセリフよ。ほら、豚どうし愛し合いましょう、フガフガフガフガ!!」



 つい数時間前までは赤の他人だったのに、今となっては昔からの夫婦のように愛し合っている。連日そんなことをしていると、ギャルママ(豚顔)が妊娠して、出産した。


 元のギャルママ(豚顔)の娘がそれなりの歳なので、子育てを頼めるところは頼んで、落ち着いたら連日更に豚のようにフガフガと鼻息荒く愛し合う。そして妊娠の繰り返し。





 そんな人生も良いかもしれない。

急に自分の風貌が変わったら、家族に信じてもらえなくなりますよね。そんな時にどうするか。


本作のように、今までの家族を捨ててしまうという選択をするのもアリだと思います。


そんな想像もしながら。

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