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51. 決着

 ヤンとグスタフの足取りを辿ることは難しくなかった。ラテノンの魔法師にグスタフは止められない。凄惨な戦闘の跡が道しるべのように残されていたのだ。大切なもののために死を覚悟して戦った若者たちを横目に私たちは急ぐ。

 仮にヴィーラントが殺されていたとしても、グスタフを葬ることができればウタラトスを指導者に置くことはできる。しかし、ヴィーラントを生きたまま捕らえることができれば、その口でウタラトスを指導者に任命させられる。この過程を踏んだ方がアタパカもウタラトスを受け入れやすいはずで、私たちが急いでいる理由だった。

 リディアを連れていくことには今でも躊躇いがある。けれど、リディアの決断に横やりを入れたくはない。今のリディアは真剣な面持ちでウタラトスに言葉を掛けている。この表情の意味を理解できるのは一緒に旅をした者だけで、水を差す真似はできなかった。

 ディエゴはそんな二人の後ろで会話に耳を傾けている。これまで通りウタラトスの付き人として振舞っているが、同時にリディアのことも気にかけている。三人にはウルサ家という共通点がある。その子供が権力闘争に巻き込まれることを憂いているように見えた。

 ステファンは怖い顔のへニアと手を繋いでいる。コリンとシーラは再び別行動をしているため、この場にはいない。彼らが仲間を連れてこられるかどうかは怪しい。できなければ実質的な戦力は私とクラウスだけだった。へニアはステファンを守ることにしか興味がない。それでも、その時が来ればリディアも気にかけてくれるだろう。それ以上を求めるつもりはなかった。

 指導部はトネル砂漠の中に拠点を設けていた。昼間は灼熱で夜は極寒という過酷な環境であるが、かつてこの地域に栄えた文明は地下に都市を作った。多くは長い年月で崩れ落ちたというが、ラテノンはその一部を改修することで秘密拠点として利用していた。

 散らばる死体と帝国軍の部隊のおかげで入り口は簡単に見つかった。ここで戦闘があったということはグスタフは既に中にいる。先を急いだクラウスが敵の排除を行ったところ、彼らはただの一般兵だった。この魔法でグスタフは私たちの接近に気付いただろう。その目的で置かれた捨石だったと分かって、私は砂に埋もれゆく彼らを気の毒に思った。

 「へニア、もしもの時は二人をお願い」

 私はそんなお願いをしてからクラウスと先陣を切る。返事を聞かなかったのは期待していたからで、ステファンにお願いしなかったのは都合良く利用したくなかったからだ。

 「どうやって殺す?」

 ひんやりとした隧道を進んでいるとクラウスから問いかけられる。私はシンタマニを少し前に伸ばした体勢で暗い先を見据えた。

 「とどめを刺せる?」

 「俺に囮になれと」

 さすが魔法師として生きてきただけあって話が早い。クラウスの魔法ではグスタフの息の根を止めることはできない。それができるのは私だけだが、この体で直接対決を申し込んではまた負けると分かっているため、クラウスにお膳立てを求めていた。

 「そうなれば他の奴らを構ってられない」

 「グスタフ以外に気にすべき相手はいない。任せて」

 「ラテノンの魔法師は?」

 「私たちが間に合わなければ全員死んでる。間に合ったとしても帝国軍が相手なら共闘できる。その後に無力化してクーデターを起こせばいい」

 「そう都合良くいくもんか」

 クラウスは軽口を叩いて大きく息を吐く。その吐息が震えていたのは恐怖しているからだ。私も頭に渦巻く考えを一度取り除いて、因縁の敵との対決に集中する。自分が敗北すれば家族が殺されるかもしれない。魔法師の世界は勝つか負けるかで全てが決まる。

 グスタフは私たちの到着を待っていた。飛び込んだ部屋は松明で明るく照らされていたが、充満していたのは煙ではなく血の匂いだった。人の死体や家具、シンタマニが床に散乱していて、部屋の奥からはうめき声が聞こえる。

 「裏切り者め!」

 「どの口がそんなことを!早く命令しろ!」

 知らない男がヤンに殴られている。その隣では大勢の魔法師を引き連れたグスタフが笑っていた。帝国の魔法師だけではない。傷だらけのルッツの姿もある。ルッツはラテノンの戦闘服を身にまとった初老の男を拘束していた。

 「ヴィーラント、お前の死に目を見るために客人が来たぞ」

 「もう戦争は止まらない」

 「黙れ!さっさとネルンストに命令するんだ!」

 私たちは部屋の中央まで進んでシンタマニを構える。グスタフはそれを横目にまだ頬を吊り上げていた。殴られ続けて顔面が腫れたヴィーラントは目も見えていないだろう。しかし、威勢よくヤンに食い掛かる。

 「お前のくだらない企みは成功しない。アタパカは不滅だ」

 「アタパカを滅ぼそうとしている男の言葉とは思えないな」

 「ウタラトス様が帝国を変えてくださる」

 「ここで死ぬ定めの忌み子に何ができる」

 グスタフが吼える。その瞬間はヴィーラントも意味が分からなかっただろう。すぐに後方から若々しい声が響いた。

 「こんなことはもうたくさんだ。ヴィーラント、もうやめろ。ヴィルゴ家の魔法師たちも矛を収めろ」

 「ウタラトス様?」

 ウタラトスの声を聞いてヴィーラントが腑抜けた声を出す。そして悲痛に満ちた声で絶叫を始めた。

 「ぞろぞろとおいでなすったな。やっと俺の出番だ。帝国の面汚しどもを殺さなければならない」

 マントをなびかせ、グスタフがシンタマニを握る。ヴィーラントはまだ狂ったように吠え続けている。ヤンはさらに殴って黙らせた。

 「ウタラトス様、なぜここに?隠れていれば殺されずに済んだものを」

 「僕を見誤るな、ヤン・ラトケ。ラテノンとウルサの関係を忘れ、帝国にへつらうとは愚かな男め」

 ウタラトスがヤンを強く叱責する。ヤンはヴィーラントを投げ捨てて反論した。

 「よそから来た子供に何が分かる?お前と違い、私はずっとアタパカに想いを寄せて生きてきた。ラテノンとウルサ家の関係?ウルサ家がこれまでに何をしてくれた?ラテノンの陰に隠れ、権力にしがみついていただけだろう」

 「恥を知れ!お父さんを馬鹿にしたな!」

 今度はリディアが遠くから叫ぶ。ステファンに押さえられていたが、その手を引きずってウタラトスの隣にまで出てくる。ディエゴとへニアもシンタマニを構えて部屋に入ってくる。

 「あの時、お父さんと同じ未来を見ていると言ってた。でも嘘だった。ラテノンを壊して帝国に譲り渡すなんて間違ってる。お父さんはそんなことのために死んだんじゃない」

 「アントンも理想ばかりの男だった。ウルサ家のプライドがラテノンの毒になった」

 「よくぬけぬけと。お前が勝手に失望しただけだろう。ウルサ家を非難しておきながらヴィルゴ家と手を結ぶ矛盾になぜ気付かない」

 さらにディエゴが割り込む。三人ともウルサ家としてヤンの言葉が受け入れられないのは当然だった。ウタラトスは荒い呼吸を続けるヴィーラントに言葉を掛けた。

 「ヴィーラント、お前がラテノンに尽くしていたことは知っている。ただ、理想が高すぎた。僕もエレナもライネには行かない。もう諦めろ」

 「くそっ!くそ!くそ!」

 私たちの知らない事情が話され、ヴィーラントは小さな声で悪態をつく。ウタラトスはもう一度ヤンと視線を交わす。

 「僕がラテノンの指導者になる。アタパカを火の海などさせないし、帝国の手に落とすこともしない」

 「お前にできるものか」

 「できる。僕にはハイドラの血が流れてる。曾祖父も僕を無視できない」

 「馬鹿野郎、そんなことさせるかよ」

 グスタフが一歩踏み込む。次の瞬間、ルサルカがウタラトスに向けて一直線に飛んだ。クラウスがそれをはじき返す。

 「クラウス!お前もあの芋臭い田舎娘と同じ目だ」

 「殺してやる!」

 とうとう火蓋が切って落とされる。クラウスがルサルカを集めると同時に、グスタフの手下が一斉に動き出す。いつ何時クラウスが機会をもたらすか分からない。私はクラウスの背後について、雑魚を相手取った。真っ先に突っかかってきたのはルッツだった。

 「エレナ!ここで死ね!」

 私は遅い魔法を躱して、即座に反撃を加える。するとルッツの肘にせん断力がかかって体から切り離された。ルッツのシンタマニが地面を転がり、捕らえられていた初老の男がそこに飛び込む。シンタマニを握った男はルッツにとどめの魔法を撃ち込んだ。

 「ネルンスト!」

 ルッツの断末魔の叫びが響く。ネルンストは続いてヤンにも魔法を撃ち込む。その後にヴィルゴ家の魔法師に殺された。その場に這いつくばっていたヴィーラントにも容赦なく魔法が降りかかる。私は一縷の望みにかけて防御魔法を放ったが、その途中でクラウスから怒声が飛んだ。

 「こっちに集中しろ!」

 クラウスはグスタフの集中砲火を受けて後退している。援護に入ると、グスタフは例の魔法言語を使った。

 「避けて!」

 クラウスにはそのルサルカが見えていない。私は魔法でクラウスを押しのけるなり、グスタフの懐に迫った。グスタフはわずかに驚いた顔をして私の蹴りを冷静に躱す。グスタフは自らのシンタマニに秘められた力で魔法を無効化する。その手を封じる算段だったが上手くはいかない。

 「エレナ、やはり魔法が見えてるな」

 グスタフが興味深そうに問いかけてくる。気付かれたとしてもどうということはない。要はグスタフを殺せさえすればいいのだ。クラウスが再度攻勢を強める。しかし、それは簡単にいなされていた。

 「この私を簡単に殺せると思うな!」

 グスタフは威勢のいいことを言いながら後退して部下をけしかける。汚い戦い方だが、これも魔法師の世界では当たり前のこと。能力の低い魔法師でも束になれば脅威となる。クラウスは得意の力任せに打って出て、グスタフまでの道筋をつけようとする。しかし、圧力に屈して退いた。

 「エレナ、体はどんなだ」

 挑発する余裕まであるらしい。グスタフに辿り着けないとなると、この群がる魔法師を全て排除しなければならない。それは一か八かの賭けだった。ただ、ステファンとリディアの居場所を守るためだと考えれば、命を賭ける意味もある。そう結論付けた矢先だった。

 「グスタフ、ここまでです」

 部屋に繋がる隧道から次々と魔法師が突入してくる。先頭に立っていたのはフィリップだった。ライネで最後に見た姿よりも年老いていたが、五大魔法師の威厳は保ち続けている。その後ろにはルルやニールの姿もある。最後尾にはコリンがいた。

 「あなたたちの主は少しばかし権力に溺れているようだ。グスタフ、あなたもヴィルゴの魔法師を失って焦る気持ちも分かるが、ウタラトス様に手を出すのであれば話は変わる」

 「フィリップ、今までどこに隠遁してやがった?皆してアタパカを好みやがって気持ち悪い」

 グスタフはそう言って私たちを一瞥する。一気に仲間が増えたことでグスタフを殺す算段に目途がつく。しかし、その危険予知はグスタフにもできていて、情けない遁走を始めた。

 シンタマニの宝石を砕いたグスタフはより強力な魔法を行使して私とクラウスを狙い撃ちする。降りかかるルサルカを弾いた私もルサルカを集めたが、例の魔法言語を察知して動きを止める。対処の仕方が分からないため、対策は避ける以外にない。

 グスタフは続いて天井を破壊して混乱を招く。フィリップから逃げるように進んだ先にはステファンたちがいて、容赦なく殺傷性の魔法を振りかざす。ステファンはリディアを抱きしめて体で守ろうとし、前に飛び出したへニアがシンタマニで対抗する。しかし、崩れた岩がステファンたちに降りかかり、そちらに集めたルサルカを分散させてしまう。グスタフはその隙をついてへニアに魔法を浴びせた。

 「へニア!」

 膝から崩れ落ちたへニアにも岩が落ちてくる。私は間一髪でルサルカを干渉させた。グスタフはフィリップと魔法を交わす。ただ、離脱を念頭に置いた戦い方で、年を取ったフィリップは追いかけることができない。そうしてあっという間にグスタフは姿を消した。残された帝国の魔法師たちは、利口なことに投降していく。

 「へニア!息できるか?」

 天井の崩落が収まってステファンがへニアに近寄る。へニアの右足は膝から下が完全に切断されていて、左腕も肩から先が全てなくなってしまっている。あたりを探しても崩れた岩石ばかりで見当たらない。

 「ステファンは怪我してない?」

 「僕の心配してる場合かよ。絶対に大丈夫だからな」

 「ステファン!」

 「なに」

 「怪我は?」

 「してないよ」

 「良かった」

 安堵したへニアから力が抜ける。ステファンは震える手で右足の止血から始めた。私は肩の傷口にルサルカを集める。へニアの息は細くなっていくばかりで、焦るステファンの呼吸は早まる。私だけでは力不足だ。そう思った時、フィリップがやってきた。

 「私に任せなさい」

 私は邪魔にならないように後ろに下がってリディアを抱きしめる。フィリップのルサルカは桁違いの量で、直ちに出血が止まる。しかし、危機を脱したわけではない。

 「動かしてはいけない。すぐに輸血が必要だ。この子の血液型は?」

 「僕ができます。軍で調べたとき一緒でした」

 ステファンが血液の提供者として名乗りを上げる。フィリップは続いてニールに指示を出した。

 「外で死んでいた兵士が治療道具を持っていた。すぐに取ってきなさい」

 「はい」

 「ヴィーラント様の息がまだあります」

 へニアにかかりっきりになっていたところ、瓦礫を捜索していた魔法師の声が響く。魔法で岩を取り除いていき、救助した時にはへニアと同様失血状態だった。

 「こちらもすぐに治療を」

 「やめろ」

 「ヴィーラント?」

 「フィリップ、やめろ」

 ヴィーラントは苦しそうな息遣いで治療を断る。そしてウタラトスをこちらに連れてくるように命令した。ディエゴと一緒に来たウタラトスは毅然とした態度を取っていたが、その膝は震えていた。

 「ウタラトス様、どうかお許しを」

 「なんのことだ」

 「私はアタパカを守りたかった。ただそれだけなんです」

 「分かっている」

 「ウタラトス・ウルサをラテノンの新しい指導者に任命する。どうかアタパカをお守りください」

 それがヴィーラントの最期の言葉だった。ウタラトスはしばらくヴィーラントの亡骸の前で立ち尽くした後、ふらふらと近くの岩にもたれかかる。ヴィーラントの口から新しい指導者だと告げられたため、ラテノンの魔法師は膝をついて忠誠を示した。リディアはそんなウタラトスに寄って、堂々とするように助言する。そんな二人を見ていると寂しい気持ちになった。

 「エレナ・ヘイカー!」

 突如、名前を呼ばれる。その先に振り向いた次の瞬間、眼前にルサルカが飛んできた。戦闘が終わり油断していた。間一髪でしのいだものの眩暈に襲われ、その間に肩を蹴り飛ばされた私は後方に倒れ込む。再び視点が定まったときには、ルルが私の頭を踏みつけてシンタマニを回していた。

 「俺との決着がまだついてない。今ここで殺してやる」

 「やめて!」

 リディアが叫ぶ。私は今になってシンタマニを握ったが、簡単に奪われてしまった。ピアで対峙した時と同じ瞳をしている。強い怨念の正体は分からない。

 「どうして私に固執する?」

 「敵討ちだ!お前もあの子供を殺されれば分かるか」

 頬にシンタマニを押し付けられ、口の中で血の味が広がる。この頭ではルルとの因縁を思い出そうにもできない。リディアが飛び込んで来ようとするが、ディエゴに止められる。ステファンは手首から血液を採集されている最中で動きようがなく、その他の魔法師も見ているだけで仲裁に入ってこない。潜在的に私を敵視しているのだ。しびれを切らして間に入ってきたのはフィリップだった。

 「内輪揉めしている場合じゃない」

 「黙れ!これは俺とこいつの問題だ」

 「私が何をした?」

 「父さんを殺した。骨も残らないほどに切り刻んで殺したんだ!」

 「ルルの父親は赤の大広間の戦死者だ」

 フィリップから説明を受けて私は納得する。一昔前の自分ならば、馬鹿げた逆恨みだと一蹴していただろう。しかし、人を殺すという行為は力の大小だけで正当化されるものではない。それを学んだ私は小さく頷いた。

 「なるほど。どうやらあなたには私を殺す権利があるみたい。家族を奪われる苦しみを理解していなかった私の落ち度だから」

 「駄目!絶対に駄目!殺さないで!」

 リディアの悲痛に満ちた声が響く。ルルは逡巡している。決断が遅い魔法師は強くなれないが、人間としては正しい。泣き叫ぶリディアを見かねてか、ウタラトスがこちらに近づいてくる。

 「もうやめろ。復讐のためにあの子から家族を奪っても何も変わらない」

 「本当の家族じゃない」

 「血の繋がりなんて関係ない。二人の手首をよく見てみろ」

 私たちのシリヴァスタを見たルルは狼狽える。これほどの関係と思っていなかったのか、それとも内地の人間同士でシリヴァスタを交換していたことが驚きだったのか。ルルは唇を噛む。

 「ルル、お前はラテノンの魔法師だ。ウタラトス様の命令には従わないといけないだろう」

 「くそっ」

 フィリップがたしなめたことで、最終的にルルは私の上から降りる。そのすぐ後、リディアが飛び込んできて、犬を撫でまわすように私に両手を添わせた。緊張が解けたことで私の目からは涙が溢れる。その時にリディアと離れ離れになることを怖がっていたのだと分かった。

 「全員よく聞け」

 場が落ち着いたところでウタラトスが声を張り上げる。視線が全て集まったことを確認してからウタラトスは話し始めた。

 「これで終わりじゃない。帝国の策略は阻止できた。だけど、これからの方が大変だ。アタパカに迫る戦争を止めないといけない」

 「ウタラトス様、ご指示を」

 「戦いを絶対に起こすな。各地の同胞に戦いを自重するよう通達しろ。その間に大量の帝国軍がアタパカの奥深くまで入ってくるだろうが、今は耐える時だ。必ず僕が交渉を成功させてみせる。それまでどうか耐え忍んでほしい」

 「ということだ。情報伝達は治安部が担当し、軍部は展開していた戦力の引き上げに尽力するように。拠点に隠れて次の指示を待つのだ」

 二人から指示を受けて、コリンを含めたラテノンの人員が動き始める。私はそれを見ながら、ライネから始まった長い旅を頭の中で振り返った。様々な人と出会い、大切なことを知るために寄り道することもあった。アタパカはまだまだ混乱し続けるはずで、グスタフも取り逃がした。私の旅がここで終わりになることはない。

 それでは、私はこれからどうしたらいいのだろうか。まだ家族のためにできることは残っているのだろうか。私の魔法に何か意味を持たせられるのだろうか。そんなことを考えている内にリディアの腕の中で気を失ってしまった。

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