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3話 従者と騎士副団長


「んでお前何の用だ?お前が来るってんなら勿論アレだよな?」


「無論です」


自信満々にその者は答えると、ルイの隣に見慣れない男がいることに気づいた。

男はこの国で一二を争う顔の整った美男子で、何処かで見かけた様な気もする。


「彼はどうしたんですか?珍しい、博士が人を部屋に入れるだなんて」


「こいつはあれだ、デーヴィットの野郎が送り込んできたやつだよ。こいつで時間稼ぎして、オレと王女サマの婚約を承諾させようっていう魂胆だろうな。ケッ、さっさと諦めりゃ良いものを」


「相変わらず変わってないですね貴方は。博士ぐらいですよ、陛下のことを呼び捨てできるのは」


「ふん、嬉しくねーな。‥‥‥お前、名は?」


青年はいきなりの振りに驚いた様だが、すぐに表情を緩めて口を開いた。


「セオドールと申します」


「そうか‥‥‥私はラウレ・フズ・ミシェル。博士の従者になるのなら長い付き合いになりそうですね。宜しく。博士、彼と会って時間結構経つんでしょう?名前ぐらい聞いておいてくださいよ」


「うっせえ、黙ってろ。男のくせにまだビィルに勝ててねぇ奴がオレに偉そうに言うんじゃねえ」


「ハハハ。それを言われては何も言えませんね〜アビゲイル団長にはまだまだ勝てそうにはありませんし」


耳が痛いことをラウレに突かれて、不貞腐れた様にルイは頬杖をつく。

冷めたコーヒーをスプーンでかき回す、子供っぽい仕草に男2人は苦笑した。


「もしかしてラウレさんは、騎士副団長ですか?氷結の魔女で有名な」


セオドールの疑問にピクリと眉が反応する。

(あ、ラウレ怒った)

密かにルイが心の中でつぶやく中、ラウレは微笑みをたえさせずに女性とも見間違えられるほどの美貌に近づいて、人差し指を立てた。


「良いですか。私が魔女と呼ばれるのは人よりも多い魔力量とこの長い髪のせいでありまして、私は女性ではありませんし、ましてやオカマでもオネェでもないのですよ。そこんとこ覚えておいてくださいね。どうせならどーんと広めてきても構いませんから‥‥‥‥‥全く、最悪で迷惑な二つ名だこと」


彼は束ねてある新緑の長い髪をくるくると指に絡み付けた。


この国、セーリー王国は隣国の帝国と並び、難攻不落の大国と称されている。

その理由は王国を守る唯一の盾であり、攻める剣である騎士団が強すぎるせいだ。

騎士団は毎年騎士団長を決めるため、騎士団長決定戦があり王国国民だけでなく、他の国からも客が来てもの凄い盛り上がりを見せるのだが、そこで出てくる騎士団の者たちが化け物揃いだと名高いのである。

 特に有名なのが、女性初の騎士団長 アビゲイル・リール

化け物の中の化け物。


ラウレが氷魔法が得意で、『氷結の魔女』という二つ名なのであれば、アビゲイルは『魍魎もうりょうの愛子』と呼ばれている。

魍魎とは山川の精気から生じて人を化かす怪物の総称だ。

彼女の得意魔法はふたつ。しかもひとつ適性があればとても珍しい、幻影魔法と植物魔法という、二つ名に相応しい怪物だ。

しかも、平民の出だというのだからさらに珍しいこと極まりない。

 でも、彼女がそのふたつ名を知れば魍魎に失礼だなと笑い飛ばしていることだろう。



「だったら切りゃ良いじゃん」


ジェスチャーで髪を切る仕草をすると、彼は恐ろしいものを見たかのように目を大きく見開いた。


「絶対いや、断固拒否します。メアリーが褒めてくれたものですから」


メアリーとはラウレの愛しい愛しい婚約者らしい。

見たことはないが、儚くてとても奥ゆかしい女性。つまり可愛すぎてやばくて、あんな微笑みは反則じゃないか?あんな笑顔を見せられたらもう可愛すぎて何するかわからない。ああもう、彼女自身が罪なんだよな、メアリーを舞踏会に連れて行ったら野蛮な男どもに襲われるかもしれないじゃないか。そんななったら私は生きていけない、だったらもう閉じ込めて私だけを見て貰えば(以下略)ーーーーーーなんですよ〜。


ということらしい。

ルイは会ったことも見たこともないのだが。


ちなみに二つ名の噂を流したのは前にルイがラウレの発言がウザかった、その仕返しなのは内緒である。


「ふーん。で用は?」


「あ、そうでした。すっかり忘れていましたよ」


ラウレは本に埋まっていた椅子を引っ張り出して座ると、長い足を組んだ。

彼はそんなこと思ってないのかもしれないが、脚長アピールに見えてすこしイラッとくる。


「私の脚、長いと思いました?」


「ぶっ殺すぞ」


「失礼。それで私がここに来たようなのですが、団長からの依頼でして、依頼内容は最近活発化している人攫いの制圧です。『ルイが暇だと思っての依頼なわけで、別に暇じゃないなら受けなくて良いからな!!別に。でもやったら‥‥騎士団ちょー楽になる』だと団長はおっしゃっていましたがーーーーー。え?私の意見ですか? うーん、そうですね。確かに博士が受けないなら私が受けることになり、メアリーと話す時間が減ってしまうので、私的には受けて欲しいのですが‥‥」


「聞いてねぇんだけど」


「そうですか?さて、博士。どうします?」


ルイはニヤリと悪い顔をした。

長い前髪に隠れた銀色の瞳が星屑を散りばめたように煌めき、頬は興奮でなのか赤に染まっている。

後方で「は、博士?」と金髪が言っているが無視だ。



「聞くだけ無駄だろ?」


「まぁ。一応聞こうと」


首を傾げるラウレに近づいて、肩を両手で精一杯砕けそうなほど強く握りしめた。





「ハッ、やるに決まってんだろ?」



「〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!(声にならない絶叫)」




後日。ラウレは愛しの婚約者様に介護されることができて包帯だらけの肩をさすりながらも、ご満悦のようだったという。




メアリーさん、可哀想‥‥


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