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神殺しの魔物達  作者: 噺 遊月
無魔【壱】
9/18

遺跡に潜む者

 遺跡の更に奥へ続く通路は、入り口の方と同じく広い真っ直ぐな通路だった。全く同じ過ぎて、入り口の方に向かっているんじゃ無いかと不安になるぐらいだ。

 一番前にレイさん。次にラムダさん。その後ろに私とリタという順で進んでいる。回収した松明が鳴る音だけで、全員が黙っているのは暗い遺跡の中で非常に不安だった。

「あの、レイさん」

 この空気が耐えきれず、私はレイさんに話しかけた。

「何?」

 レイさんが歩きながら返事をしてくれた。私はそのまま話し始めた。

「私でも、レイさんのように強くなれるでしょうか?」

「なれるんじゃない?毎日練習すれば」

 私の不安に対し、レイさんの答えは軽いものだった。拍子抜けしてしまった。

「それくらい毎日の練習は大事だよ。自分の強さも最初から身についていたわけではないし。男子三日会わざれば、刮目して見よとも言うし。だから、毎日頑張れば出来るよ」

 レイさんが、そう歩きながら答えてくれた。私でも、今日の依頼が終わったら頑張ろうと思えた。

「おっ…あったあった」

 レイさんがそう言った。前方には小部屋があり、中には細長い石の箱があった。レイさんとラムダさんは躊躇なく小部屋に入って行って、私とリタもそれについていった。

 小部屋は私達四人が入ると手狭に感じるぐらいの大きさだった。壁は相変わらず真っ平らな茶色い石である。

「さて、開けようか」

 そう言って、レイさんが躊躇無く箱を開けようとした。

「待ってください!死体とか重要な物があったらどうするんですか」

 そう言って私はレイさんを止めた。この箱は大きさと形からして棺だろう。それを開けるべきでは無い。

「…そんなもの入ってないよ」

 そう言って、レイさんは石の棺を開けた。棺の中には、死体など入っていなかった。しかし、真っ黒な丸い玉に小さな手足が生えて、白い丸を二つ書いたような小動物みたいな物が、ガタガタと震えて収まっていた。

「…なにこれ」

 リタがそう口にした。確かに、見たことも無い生物だ。小さくて害のある生物には思えない。

「いたいた。こいつだよ。自分達が探していた奴は」

 そう言っては、レイさんがその小動物をつまみ上げた。小動物はジタバタと手足を動かして抵抗していたが、レイさんが空間に開けた黒い穴に放り込んでしまった。

「…えっと……何だったんですか?さっきの生物は」

「ざっくり言うと、今回の騒動の元凶。そして自分達がこの世界に来た理由。ここまで来たんだし、順を追って説明するよ」

 そして、レイさんがさっきの生物と今回の騒動の説明をしてくれた。

 さっきの生物は、あらゆる物を食べて、それを材料に自身が知っている物を作る能力があるらしい。この遺跡で壁や柱、松明立て、住んでいたネズミやコウモリや虫を食べていたという。確かにこの遺跡でコウモリを見ることは無かった。

 そして、食べた物で狼の魔物や魔道士、騎士、更には上位の魔法使いなどを作って身を守っていたという。作られた物は元の物の性質を真似た影のような物で、一定以上ダメージを与えると壊れて消えてしまう。これは私達も目にした。

 そして、自身と自身の住処を隠す魔法を使えるという。その為この遺跡が最近まで見つからなかったとか。しかし、隠す魔法はかなりの準備が必要らしい。

 そして、レイさんとラムダさんの依頼主が隠す魔法を打ち消して、レイさんとラムダさんがさっきの黒い小動物を捕まえる作戦だったらしい。私達が森で襲われたのは、隠す魔法が打ち消されて、偵察に出した魔道士と狼だったようだ。

「まあ、もし黒い小動物がもっと沢山の戦士を作って、それを総動員して街を襲ったとしたら、かなりの驚異だと思うよ。依頼主がそう言ってたんだけどね」

 とレイさんは締めくくった。私達の疑問は納得できる説明とともに全部解けた。

「じゃあ、帰ろうか。日が暮れない内に帰って、ギルドマスターに二人が無事な姿を見せてあげたいしね」

「そうですね。多分彼もユーリ様とリタ様のこと心配してるでしょうし」

 その後、調査終了ということで、真っ直ぐ街に帰った。

 こうして、私とリタの初めての冒険は終わった。 

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