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神殺しの魔物達  作者: 噺 遊月
無魔【壱】
8/18

それは戦いの化身

 遺跡の奥に進んで行くと、レイさんが立ち止まるように促した。私達が立ち止まると、レイさんが小声で私達に話した。

「ここからすぐ先に、大きな広間がある。そこに魔道士や狼、あと鎧を着込んだ剣士とかが居る。多分こっちを待ち構えてる」

「向こうから仕掛けて来ないの?」

 リタがそうレイさんに聴いた。レイさんはすぐ答えてくれた。

「うん。数の有利も向こうにあるし、入り口側から仕掛けて来る奴もいない。だからこのまま待ち構え続けてくると思う。仕掛けてくる動きも無いし」

 つまり、この先の大広間で敵と戦うことになるのか。

 かなり緊張する。あの恐怖からだろうか。でもやると決めた。

「レイ様、罠等は仕掛けられていますか?」

「いや、それっぽいのは無いね。弓持ちも居ない」

 ラムダさんとレイさんが話し合っている。あの黒い奴らは目の前だ。なぜ集団でいるかはわからないが、今は倒すだけだ。杖を握る力が強くなる。

 そうだするんだ。倒すんだ。私があいつらを。

 ポンと肩を叩かれた。びっくりして変な声が出てしまった。顔を見上げると、レイさんがこちらを見ていた。レイさんに肩を叩かれたらしい。リタもレイさんにびっくりさせられたみたいだ。

 レイさんが私達に目線を合わせてこう言った。

「二人共、あんまり緊張してると、足元すくわれちゃうよ?目の前だけ見て集中するのも良いけど、周りのことも見ようね。隣に良い仲間がいるんだから」

 私はそう言われて、横に居るリタを見た。リタも同じようにしたようで、目が合った。そして、思わず笑ってしまった。リタが少し不機嫌になって抗議したが、最後には二人で笑った。

 そうだ。私は、私がしたいからここに来た。でも一緒に来てくれている仲間も大事なんだ。

「じゃあ、行くよ。自分が大広間に突っ込むから、待ち構えている奴らが混乱している間に入ってきて。ラムダはリタちゃんとユーリちゃんの後ろからついてきて、二人の補助を頼むよ」

「わかっています」

 私とリタはうなずいて返事をした。これから戦いが始まる。少し怖いけど、それを打ち破る為にやるんだ。

「行くよ」

 レイさんが駆け出した。私とリタ、ラムダさんがそれについていく。レイ三との差は見る見るうちに離れていったが、これで良い。レイさんが囮になって、入り口で集中砲火をくらわないようにするのが目的なのだ。

 レイさんが松明で照らされないところまで行って、少し経ったところで、前方の足元が光った。その光に照らされたレイさんがここからでも見える。

 私は、その光が魔法の光だとすぐにわかった。しかも足元から光ったということは、罠の魔法だ。魔法の光の強さからして、かなり強力なのはすぐにわかる。

 そうだ、レイさんは目が見えないのだ。その代わりになる物はあるが、だからこそ魔法の罠がわからないんだ。

 私が声を上げて手を伸ばす前に、木の幹に絡め取られた。多分ラムダさんが私とリタを守ってくれたんだ。

 考える間もなく轟音が鳴り、地響きがした。多分爆発の魔法、それも強力な物だ。私は植物に守られて、無傷で済んだ。

 植物が引っ込み、私はすぐにレイさんの方を見た。松明の灯りは届かず、目には見えなかった。しかし、レイさんの声が響き渡った。

「この程度で自分を仕留めようなんて、舐め過ぎだよ!」

 この声を聞いて、私は安心した。レイさんは無事そうだ。

「さあ、直ぐに行きますよ。グズグズしてられませんから」

 と、ラムダさんが言った。確かにそうだ。私は立って、リタの方を見た。リタも無事そうだ。

「行こう。ユーリ」

「うん」

 そのまま走って大広間に入った。大広間の中は真っ暗な空間が広がっていてで、壁は通路と同じく真っ平らだった。前方の遠いところで、沢山の魔法の光が見える。それに照らされた黒い魔道士や大柄な鎧を着た真っ黒な騎士が、レイさんと戦っていた。レイさんの動きが速すぎて、何をしているかわからなかった。しかし、数え切れない程の集団相手に大立ち回りしているのはわかる。

 けど、私とリタの相手はあの集団じゃない。目の前、真っ黒な狼の魔物が現れた。昨日、私とリタを襲った狼と同じ見た目だ。

「やるよ、ユーリ」

「勿論」

 私は杖を構えた、リタは弓を使わず短剣を構える。ラムダさんは大鎌を持って後ろに居る。

 戦いが始まった。

 仕掛けたのは狼からだ。真っ直ぐ私に突っ込んでくる。

 私は直ぐに松明を投げつけた。松明が当たった狼が一瞬怯む。

 そこにリタが横槍を入れた。突進して、短剣を横から狼に突き刺したのだ。そのまま狼の腹を切り裂いた。

 吹き飛んだ狼に間髪入れず炎の魔法を飛ばす。体勢を崩していた狼はそれをまともにくらった。

 いける。そんな確信があった。あんなに怖かったはずなのに、今は倒せる相手だという自信があった。

 私達と狼で睨み合う。横でレイさんが戦う音がする。そして、次の瞬間、目が眩む強い光に襲われた。

 私は何が起こったかわからなかった。見えない視界で、私の目の前に狼が迫っているのがわかった。

 首を噛まれる。そう思って身構えた。そんなの間に合うはずがないのに。だが、狼に噛まれることは無かった。

「足を止めました。今のうちです!」

 そうラムダさんの声がした。ラムダさんが狼を止めてくれたみたいだ。

「おりゃあ!」

 リタが声を上げて狼の喉笛をついた。慣れてきた視界で松明の灯りでわかった。

 私は見えた狼を氷の槍で貫いた。それで、狼は完全に絶命して、消えてしまった。

 狼を倒して、私は力が抜けた。ペタンとその場で座り込んでしまった。

「ユーリ…」

「……」

「やったよ!あたし達でも倒せた!」

 そう言いつつ、リタが抱きついてきた。私はそれで倒れ込んでしまった。その頃には音もしなくなっていた。

「……」

「あ…ラムダさん」

 そこにラムダさんが歩いてきた。ラムダさんが松明の光で照らされている。

「喜ぶのは良いですが、一応敵地なので程々に」

「はい。ほら、リタも起きて」

「うん」

 で、リタが離してくれた。私も起き上がって、立ち上がった。そこにレイさんが歩いてきた。レイさんの服はボロボロになっていたが、体は無傷だった。

「終わったよ。あと、まだ奥に通路が続いているから、行こうか」

 何が終わったかは聞くまでもないだろう。先程までの事が嘘のように、広間は静まり返っていた。

「あ…そうだ。ラムダさん。助けてくれて、ありがとうございます」

 私はラムダさんにお礼を言った。あれが無かったら今どうなっていたか。

「いえ、レイ様のミスを私がフォローしたまでですので。お礼はいりません。そうですよね」

「うん。フラッシュグレネードっていう強い光を放つ物を使ったんだ。黒い奴らにはまるで効果が無かったけど。ごめんね」

 そうなのか、と私は納得して、レイさんを許した。リタも納得したようだ。フラッシュグレネードが何かはわからないが。

「じゃあ、改めて奥に行こうか。もうさっきみたいな敵は居ないし」

 そう言いつつ、レイさんはどこからか取り出したチャイナドレスに着替えていた。多分次元の能力でどこからか取り寄せたのだろう。

 レイさんが着替え終わったところで、私達は奥に歩きだした。

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