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神殺しの魔物達  作者: 噺 遊月
無魔【壱】
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ギルドマスターへの報告

 あたしが所属しているギルドのマスターは、今いる酒場のオーナーと窓口の受付を掛け持ちしている。昔は最前線で戦う冒険者だったとか、悪名高かった盗賊団をいくつも壊滅に追い込んだとかを、先輩冒険者から聞いた。

 しかし、最初見たときは、気持ち悪い男性としか思えなかった。今ではちゃんと評価をしてくれるいい人という印象だが。

「あら〜リタちゃん。隣の人が助けてもらった人?ありがとうねぇリタちゃんを助けてくれて。お礼に、今日の分はわたしが持つわぁ」

「はじめまして、レイと言います。リタを救ったのは、たまたまですよ」

「偶然でも助けてくれた事には変わらないからいいのよぉ。だから、じゃんじゃん飲んでもらって構わないからねぇ」

 ギルドマスターとレイさんが、お互笑顔で、カウンター越しに硬い握手交わす。というか、相変わらずの地獄耳だなこの人。

「あっ紹介が遅れたはねぇ。あたしがここのギルドマスター兼酒場のオーナーよぉ。失礼な呼び方でなければなんとでも呼んでくれて構わないわぁ。よろしくねぇ」

 やっぱり、ガタイの良い大の大人の男性が、こんな口調と態度で喋ったら、引かれると思う。あたしも、最初見たときは引いた。しかし、レイさんはそんな事もなく、笑顔で接している。

「それで、まずはリタちゃんとユーリちゃんにお願いした依頼の件からね。まあ、多分それどころじゃ無かったんだろうけど」

「依頼?リタとユーリは、何かの依頼であの黒いのと遭遇したの?」

 レイさんが、以外なところで食いついた。しかし、ギルドマスターがそれを静止して、あたしに報告するように促した。

 あたしは、真っ黒な狼の魔物と魔道士に襲われた事、レイさんとラムダさんにユーリ共々救われた事、そして

「新しく見つかったという遺跡につく前に、襲われたので、結局調査は進みませんでした」

 という事を報告した。

「新しく見つかった遺跡って、何処にあるの?」

「先に黒い魔道士と狼について話してくれない?疑問には後で答えるからね」

 レイさんは、少し不満そうだったが、魔道士と狼については話してくれた。

「とりあえず、手応えはあったね。幻じゃないことは間違いない。倒したら消えちゃったけど、居た地面には特に変わったところは無かったよ。実力については、瞬殺しちゃったからよくわからないけど、まあまあって感じかな?正面から戦って遅れを取らない冒険者は、数は限られるけど居ると思うよ」

「狼が何か他の種類に似てるとか、無かった?」

「うーん……普通に群れで狩りをする狼と、変わり無かったくらいかなぁ。魔道士と意思疎通してるみたいだったけどね」

「ふぅん……」

 ギルドマスターが羊毛紙に羽ペンでメモを取りながら聴く。あといくつか質問したところで、ギルドマスターが質問を切り上げた。

「とりあえず、逃したかもしれないから、捜索依頼を他の腕の立つ冒険者に頼んで見るわぁ。近々、王都で闘技大会があるから、戻って来るまで時間がかかるでしょうけどね」

「闘技大会ってどんな?」

 ギルドマスターが、怪訝な顔でレイさんを見たので、あたしが補足しておいた。

「レイさんは、国外の[カミゴロシノマモノタチ]っていうギルドの、ムマ軍って言う所に所属していて、そこから来たらしいんです。だから、知らなくてもおかしくないと思います。国内での大会ですよね?」

「ああそうなのぉ。国内の大会だけど、他の国の重鎮がわざわざ見に来る人達が居るくらい、有名で大きな大会よぉ。飛び入り参加は基本的に出来ないけど、色んな出店とか他の見世物もあるから、一度見に行ってみるといいわよぉ」

「そうなんだ。じゃあ、こっちの仕事が終わったら、見に行ってみようかな」

 あたしは、レイさんの仕事が少し気になった。けど、聞く前にギルドマスターが話を続けた。

「レイちゃんは、リタちゃんとユーリちゃんが受けた依頼が気になるのよね」

「そうそう。その調査する遺跡がどんなのか知りたいんだ」

「えっとねぇ、ここから西にある森を抜けて、南西に行くとある古びた遺跡よぉ。地図を見たほうがわかりやすいかしら」

 そう言うと、ギルド窓口の奥から地図を持ってきた。それを見せながら、ギルドマスターは、説明を続ける。

「大体歩いて半日ぐらいの距離ね。なんで今で見つかって無かったのか不思議なんだけど……。とにかく、この遺跡に強力な魔物や竜なんかが居ないか調査するのが、リタちゃんとユーリちゃんに頼んだ依頼なの。荷が重いと思ったんだけどね。リタちゃんが受けるって言って聞かなくて……」

 そう言いながら、ギルドマスターがあたしの方を見てくる。もうずっと近場の森で採集やゴブリン狩りしていれば、冒険したくなるのも仕方ないだろう。それにこの依頼は丁度良かった。

 そして、説明を受けたレイさんが、衝撃的な発言をした。

「この遺跡、自分が依頼で行くように言われてる遺跡と同じだな」

 この発言には、あたしもギルドマスターも動揺を隠せないでいた。

「この遺跡はあたしのギルドの子達が、最近見つけたものよ。この国の歴史学者とかならともかく、他国から渡ってきた人が知ってるなんて……」

「ああ。悪いけど、どういう経緯で依頼者がこの遺跡を知ったかは、知らないんだ。あと依頼者についても教えられない。信用を失うからね」

 ギルドマスターは、釈然としない様子でいた。あたしも、レイさんがこの遺跡のことを調査する依頼を受けているとは思ってもみなかった。

 しかし、ギルドマスターはこう聞いた。

「ちなみに、依頼内容って何なの?遺跡内の魔物の殲滅とかかしら。」

「大体そんな感じ。詳しいことは言わないように、依頼者に口止めされてるけど」

 ギルドマスターは、少し考え込むような仕草をしたあと、こう切り出した。

「なら、リタちゃんとユーリちゃんの依頼が終わるまで、2人の護衛を頼めるかしら。町の外だけで良いから。実力はあるようだし、依頼者の秘密をしっかり守るような人なら、信用出来そうだしね」

「ん、わかったよ。報酬はどうしようか」

「このギルドの依頼は、基本的に後払いとしているわ。そうねぇ…この闘技大会本戦のシークレット参加権利とかどうかしら」

 少しの間沈黙が流れた、ギルドマスターが交渉で、本気を見せるときの雰囲気だ。

「いやぁね。ツテで闘技大会にサプライズで参加する子を決めて欲しいって言われてるの。一押しの子は自力で勝ち上がって行って、決めかねていたから。闘技大会の日数はまだあるし、依頼が終わってからでも間に合うだろうから。それに闘技大会に興味あるでしょ?」

「わかった。あと連れのラムダが大会を見れるように手配してくれるなら良いよ」

「分かったわ。じゃあ関係者席で見れるように手配するわね。リタちゃんとユーリちゃんの護衛、頼んだわよ」

「その依頼、ムマとして受けるよ。さぁ、ご飯を食べようか」

 こうして、レイさんとラムダさんが護衛についてくれることになった。あたしとしては、とても頼もしい限りだ。

 テーブルに戻ると、もう一人分のステーキは既に来ていて、ユーリは背筋よく座っていた。

 ラムダさんとレイさんが少し話込んでいたが、その後は4人で話をしながら楽しい食事をした。ギルドマスターが奢ってくれるので、久しぶりに気兼ねなく食べれた。レイさんが着ている服はチャイナドレスを動きやすく改造した物だとか、使っている槍は、槍と斧とハンマーを組み合わせたハルベルトと呼ばれる物だとか、話してくれた。

 そうして、夜は更けていった。

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