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神殺しの魔物達  作者: 噺 遊月
夢魔【壱】
14/18

人は忘れる者

「それで、僕は夢の世界の住人なんですか?」

 僕…高野藍人は前を歩くリームさんに、こう尋ねた。僕は僕自身のことを思い出したが、未だに元いた場所のことはあまり。

「いや、違うよ。その服を見て思い出せない?」

「いえ…最近起きたことは思い出せたんですが…それが夢なのか現実なのかと言われると…わかんないんです」

「なるほど。じゃあ言っちゃおうか」

 リームさんが一拍置いて、僕が元いた場所について言った。

「君が居たのは夢の世界じゃなくて、ある神様が意図的に作った世界だよ。その世界は魔法が使えない代わりに、科学がある程度発展してる。そして公にならないところで色々な物が蠢いてるけど、この辺は直接関わらないと思うよ」

「…うん?」

 正直、ピンと来なかった。

「まあ、世界の概要を話してもよくわかんないか。とりあえず、君が現実と読んでる世界に住んでると思えばいいよ。戻れば思い出すだろうし」

「…僕を元の世界に戻せるんですか?」

「出来るよ。僕の館に来ればね。その為に館に案内しようとしてるんだし」

 リームさんは僕を元の世界に戻そうとしてるらしい。元の世界でどんな生活をしていたかは思い出せて来ているし、よくわからないこの世界よりも元世界に戻りたいと思う。

 しかし、元の世界から夢の世界に来たなら、一つ気になることがあった。

「リームさん。僕はどうしてこの世界に来たんですか?思い出せないんです」

 なんでこの世界に来たかだ。ここに来た意味がわからないのが、自分に不安としてあった。

「ああ、単純に呼び出されたからだよ」

 その答えは結構衝撃的だった。そして、一体誰に呼び出されたのか、そこが気になった。

 リームさんはこう続けた。

「ある夢の領域に住む子供達がね、いつも一緒にいる友達が迷子になっちゃったから、他の世界に助けを求めたの。そして君を魔法を使って呼び出したんだって」

「そんな子供でも出来るんですか」

「出来るよ、この世界ならね。他の世界から人を召喚する魔法自体は、その領域にあったみたいだし、それを使ったんだろうね。使うのに必要なエネルギーも少なくて済むだろうし。この世界って他の世界との壁が薄いからね。場合によっては他の世界と夢の領域とが融合することもあるし」

 つまり、子供達が助けを求めて、僕を呼んだらしい。助けを他の世界から呼ぶことがこの世界では簡単だからだそうだ。

 しかし、自分には憤りがあった。

「そんなことで、僕を呼ばないで欲しいです。大体、大人達を頼ればいいだけのことですし。それに、なぜか僕はこんなところで彷徨ってる事態になってるし」

「ああそれは、召喚に失敗があったみたいで、君がその領域から飛び出しちゃったみたい。召喚座標が大幅にずれたからっぽい」

 そんな失敗するような代物を使うなよ……と僕は思った。いや、子供だからこそそんな軽はずみに使うのだろう。

「はぁ…」

 呆れて言葉も無い。もっと他に取れる手段があるだろうに。

「彼らは必死だったんじゃない?」

「必死?」

 リームさんが一人でに呟いた。

「子供達で見つけた秘密の遊び場。その中で友達がどっか見つかんなくなっちゃった。大人達に知られれば、怒られて怖い思いをする。けど友達は絶対に助けたい。とすると、頼れる人を呼ぶこの魔法を使おうとなったんじゃない?」

「でも、だからって見知らぬ他人を呼ぶのはおかしいだろ」

「そう。君にはそんな経験ない?自分達には出来ない。大人は頼れない。でもしないといけない。…暗い森を一人彷徨う友達を助けたい。きっと友達は泣いていて、何処に行けばいいかわからなくて、そして助けを求めている」

「…無い。そんなことあるわけないだろう。そうだ…よな?」

 …あれ、無かったよな。何か忘れてる気がする。

「暗い森で…独り…秘密の遊び場…迷子……見知らぬ他人に……助けを求める?」

 …そうだあったじゃあないか、そんなこと。

 確か、僕が小学生の時。夏休みに友達と秘密基地で遊んでたとき。かくれんぼして見つからなくて、暗い森で迷子になったこと。最後は見知らぬお巡りさんに助けてもらったこと。

 あのときはわんわん泣いてて、あとで友達が警察に電話したことを知って、そして親にめちゃくちゃ怒られた。

「…なんで忘れてたんだ……」

 僕はそう呟いた。リームが答えてくれた。

「人は不要な記憶を忘れるでしょ。そしてこの世界に流れてきた記憶を取り戻したんじゃない?この世界は色んな記憶も流れてくるから」

 僕はそれで納得した。…そうか、自分はこれを不要と切り捨てたのか……。

「なあ、リーム。その子供達のところに案内してくれ。迷子の子供を助けないといけないと思う」

「大丈夫、行くところは変わらないから。それに、もう着いてる」

 いつの間にかリームは立ち止まってこちらを向いていた。その背後にはこの細い土の道と他の世界への扉、そして暗い空に輝く星の世界に似つかわしい、鉄柵の大きい門があった。

 リームはその門を内開きにあけて、こちらに手招きした。この先がリームの領域、リームの館なのだろう。

 僕は手招きされるまま、その門の中に入っていった。

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