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俺の浪人のはじまり

気づいたら、29歳の誕生日を迎えていた。

俺の誕生日は4月4日。


今年度も受験生か〜。

よし!今年こそやるぞ!なんて、もう今更そんなことは思わなくなっていた。


俺にとって、大学受験はゲームであり、義務のようであった。


俺は県内トップの進学校に通っていた。

そこの高校に行けば、自然に東大に行けると思っていた。

だから、なんとなく、東大を目指していた。


周りが焦りだしたのは高校2年の冬頃だったか…いや、秋頃だったっけ。

なんせ、12年も前のことだから、記憶が曖昧なのだ。

まぁ、いい。

その頃から、俺は、現役では受からないだろうから、浪人してもいいや、とほとんど諦めていた。

案の定、浪人が決定した。


確実に受験をなめていた。

絶対に受かると思っていた大学まで落ちたのだ。


さすがにショックを受けて、浪人1年目は、大手予備校の東大クラスで奮闘していた。


しかし、夏期講習ごろから、どうも力が入らなかった。


そして、予備校の同じクラスの素行があまり良くない奴らと遊ぶようになってしまった。


今まで勉強してきた分、遊ぶことはとても楽しく感じた。

真面目に勉強してる奴らを馬鹿にした。

でも、どこかでずっと罪悪感や、そういう奴らに嫉妬心を抱いていた。

気づいたのが遅かった。


もう11月の下旬だった。


ショックだった。

自分は何をしていたんだ、と深く反省をした。

両親は俺以上に悲しんでいた。


12月から頑張ろうとしたが、ブランクが空いていたから、なかなかうまくいかなかった。


そして、2浪が決定した。


ざっくり言って、2浪目はかなり病んでいた。

この年は自宅浪人した。いわゆる宅浪だ。

これが良くなかった原因だと思う。

毎日のように、今までの自分を後悔して、泣きわめいて、親にあたっては、ニートのように、ゲームばかりして過ごしていた。


母親は困り果てて、当時、カウンセリングを受けていたらしい。


結局その年は11月頃から正気を取り戻して、徐々に勉強していくようになった。


そして、いわゆるMARCHに合格した。

しかし、東大は足切られた。

それは想定内だったから、悔しくなかった。


俺はこの頃ネットで多浪の人は結構いることを知った。

なんだ。俺なんか、たったの2浪じゃないか。

そう思っていたので、また、浪人してもいいかなとも思っていたが、さすがに親が限界だと思われたので、受かった大学に入学することにした。


なんだ。11浪は嘘か。そう思った人もいるだろうが、俺の大学受験はここでは終わらなかった。


中には、なぜ、そこまでして浪人したいのか、東大を諦められないのか、と首をかしげてしまう人もいるだろう。


これはある種の呪いなのだ。

俺の場合は、この調子ならあと一年頑張れば、受かるんじゃね?と、3月頃になると、不思議と自信が湧いてくる。そして、ゲームの"リトライ"をカチッと押してしまうように、大学受験をリトライしてしまう。


あとは、今まで頑張ってきたのに、ここで諦めたらもったいないのではないか、という思いが及んでしまうことも一因である。


別に東大に行ってどうしてもやりたい勉強なんてない。


しかし、浪人年数が俺に東大を諦めさせてくれない。

例えば、高校の同級生は現役で、早慶に行ったのに、俺が一浪して早慶に入ったら、そいつより劣っていることを自ら証明することになる。

それは避けたい。


だから、俺にとって、東大に合格することは義務になりつつある。

東大に合格しなければ、この呪いは解けないのだ。


だから、俺は今年も受験生だ。

もちろん浪人を続ける。


さあ、今日も勉強の時間だ。


―完―

読んでいただきありがとうございます。


誰かの心を癒せる作品となれば嬉しいです。

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