謎の子供
朝、日の光が目にあたり、眩しくて目を覚ました。
寝ぼけた目には、ログハウス風の家の中が見えて、あれ、キャンプなら来たんだっけと考えて、自分が違う世界にいるんだと思い出した。
「あぁ、もう起きたのか?まだ早いから、もう少し寝よーぜ。」隣から聞こえたうめき声にびくっとして横を見てと大男が寝ていた。
そうだ、昨日は用心も忘れて寝落ちしたんだ。
何でだろ?自分でも、珍しい今の状況に首を捻る。
「何だ、腹へったのか?まぁ、昨日の夜から何にも食ってないからなぁ。よし、起きるぞ。
坊主!右手の奥に洗面所があるから、顔洗って来い。坊主はきれい好きだからなぁ。ははは。」
笑いながら、頭をわしゃわしゃ撫でてきた。
頭がぐらぐらしながらも、少し頬が赤くなる。
まるで小さい子みたいだ。
「あの、僕。井戸の水汲みでも、薪拾いでも何でもします。」
お金も何も持っていない。昨日からお世話になるだけの自分だ。だから、せめて得意の薪拾いでもして役に立ちたかった。
こんなところにも前世の記憶が出る。
ただ飯食いはダメだ。世話になったら恩を返さなきゃ。じっと大男を見ると、ちょっと困ったような顔が、自分を見ていた。
「あのなあ、おっちゃんはそんな薄情な人間ではありません。小さい子供は遠慮しなくてもいいんです。それにお腹の虫は、違うこと言ってるみたいだけどなぁ。」
最後はジト目で見られて、自分のお腹がグーグー鳴っているのに気がついた。
「あ、あのー。」
おっちゃんの言葉に遮られる。
「さあ、顔洗え。それともヨダレは気にならないかい?」
今度は確実に笑ってる。
慌てて自分の顔を拭う。
ベッドから飛び出ると急いで洗面所に向かう。
顔を洗っているうちにいい匂いがしてきた。
テーブルの上ににはすごいご馳走が並んでいた。
柔らかそうなパン、リージュと呼ばれる林檎に似ている実。野菜のスープからは湯気が出ている。大きな肉の塊は、前世の記憶を足しても見た事がない!おもわずよだれを飲み込んだ。
「さあ、食え。」
大男は一時も手を止める事なく隣に座るよう促した。
「いただきます。」手を合わせてからパンに手を伸ばす。やわらかい、温かい。じわっと潤んでくるのを無視して夢中で食べた。
お腹の虫は大喜びだ。朝ごはんのおいしさは、これまでの人生で一番だったと思う。
物凄い勢いでたべながら、俺は子供の観察続ける。品の良い食べ方。今時の子には見た事がない。大体、あの挨拶は何だ?いただきます。って何だ?どこの国の風習かわからない。
謎だらけの子供は、笑顔と涙で必死に食べている。昨日、抱き上げた時に軽いなあとは思っていたが栄養不良は間違いない。
この子の両親は?
はぁー、本当に疑問の山だ。
警戒心と遠慮の塊のこの子に、質問するのは、難しいなあ。少し話を聞いたらマルクの所へ連れて行くか。
俺はすべて食材を食べ尽くしつつ、考えをまとめた。