2年後の生活 3
居間の前に着くと扉を軽くノックした。すると先程と同じように中から「どうぞ」と声がしたのを確認してから扉を開けて中へ入った。中を確認するとお茶を用意する前と変わらず梨花が座ってシステアに膝枕をしてあげていた。変わったことは梨花が小道具を作っていたことぐらいだろうか。
「梨花、お茶を持ってきたぞ」
「奏さんありがとうございます。」
「梨花さんお久しぶりです。」
「あら、カトレア久しぶり元気にしてた?」
「はい、私は元気ですよ。ところで何をなさっているのですか?」
「ああこれ?小さめのアクセサリーを作ってるのよ」
「いえそちらではなくて・・・」
「ああ、システアの方ね、システアが疲れているみたいだったから少し休ませてあげたら見事に寝ちゃったのよね。」
「そういうことでしたか、システアが起きたらきつく言っておきますね。マスターに迷惑をかけるとは・・・」
「カトレア、ほどほどにしてあげろよ」
「わかってますマスター。ちゃんと加減しますから。」
俺は先程と同様に梨花の正面に座った。カトレアは俺の左隣に座りお茶とお菓子を皆に取り分けてくれた。机の上に置いてあるお菓子は毎日カトレアが交換しているため賞味期限や痛みなどを気にすることなく食べることが出来る。
この家の管理は基本カトレアがやってくれているが俺もどこに何があるかはしっかり把握している。掃除や洗濯などはカトレアが担当しているが料理と買い出しは交代して行っている。そのため今日はカトレアが買い出しに行ったが次に買い出しに行くときは俺が行くことになっている。
俺たちはその後10分位世間話をしていた。最近の店のようだとかこの町の様子、値上がりした商品や値下がりした商品のことその他にも他の同級生のようだとかを話していた。カトレアは同級生の事をほとんど知らないので話しているとき少し寂しそうにしていたので同級生の話題はすぐにやめた。梨花も気づいたらしく言葉にする前に理解してくれた。
「ふぁぁぁ~」
話している途中に何とも間抜けな声がしたので視線を向けてみるとシステアがおきようとしていた。
「あ、あれ?わたし寝ちゃってた?
システアが梨花の膝から起き上がった。まだ眠たいのか少し目がトロンとしていたが目を覚ますためか体を軽く伸ばしていた。
「おはようシステアよく眠れた?」
「マ、マスター!お、おはようございます。も、申し訳ございません。マ、マスターのひ、膝の上でね、寝てしまって。」
「そんなの気にしなくていいわよ、疲れたときはゆっくり休まないとね。それより奏さん達にもあいさつしなさい。」
「は、はい。」
「えっと、奏さんお姉ちゃん久ぶりで~す。忙しいところ訪ねてごめんね。」
「気にしなくていいよ、お客さんも当分来ないだろうしね」
「システア、あなたはもう少し自分のマスターに忠誠をつくしなさい。マスターの膝で寝るなんてだめですよ。」
「ごめんってお姉ちゃん。これから気を付けるって」
「次は厳しい罰を与えますからね」
今回は軽い注意で終わったようだがカトレアは怒っているらしく次回はしっかりと罰を与える気らしい。カトレアの怒りが収まってから本題へと話を進めることにした。
「ところでカトレアに用事があるって言っていたけどそれの内容は何だ?」
「奏さんはレイーゼという街を知っていますか?」
「ああ、レイーゼっていえばこの町から馬車で3日の所にある街だろ?」
「ええ、そうです実はその街でオークションが行われることになりましてそちらに行きたいのです。」
「オークション?普通オークションってもっと大きな町でやらないか?王都とか都とか」
「ええ、本来ならそうなんだけど今回はレイーゼの人たちの強い要望があって王都ではなく自分たちの街でやることにしたそうです。」
「ああ、たまにあるあれか街が経済的に苦しくなるとやるやつか」
「はい、いままでオークションって王都とか遠いところでしか開催していなかったので今回近場で開催されることになったので行ってみたいなと思いまして。」
「でも王都とかでやるときと違って商品の集まりが悪いんだろう?行く価値があるのか?」
「確かに王都とかでやるときより商品の質は落ちますし量も少ないですね、でもその代わり小さな街でやるオークションは個人で出品が出来るんです。なので今回のお目当ては個人で出品している人の商品ですかね」
「なるほど確かにそれなら行く価値があるかもしれないな。個人のお店には掘り出し物も多いしな。」
「はいそこでお願いなのですがカトレアも連れて行っていいでしょうか?」
「カトレアを連れていきたい理由はなんだい?」
「最近この辺レイーゼに向う公道に山賊が出るそうなんです。何人もの商人や冒険者が襲われています。主な目的は食料や衣服・武器・お金のようですが人攫いや殺人などをすることもありすでに4人が行方をくらませています。その四人は家族で出かけているときに山賊の被害にあったそうです。その時護衛にいた冒険者1人が死亡2人が重傷を負ったそうです。」
「なるほど、確かにその話を聞くと安心して行くことが出来ないなあ。行くのは梨花とシステアの2人かい?」
「いえ、私とシステアの他にお店で働いている子も1人連れていくことになっています。道中は他の商人の方たちとCランクパーティーが一つ護衛で一緒に行くそうです。合計人数13人で行くことになっています。」
「Cランクパーティー1つで8人近くを守るのは確かに厳しいものがあるな。」
護衛の依頼を受けることが出来るのはCランクの冒険者からである。遠くに行けば行くほど護衛の報酬も多くしなければならないがその分要求される冒険者ランクが高くなったり要求されるレベルも上がっていく。
今回の護衛は合計で1週間程度なのでCランク冒険者でも問題はない。ただ山賊が出るという証言がある以上Cランクのパーティーが2つ以上かBランクのパーティーが1つぐらいは欲しいところである。因みに報酬は護衛してもらう人たちがお金を出し合って報酬にしている。地球で言うところの割り勘というやつだ。
「はい、いざとなれば私とシステアも戦闘に参加しますが。できればもう1人人材が欲しいところですね。私は魔法攻撃主体ですしシステアは近接特化魔法はほとんど使えませんもの。」
「うう、ごめんなさいマスター、わたしが魔法を使えればもう少し楽に移動することが出来きたのに」
「まあ苦手なものは仕方ないですわ。システアは自分にできることを頑張りなさい。」
「はい!」
「確かにバランスを考えると防御に優れた人がいた方がいいかそうするとやっぱりカトレアが適任か」
「はい、なのでカトレアを一週間雇わせてくれないかと思いまして」
「カトレア」
「はい」
「頼めるか?」
「マスターのご命令とあれば喜んで」
「決まりですね」
「ああ」
方針が決まったところで少し休憩してからお話を再開することにした。話し合う前に入れていた冷たいお茶を口にすると既に常温となっていた・・・。