2年後の生活2
こっそりと続きを投稿・・・
現在俺の店には梨花が訪ねて来ていた。梨花に限らずこの店にはコージや休憩中の玲奈と翼などが訪ねてくる。その理由を前に聞いてみたら「集まりやすい場所にあるから」や「お客さんがいないからゆっくりできる」などの意見が挙げられたまあその通りなので何も言えなかった。
「ところで奏、カトレアはどこにいるの?」
「ん?カトレアならお昼ご飯とか日用品の買い取りに行ってるよ」
「そっか、残念だったねシステア、お姉ちゃんいま外出中だって」
「マ、マスター、よ、余計な事、い、言わないでください」
「なあ、もしかして二人ともカトレアに会いに来たのか?」
「まあ、カトレアに用があったのは事実ですけど、奏にも関係のあることですよ」
「俺にも関係のあること?」
「はい、詳しい話はカトレアが戻ってからしますね」
「ああ、そうしてくれ」
「では奥で待たせていただきます。」
梨花はそう言ってシステアと一緒に店の奥にある居間に向かって歩いて行った。居間はカウンターの裏にあり梨花や翼・玲奈・コージは店に来ると大体この場所でしゃべっている。売り場の近くにあるため来店を伝えるベルも聞こえるため店番は基本此処でゆったりとお客さんが来るのを待っている。
俺はさっきまでやっていた事をやめカウンターの椅子に座り本を読みながら待っていた。
この世界の言語は日本語ではないため読み書きには随分と苦労したが今は日本語と同じように使うことが出来る。
よく先生などに言葉が通じない国で生活するとその言葉を必死に覚えようとすると言われていたが本当にその通りだった。
今読んでいる本は「調薬の書」というものだ、「調薬の書」とはポーションなどを作るのに必要な知識や材料が示されたものである。「調薬の書」より簡単な本として「調薬の心得」なんていう本もある。俺はどちらの本も最後まで読んだのだがここに載っている生産方法は一般的なもので別の作り方で作ることもできその方が効果も高いというデータも得ている(自分で検証しました)。その時は教えてくれる調薬師の人がいたのだけど今はいないので完全に独学で勉強している。
そうだ先にカトレアとシステアについて話しておこう、詳しいことは此処では説明しないが端的に言うとカトレアは俺のパートナー兼メイドでシステアは梨花のパートナー兼メイドである。因みに二人は姉妹で先程の会話からわかるようにカトレアがお姉さんだ。2人とは約一年前にこちらの世界で出会ったのだ。2人との出会いについては別の機会に説明するとしよう。
梨花たちが来てからおよそ半刻が経過した頃店の扉が開きカトレアが買い物から戻ってきた。
「マスターただいま戻りました。」
「おかえりカトレア、買い物ありがとね」
「いえ、マスターのお役に立てて何よりです。買ってきたものはいつもの場所に置いておきますね」
「ありがとう、荷物を置いたら居間に来てくれるかな?少し前に梨花とシステアがきてカトレアに会うために居間で待ってるから。」
「梨花さんとシステアが来てるのですか?わかりました。では先に荷物を置いてきますね」
カトレアはそう言って建物の地下に向かっていった。俺は読んでいた本を閉じカウンターに置き席を立って梨花たちの待つ居間へと向かっていった。
居間の近くまで歩いて行っても梨花とシステアの話す声や物音がしなかった。これが他のメンバーだったら店まで聞こえるような大きな声で騒いだりすることもあるのでこの状況はとてもありがたい。まあ相変わらずお客さんは来ていないけれど・・・。
「梨花入るぞ」
「どうぞ」
中から梨花の声が聞こえたのを確認してから俺は扉を開けた。まず目に飛び込んできたのはいつもの居間の風景、畳によく似た敷物に小さなテーブル梨花に作ってもらった小さなクッションが5つそしてテーブルの上にはお菓子が上がっている。
いつもと違うのは梨花がいるぐらいだ。システアもこの部屋にいるはずなのだが今俺が立っているところからは姿が見えない。
梨花が座っている方とは逆側向かい合って座るとシステアが見えた。どうやらシステアは梨花の膝枕で寝ていたらしい。体を小さく丸めておりその上には小さな毛布がかかっている。カトレアが帰ってくるまでの間に寝てしまったみたいだ。
「すまないな随分と待たせてしまって、さっきカトレアが帰ってきたからもうすぐこの部屋に来るはずだ。」
「いえ、アポも取らずに来ているのはこちらですから仕方がないです。」
「システアは寝ているのか?」
「はい、疲れがたまっていたようでしたので膝枕をしてあげたらすぐに寝てしまいました。ぐっすり寝ているのに起こすのも悪くて申し訳ございませんがこのままでもよろしいでしょうか?」
「ああ、」
「ありがとうございます。」
「少し待っていてくれお茶を入れてくる。」
「わかりました。ありがとうございます。」
俺はそう言うと二階へとつながる階段を上っていた、二階へ上がるとまっすぐにリビングに向かいお茶の準備をしていた。今日は暖かいから冷たい飲み物の方がいいかなと思い冷たいお茶厳密にいえば常温のお茶に氷を入れたお茶を準備していた。
準備している途中に扉の開く音が聞こえたので振り向いてみると保管庫からカトレアがでてくるところだった。先程まで持っていた荷物はすでに手の中になく服も外出していた時の服から着替えてノースリーブの服にミニスカートといった格好に着替えていた。
カトレアはシステアのようにメイド服を着たりすることはあまりない、なんでもいろんな服を着て少しでも魅力をアピールしたいんだそうだ。メイド服を着るのは大きな集まりがあるときぐらいなものだ。
「マスターお持たせいたしました。搬入と着替え終わりました。」
「うんお疲れ様」
「マスターこの服どうでしょうか?」
「うん、とてもかわいいよ、色合いも落ち着いていてカトレアにあってると思う」
「あ、ありがとうございます。ところでマスターはお茶お入れてるのでしょうか?」
「うん長いこと2人を待たせてしまっているわけだからそれぐらいのことはしないとね。」
「申し訳ございません。本来なら私の仕事だというのにマスターにやらせてしまって。」
「カトレアにはこっちが仕事を頼んだんだから気にしないでいいよ。」
俺はそう言ってカトレアに近づき優しく頭を撫でた。
「ま、マスター・・・あ、ありがとうございます。」
「よしそろそろ行こうかお客さんを待たせちゃ悪いし」
「はい、マスター」
俺とカトレアはお茶の準備をして2人で今に向かって歩いて行った。カトレアの方を向くと彼女もこちらを向いて「にっこ」と笑顔を浮かべていた。その笑顔はとてもかわいらしくいつみても最高のパートナーであることを強く意識させてくれる。そんな思いを抱きながらカトレアとともに日々の生活を送っている。