エリシアとサディア2
昨日に引き続き連続投稿です。
俺は家に入ると明かりをつけ少女を居間に寝かせ二階に上がり氷水と毛布、タオルを持って居間に戻った。居間に戻って最初にやったことはセミロングの子の応急処置だった。軽く汗を拭き毛布を掛けてあげた。少し体が熱かったので氷水で冷やしてあげた。
長髪の少女はとりあえず体についている血を拭き毛布を掛けて様子を見ていた。しばらくすると長髪の少女は意識を取り戻したので体を起こしてあげてあらかじめ用意していた水をゆっくり飲ませてあげた。水を飲んだ後落ち着いたのか息を吸ってから綺麗な声で」話しかけてきた。
「助けていただいてありがとうございます。私はエリシアです。気軽にエリーと呼んでください。」
「エリシアかまあ、よろしくな、一緒にいたのは妹さん?」
「はい、そうです、・・・っは、い、妹はどこですか?だ、大丈夫なんですか?」
「君の妹は机をはさんで反対側で寝てるよ。」
「サディー、サディ―、だ、大丈夫?」
エリシアはすぐに妹のそばに駆け寄って体をゆすっていた。エリシアの怪我もまだ治っていないので相当痛いはずなのだがよほど妹のことが心配なのか怪我の事を気にせず飛び込んでいった。だがやはり痛いらしく険しい顔をしながらも顔が少しひきつっている。
「落ち着けそんなに慌てても状況は良くならない、むしろ妹が苦しそうにしてるぞ。」
「お、お願いします、い、妹を、た、助けてください。わ、わたしなんでもしますから。」
エリシアはそう言って泣きついてきた。今までの様子から見るにどうやら本当に妹のことが大切でどうにかして助けてあげたいと思っているみたいだ。
「まあ、いったん深呼吸でもして落ち着いて」
「は、はい、すぅ~、はぁ~」
暫く深呼吸をすると再び落ち着きを取り戻したようだ。今度は行くり話してもらうべくエリシアと向かい合う形で座り話し合うことにした。
俺は妹の状態に心当たりがないか聞いてみることにした。
「それで妹さんの状態について何か心当たりとかあるかな?」
「はい、昨日でしょうか?先日家族と隣町に行く途中に盗賊に襲われまして激しく抵抗したところ護衛してくれていた冒険者が亡くなってしまい、私たちも誘拐されてしまったんです。」
話を聞いていると先日梨花と話しに出てきた盗賊に襲われた一家のようだ。まさかこんなところで話が出てくるとは思ってもみなかった。
「その後私達は暫く盗賊の拠点に閉じ込められていて食事も満足にとれていませんでした。私達はこのままでは奴隷に売られてしまうか最悪の場合死んでしまうと考え脱走計画を立てました。」
「ですが、そこで事件が起こりました。脱走日当日は盗賊たちが宴会を開いていて逃げるのには絶好の機会でした。私たちは彼らにばれないよう檻から脱出しました。そこまでは順調に事が進んでいました。私たちは無事に脱出できました。ただ問題は栄養失調で歩くスピードが上がらず当初予定していた日数よりも町に着くのが遅くなってしまったのです。」
「そこで事件が起こりました。C級の魔物であるオーガが現れたのです。私達姉妹はまだ魔物退治をしたことがなく唯一経験のある父親は普段使っている得物をもっていなくさらに食事も私たちが生き延びれるようにするためあまり食べていませんでした。でも父と母は私達を逃がすためオーガの注意を引くために戦い始めました。その隙に私と妹は逃げることが出来ました。」
「オーガを振り切ることには成功しましたがその後この町に向かう途中にゴブリンに襲われてしまいました。私たちは戦うことが出来ないので必死に逃げ回りました。その途中にサディーは転んでしまいゴブリンに襲われそうになりました。私はとっさに前に出てかばいました。この傷はおそらくその時に負った物でしょう。」
「そのピンチを助けてくれたのが妹でした。しばらくはゴブリンの攻撃が続いていたのですが突風が吹いた途端に攻撃が止まりました。私は恐る恐る顔を上げると遠くにゴブリンの死体が転がっていました。妹の方を見ると息を切らしながらゴブリンの方を見ながらこっちに向かって歩いてきたのです。その時右手に風のようなものが渦巻いているのが見えました。その直後妹が倒れました。私は倒れた妹を背負いながらこの町に戻ってきました。」
「思い当たるのはこれ位でしょうか何かわかりましたか?」
「ああ、おそらく、マナ欠乏症と魔力暴走が原因だろう。」
「マナ欠乏症?魔力暴走?」
「ああ、マナ欠乏症というのは体内にある魔力が基準値を下回ってしまい枯渇していることだ。魔力暴走というのは自分の持っている魔力が自分の意志とは関係なく使われてしまうことだ。」
「魔法は使ったことがあるかい?」
「私は学園で習っているので使ったことがありますが妹はまだ通い始めたばかりなので使ったことがないと思います。」
「魔力暴走は魔力を多く持っている者や魔法を使ったことがないものが起きやすいんだ。魔法を使った事がなくて魔法について半端な知識を持っている者が一番危ないとされている。」
「それで、妹は助かるんですか?」
「ああ、大丈夫だ、ちょっと待ってろ。」
そう言って俺は隣の研究室に入っていった。研究室には様々な薬も置いてあるため俺は2本の薬を手に取るとすぐに居間へと戻った。
「お待たせこの2つが薬になるから飲ませてあげてね。飲ませる順番は紫の薬を飲ませた後に青色の薬を飲ませるんだよ。」
「わかりました。因みにこの薬は何ですか?」
「紫が魔力安定剤で青い方がマナポーションだ。」
「わかりました。ありがとうございます。」
「サディー薬だよ、ゆっくりでいいから少しずつ飲んでね。」
エリシアは2つの薬をもって妹の方へ近づくと声をかけながらゆっくりと薬を飲ませていた。教えた通り紫の薬飲ませてから青い薬を飲ませていた。しばらくすると妹の顔色が良くってきた。今までは苦しそうにしていたが今度はかわいらしい寝息を立てて寝ていた。エリシアは妹の顔色が良くなってきて安心したようだ。
「妹の顔色が良くなってきてよかったね」
「はいありがとうございます。なんとお礼を言っていいか。」
「お礼なんていいって、それよりエリシアも酷い怪我を負っているじゃないか急いで手当しないと。」
「あの私は大丈夫ですから。」
「そうはいってもいつまでもそんな姿にしておくわけにはいかないからね。早いうちに治療しないと。」
「はい、すみません。ありがとうございます。」
「そこに座って動かないでね?」
「はい?」
俺はエリシアに向けて右手をかざし詠唱を始めた。
『女神の使徒よ、我が呼びかけに答えよ、精霊の象徴たる天使よ、光の導きに従いて、かの者の傷を癒し賜え。』
詠唱を終えると魔法が発動しエリシアの傷を治していった。聖の特性しか持たない人は初級魔法しか使えず初級魔法では擦り傷や軽い切り傷を治すことはできてもエリシアの怪我のように骨折を治すことが出来ない。そのためエリシアは自分の体に起こった現象を信じられないように見ていた・・・。
感想・ブックマーク等もらえたら嬉しいです。