第一部
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蹴り上げた。
蹲る相手。
拳を天に掲げ、仁王立ちする私。
幼稚園で、私は、最強の名をほしいままにしていた。
夜。
両親が家族会議をしていた。
「あれで、「まだ自分は幼虫だ。」と言ってるんだが…。羽化したら何になるんだろうな…。(白目)」
「………メカ〇ジラ?」
がっくりする父。
うん。私は母親似だわ。
がっくりする父を見て、慌てて別の答えを探す母。
「………ガイ〇ン?」
ガイ〇ンいいよね。
今度、ソフビ人形を買ってもらおう。
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拳を天に掲げ、仁王立ちする私。
小学校でも、私は、最強の名をほしいままにしていた。
低学年だけでの話ですが。
父に、「道場に通わせることにした。」と、言われました。
うんうん。私も最強を目指す為に、そろそろ関節技を極めたいと思っていました。
父に連れられて、道場に行きました。
胴着を着た、師範らしき人に挨拶をします。
今日は見学です。
見学した”それ”は、私の思っていたものとは大分違うものでした。
合気道と言うのだそうです。
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両親に、「私の思っていたものとは違う。」と、言いました。
父に、「絶対に役に立つから。」と、言われました。
どの様に父をぶちのめすか、頭の中で何通りか思い描きます。
母に、「絶対に役に立つから。」と、言われました。
ガイ〇ンのソフビ人形を買ってくれた母がそう言うのなら、そうなのでしょう。
あれは良い物だ。(ふっ。)
私は、合気道の道場に通うことにしました。
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同じ道場に通う女の子と一緒に、帰り道を歩いていました。
トラックに負けました。
敗因は、トラックの急所を知らなかった事だと思います。
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目の前で、自称”神様”が蹲っています。
もちろん、蹴り上げたからです。
トラックよりも弱い、この自称”神様”が言うには、こいつの所為で私は死んでしまったとのことです。
『よし、殺ろう。』と、思いました。
「別の世界になら、生き返らせる事が出来る。」とか言っています。
『取り敢えず、殺ってから考えよう。』と、思いました。
気を失いました。
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気が付くと、別の人が居ました。
神様だそうです。
ああ、そうですか。
この二人目の自称”神様”の管理する世界に、生き返らせる事が出来るんだそうです。
戦争の少ない、平和な世界だと言うことです。
重要な事を訊きます。
「さっきの自称”神様”を殴り足りないのですが、何処に居ますか?」
何処かに落とされました。
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森の中に居ます。
所持品は有りません。
二人目の自称”神様”も、殴らなければなりませんね。
それはそれとして。
困りました。
どちらに行けば良いのか、さっぱり分かりません。
取り敢えず、何か聞こえないか、耳を澄ませます。
風の音と鳥の鳴き声しか、聞こえませんでした。
なんとなく、東であろうと思われる方角へ向かいました。
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休憩しながら、丸一日歩きましたが、森を抜けられません。
崖から水が湧いている場所がいくつか在ったので、水だけは何とかなっています。
『これはマズい。』と思いました。
このままでは、森を抜けても、すぐに死んでしまうのではないかと思いました。
森の中で生きる方法を考えた方が、いいのかもしれません。
”ねぐら”になりそうな場所を探すことにしました。
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洞窟を見付けました。
崖から水が湧いていて、周囲がぬかるんでいます。
『水の確保が容易だと考えれば、悪くはない。』
うん。そう思う事にしましょう。
近付こうとして、気が付きました。
ぬかるみに、足跡が有りました。
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人が居るのは、この場合、良い事なのでしょうか? 悪い事なのでしょうか?
戦闘になる可能性を考えます。
今の自分の体力で大丈夫でしょうか?
今後の、自分の体力の回復の見込みも考えます。
戦闘を回避することを前提とすることにしました。
『一旦、この場所から離れましょう。』
そう思ったら、洞窟から人が出て来ました。
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洞窟から出て来た人は女性でした。
二十歳くらいでしょうか?
怪我をしている様に見えます。
目が合いました。
「………迷子か?」
私は、頷きます。
彼女は、私をじっと見詰めます。
そして周囲を見て、私を手招きしました。
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洞窟の中に入りました。
あまり広くはありません。
彼女は、リリスと名乗りました。
「怪我をしているから休んでいる。」とのことです。
「あと数日休んでから、街に向かうつもりだ。」と、言います。
”街”という言葉に、反応してしまいます。
「街に行きたいのか?」
バレてしまいました。
「食料の確保を、お願い出来ないだろうか?」
彼女が訊いてきました。
「食べられる物を知らない。採る手段も無い。」
正直に答えます。
果物を一つ渡されました。
「食べていいよ。」
食べます。
この世界に来て初めての食べ物です。
美味しいです。
「それは低い木に生っているので、採れるはず。」
他にも、食べられる木の実や果物の説明を聞きます。
短剣を渡されました。
「護身用に。」と。
猿と猪が近くに居るらしいです。
袋を受け取り、食料を採りに行きます。
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洞窟に戻ります。
採って来た木の実と果物を見せます。
食べられない別の物も混じっていました。orz
それらは、外に捨てます。
感謝されました。
「猪を倒したのだけど、重くて運べない。」
そう言ったら、彼女は固まりました。
「………じゃあ、解体して運ぼう。案内して。」
案内しました。
「………じゃあ、解体する。周囲を警戒していて。」
見事な手際で解体しています。
切り分けた肉を袋に入れて、洞窟に帰ります。
骨や内臓は、そこに放置です。
本来は埋めるものらしいのですが、体力の消耗を抑える必要があるので、放置するとのことです。
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洞窟に戻り、早速”肉祭り”です。
満腹です。
幸せです。
残りの半分を燻製にするんだそうです。
彼女はその準備をしています。
いつの間にか、私は眠ってしまっていた様です。
起きたら夜だったので、肉を食べて、また寝ました。
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木の実と果物を採ってきたり、もう一度、猪を仕留めたりして、数日過ごしました。
リリスとは、かなり打ち解けたと思います。
リリスが、初めて私に会った時の事を話します。
私の事を、”死神”か”迷子”だと思ったそうです。
珍妙な二択ですね。
「拳で話し合う必要が有りそうですね。(笑顔)」
「元気になったらねー。(笑顔)」
明るく言います。
どうやら彼女は、私の”お仲間”の様です。
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洞窟を出て、東に向かいます。
1日歩いて、森を抜けました。
街までは、さらに1日掛かるんだそうです。
道中、髪を隠す様に、頭に布を被ります。
『この国には、黒髪の人は居ない。』とのことなので。
”死神”かと思われる訳にはいきませんからね。(黒い笑顔)
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街に着きました。
この街で2、3日休息し、馬車を雇って、リリスが住んでいるという王都に向かいます。
服を調達し、髪を隠す為に、頭にマフラーの様な物を巻く事になりました。
2日後、リリスの仲間だと言う方たちと一緒に、馬車で王都に向けて出発しました。
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王都に着きました。
馬車は、王宮っぽいの敷地の中に、裏口らしき門から入りました。
王宮っぽい場所に入った事に、私は焦ります。
「ちょっと待とうか、リリスさん。」
「大丈夫、大丈夫。ただのメイドだから。」
森の中で見た、猪を解体した時の見事な手際を思い出します。
「ただのメイドぢゃないよね?」
「タダノメイドダヨー。」
後ろめたい事の有る人の声に聞こえました。
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メイドというのは、本当の様でした。
メイドの寮らしき建物に、私は連れて行かれました。
その建物の中の客間みたいな部屋に通され、待っているように言われました。
「上司に報告をしないといけないから。」とのことです。
「じゃあ、寝てる。」
ころんとします。
「猫がおる。(笑)」
リリスの仲間がそんな事を言っています。
この世界にも居るんだ、猫。
ふと、一緒にトラックにはねられた、猫好きの女の子の事を思い出しました。
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「ここで、メイドさんになる気は無い?」
リリスが、そんなことを言います。
「むり。」
「えぇー?」
「メイドなんて無理。」
「大丈夫よ、ここのメイドは普通じゃないから。」
「尚更無理でしょ。なんで大丈夫になるのかな?」
「普通じゃないから。」
「訳が分からないよっ。」
「メイドになってくれたら、その髪の事を何とかしてくれるかもしれないよ。」
「………。」
「明日、訓練の見学をしよ? きっと気に入るよ。(笑顔)」
翌日。
私は、メイドになることに決めました。
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メイドの寮に住まわせてもらえることになりました。
『衣食住げっと!』です。
メイドになる為に学ばなければならない事は、とても多いです。
しかし、私はまだ7歳です。
まだまだ時間が有ります。
ですので、「学びたい事から学べば良いよ。」と、言ってもらえました。
やったね。
まずは、『一般常識』と『読み書き』と『礼儀作法』と『格闘術』を選択しました。
今から早速、格闘術の訓練です。
先輩方に相手をしてもらいます。
「………………。」
ここの先輩方は、化物ばかりですか?
まったく敵いません。
”トラック”レベルです。
いやいや、メイドさんがこんなに強い訳がありません。
この世界の人たちが強いのでしょう。
焦ります。
この世界で生きていく為には、もっと強くならなければなりませんね。
訓練に一生懸命取り組むことにしましょう。
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ここに来て、30日ほど経ちましたでしょうか?
偉い人に呼ばれました。
リリスも一緒です。
『髪の色を金色に見せる魔道具が出来た。』とのことです。
すっかり忘れていました。
周りの先輩方から、何も言われなかったので。
”死神”とは何だったのか。(苦笑)
魔道具はネックレスの様です。
首に掛けます。
部屋にある鏡で自分の顔を見ます。
髪が金髪に。瞳の色も金色になっていました。
リリスと同じ色です。
魔法使いっぽい人が、「瞳の色を変えるのがー」とか「ここの魔法はー」とか言っていますが、誰も聞いていません。
偉い人にお礼を言います。
これで、もっとこの世界に馴染む事が出来ますね。
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10歳になりました。
この世界の一年は350日だそうです。
350日なのは、そう決めたからだそうです。
そうやって決めていいものだったでしょうか?
それがここのルールならば、それでいいのでしょう。
元の世界に居た時の年齢と日数と、こちらに来てからの日数を足したら、10歳になりました。
あと3日で、リリスと初めて会った日になります。
その日を誕生日にすることにしました。
ふと、家族と祝った誕生日の光景が目に浮かびました。
懐かしさに、思わず口から言葉が零れました。
「ガイ〇ン…。」
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寮の敷地に、犬が迷い込んで来ました。
手が空いていたので、捕まえに行きます。
首輪が有りますね。
王宮の警備の為に飼われている犬なのでしょう。
距離を詰めていき、敷地の隅に追い込みます。
犬は左右に動いて『捕まえてみろ』と、挑発しているかの様です。
イラっとします。
一気に距離を詰めます。
犬は驚いて動きを止め、左右どちらに動いたら良いのか戸惑っている様です。
ガッと手を伸ばして、首輪を掴みます。
睨みつけます。
『きゅーーーん』と、鳴いています。
捕まえたのは良いのですが、この後どうしましょうか?
犬小屋まで帰ってほしいのですが、犬にそう言ったところで、どうにもなりません。
困りました。
犬も困っている様です。
『きゅーーーん』と、鳴いています。
犬は横になり、腹を見せました。
別に腹を見せてほしい訳ではありません。
仕方なく、犬小屋まで首輪を掴んで引きずって行きました。
思いの外、重労働で、凄くイラっとしました。
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犬小屋に着きました。
飼育員っぽい人に、犬を引き渡しました。
凄く謝ってくれました。
貴族のボンボンっぽいのが居ました。
彼の所為で逃げてしまったとのことです。
ほう。
彼が謝ろうとした時には、もう蹴り上げていました。
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偉そうな人に、凄く怒られました。
王子様だったそうです。
へぇ、そうですか。
「この国の王族が絶えてしまったらどうするんだ!」と、言われました。
「そんなに大事なら、大切に仕舞っておけ!」と、言いました。
偉そうな人に、凄く怒られました。
この事を先輩方に話したら大ウケしましたので、良しとしましょう。
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リリスにアドバイスをもらいました。
「訓練に綱渡りを取り入れよう。」
「体の軸が安定して、蹴り上げの威力が増すよ。」
「キッチリ、潰せる様になるよ。」
『潰せる』とか言われて、感触を思い出してしまいました。
感触を忘れるのに3日も掛かりました。
怒られた事よりもダメージを受けました。
おのれリリス。
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リリスにされた妙なアドバイスの事を、上司に密告します。
「リリスは王子様の”〇〇”を、私に潰させたい様です。」
上司に大笑いされました。
笑い過ぎで苦しそうです。
『息も絶え絶え』というのは、こういうのを言うのでしょうね。
楽にしてあげなければいけませんね。うん。
介錯に使えそうな得物を見付けたら、護衛のメイドさんに羽交い絞めにされました。
身動きが出来ません。
まだ何もしていないのに。
ぬう。
「変な心配は要らないから、綱渡りの練習をする様に。」
上司は笑いながら、そう言います。
この上司もグルの様です。
この国の王族は、どんな恨みを買っているのでしょうか?
リリスの言っていた、『体の軸が安定して、蹴り上げの威力が増すよ。』という言葉には魅力を感じますので、練習はしますが。
さぁ、綱渡りの練習です。
「………………。」
「今日のところは、このくらいにしといてやるぜ。」
まさか、こんなセリフを言う日が来るとは…。orz
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綱渡りの練習を始めて、大分経ちました。
『体の軸が安定する』というのを、実感します。
今では、綱の上で片足跳びが出来るまでになりました。
この練習のおかげで、だいぶ強くなったと思うのですが、相変わらず先輩方には勝てません。
ここの先輩方は化物かっ。
ふと、蹴り上げの動作をしてみました。
”威力”が増すと言うか、”切れ味”が増していました。
人に使ってはいけないレベルだと思います。
封印する事にしました。
リリスの狙いはコレだったのかっ!
おのれリリス。
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12歳になりました。
相変わらず先輩方には勝てません。
『今のままではいけない。』と思いました。
”強くなる”ではなく、”勝つ”ことに注力することにしましょう。
勝つ為に何が出来るか?
どうすれば勝てるか?
考えます。
ふと、思い付いた事が有ります。
半年ほど道場に通って習った合気道。
あの動きを取り入れます。
練習に打ち込みました。
相変わらず先輩方には勝てませんが、負けない様になりました。
負けない様になった事が嬉しくて、『どうすれば負けなくなるのか?』を、考える様になりました。
”勝つ”ことを考えていたはずなのに…。
どうしてこうなった。
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13歳になりました。
相変わらず、先輩方には勝てません。
ですが、先輩方も私に勝てません。
いつの間にか『『不敗』のユリ』と呼ばれる様になりました。
凄く恥ずかしいです。
先輩方の精神攻撃です。
ちくせう。
先輩方も、私の体の動きを取り入れる様になりました。
先輩方の動きが、以前よりも滑らかになりました。
そんな中で、一部の先輩方が新たな体術を生み出しました。
体の動きを、小さく滑らかに制御し、服が乱れない様に”揺れ”を最小限に抑える。
その名は【巨乳術】。
「………………。」
よろしい。ならば戦争だ。
一部の先輩方の精神攻撃に、惨敗しました。
ちくせう。
もげろぉぉぉぉ。
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あの先輩方には、どんな戦い方をしても勝てません。
化物ですから。
ですので、他のモノで勝つ事にしましょう。
勉強にも打ち込む事にしました。
メイドの寮の図書室に有る、有りと有らゆる本を読み、知識を蓄えます。
『畜産』とか『人心掌握術』とか、メイドと関係無さそうな本も色々と有りましたが、すべて読むつもりでモリモリ読みます。
トサッ
「…リリス。刺繍の本を積むのは、止めてください。」
「見ないでも分かるんだねー。」
「その本は、読む気が無いから持って来なかったんです。」
「もうすぐ私の誕生日です。ハンカチが欲しいなぁ。」
「知ったことではありません。邪魔をすると、誕生日よりも先に命日が来ますよ。」
「キャーー、コワーーイ。」
そう言ったリリスは、笑顔でのんびりと歩いて去って行きました。
言葉と行動が、まるで合っていません。
呆れます。
溜息を吐きながら、私は一番上の本を読み始めました。
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リリスが、誕生日のプレゼントを自慢して回っています。
子供ですか。
見てて恥ずかしいから、凄く止めてほしいです。
「ユリに貰ったのーー。(歓喜)」
よろしい。そのハンカチが一番最初に吸うのは貴様の血だ。
引き分けでした。
ちくせう。
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私は今、スカートを作っています。
刺繍をしていた時に、思い付いた事が有るからです。
”刺繍”と”スカート”の繋がりについては、恥ずかしいから誰にも言う気は有りません。
スカートが出来上がりました。
履いてみて、長さを確認します。
バッチリです。
このスカートを履いて、リリスに勝負を挑みます。
つま先まで隠れる長さのスカート。
効果はバツグンです。
フェイントが面白い様に決まります。
リリスに勝ちました。
リリスは今、いつもより身長一つ分高い天井を見ている事でしょう。
ふふふ。
『不敗』と呼ばれたこの私ですが、これからは『常勝』と呼ばれる事になるでしょう。
ふふふふふふ。
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私は今、いつもより身長一つ分高い天井を見ています。
先輩方は今日も化物です。
昨日。
私は、つま先まで隠れる長さのスカートを履いて、リリスに勝ちました。フェイントを駆使して。
これからは『常勝』と呼ばれる事になると思いました。
甘かったです。
今日の先輩方は、皆、つま先まで隠れる長さのスカートを履いていました。
いい様にやられました。
今日の私は、『常勝』でも『不敗』でもありませんでした。
先輩方は化物です。
ちくせう。
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私は、再び知識の蓄積に努めます。
思い付きで小細工を弄したら、先輩方の化物度を上げただけでした。
ちくせう。
メイドの寮の図書室に有った全ての本を、読み切ってしまいました。
新たな発見が有るかもしれないと思って、もう一度すべての本を読み返しました。
新たな発見は有りませんでした。
他に本はないのでしょうか?
王宮(王族の居室や政務を行う部屋が在る建物)にも図書室が在るのだそうです。
早速、向かいます。
図書室を探していると、メイドさんに声を掛けられました。
初めてお会いする方だと思います。
正直に、「図書室に本を読みに行く。」と言いました。
メイドさんは少し考えた後、「メイド長に相談しましょう。」と言って、メイド長の居る部屋まで案内してくれました。
メイド長に、「図書室に本を読みに行きたい。」と言いました。
「あなた、以前、王子様のを蹴り上げた子よね?」
メイド長にそんな事を言われました。
ああ、そんな事も有りましたね。
偉い人に凄く怒られて、『そんなに大事なら、大切に仕舞っておけ!』とか言って、先輩方に大ウケしましたね。
今更、隠す様な事では無いので、正直に答えます。
「はい、そうです。」
「もう、蹴り上げてはいけませんよ。」
「はい。」
許可が出ました。
………。
『いいのかな?』と、少しだけ思いましたが、許可が出たのでいいのでしょう。うん。
お礼を言って、退室します。
戻ります。
図書室の場所を訊きます。
もう一度お礼を言って、メイド長の部屋を後にしました。
( 注 )
『王宮』という言葉について、以下の二通りの意味で使われています。
・王族の住む部屋や玉座の間が在り、政務が行なわれている建物。
・上記の建物を含む、外壁で囲まれている敷地の内側のすべて。
メイドさんたちは、自分が居る場所でどちらの『王宮』なのか察するので、特に問題は無いのです。
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図書室に入ります。
天井にまで届く本棚がいっぱい在ります。
本がぎっしりと詰まっています。
端からすべて読むことにしました。
夢中になって本を読んでいたら、お腹が空きました。
どのくらいの時間、本を読んでいたのでしょうか?
こういう時、時計が無い事を不便に思います。
『今日はここまでにしよう。』と思い、本を片付ける事にします。
無駄にデカくて重い本です。
表紙と裏表紙を引き剥がせば、それだけでも大分軽くなると思います。
…ちょっとだけ、したくなりましたが、止めました。
出入り禁止になっては、困りますので。
重い本を片付け、図書室を後にしました。
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午前中は、格闘術の訓練。
午後は、王宮の図書室で読書をすることにしました。
昼食後、王宮の図書室に向かいます。
格闘術の訓練では、先輩方に負けてばかりです。
あのスカートは大失敗だったと、痛感しています。
何か対策を考えなければいけませんね。
焦ります。
図書室に着きました。
入ります。
今日は他に人が居ますね。
迷惑にならない様に気を付けましょう。
重い本を、持てるだけ持って席に座り、読み耽ります。
お腹が空きました。
もう、いい時間の様ですね。
重い本を片付け、図書室を後にしました。
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今日も、図書室で本を読んでいました。
メイドさんに、お茶に誘われました。
メイドさんの後に付いて行きます。
『お菓子も有るわよ。』と言われたからです。
ここは王宮です。
王宮で出されるお菓子に、少しだけ興味が湧いたのだから、仕方がありません。
あくまでも、『知識として』です。
そもそも知識を得る為に、この王宮の図書室に来ているのです。
寄り道ではありませんし、サボっている訳でもありません。
うん。納得できる理由です。(笑顔)
王宮のメイドさんたちと他愛のないお話をしながら、お菓子をいただきました。
お菓子は、期待していたほど美味しくはありませんでした。
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午前中の格闘術の訓練と昼食を終えた私は、寮の調理場に来ています。
ふと、プリンが食べたくなったからです。
材料は、卵と牛乳と砂糖だったと記憶しています。
材料を用意して混ぜました。
どの様に”ぷりんぷりん”にするのか、分かりませんでした。
考えます。
考えます。
プリンを諦めました。
小麦粉をぶち込み、混ぜて、薄く焼きました。
クレープとホットケーキの中間の様な物が出来上がりました。
ジャムを塗って食べました。
まだ余っています。
うーん。
ジャムを塗って重ねて、さらにジャムを塗って重ねて、ケーキの様に六等分に切り分けました。
『ここに置いておけば、誰か食べるだろう。』と思っていたら、甘い匂いに誘われたのか、リリスが来ました。
テーブルの脇にしゃがんで、『あーーん。』をしています。
切り分けるのに使った得物を構えます。
リリスは距離を取りました。
「それは何?」
私が作った物を指差してリリスが訊いてきます。
ですが、それは『あーーん。』をする前に訊くべき事ではないでしょうか?
作っていた物が石鹸だったら、どうするのでしょう?(悪い笑顔)
リリスに言います。
「お菓子を作ろうとしてこうなった。」
「ほう。」
リリスが怪しい笑顔を浮かべます。
「面白そうだから上司に食べさせよう。」
残念な人が残念な事を言っています。
残念な人を放置して、王宮の図書室に向かいました。
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図書室で本を読んでいると、またメイドさんにお茶に誘われました。
『昨日のお菓子だけ美味しくなかったのだろう。』と思い、少し期待して付いて行きます。
今日のお菓子も、期待していたほど美味しくはありませんでした。
ぬう。
夕食後に上司に呼ばれました。
「お菓子が美味しかったから、気が向いたら、また作って。」
そう言われました。
適当に作った物なので、「美味しかった。」と言われても、嬉しくはありません。
「美味しい物が出来たら持ってくる。」
そう言って、退室しました。
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午前中の格闘術の訓練と昼食を終えた私は、今日も寮の調理場に来ています。
プリンに再挑戦する為です。
昨夜考えて、『蒸せば良いのではないか?』と、思い付いたからです。
蒸し器を探します。
有りませんでした。
ぬう。
代わりになりそうな物を探します。
『鍋でお湯を沸かす → ザルを置く → プリンを置く → 鍋を被せる』
ふむ。
いけそうな気がしますが、ザルが焦げるかもしれません。
大きい鍋の内側に、ザルがすっぽり入れば、焦げないでしょうか?
ザルを高い位置に固定する方法が必要ですね。
金属製の筒でも有れば良いのですが、そう都合の良い物は有りませんでした。
今日は諦めましょう。
王宮の図書室に向かいました。
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王宮の図書室で本を読んでいると、またメイドさんにお茶に誘われました。
お菓子に少しだけ期待して付いて行きます。
三連敗でした。
ぬう。
夕食後、上司のところに行って、「蒸し器が欲しい。」と言いました。
”蒸し器”で伝わらなかったので、絵を描いて、どの様に使う物か説明しました。
用意してもらえる事になりました。
よしっ。
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王宮のお菓子の連敗記録が私の年齢を超えた頃に、蒸し器が届きました。
プリンを作ります。
蒸す時間は当てずっぽうでしたが、意外と上手くいきました。
蒸したプリンを冷ましていたら、甘い匂いに誘われたのか、リリスがやって来ました。
テーブルの脇にしゃがんで、『あーーん。』をしています。
食べさせます。
感激しています。
「上司のところに持っていく。」と話したら、「上司に食べさせるなんてもったいない!」と、リリスが言い出しました。
蒸し器を買ってもらったので、そういう訳にはいきません。
上司のところに持って行きます。
喜んでもらえました。
ふう。
久しぶりに、満足感を覚えました。
上司に、リリスが言っていた事を忘れずに報告しました。(悪い笑顔)
満足して、王宮の図書室に向かいました。
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王宮の図書室で本を読んでいると、またメイドさんにお茶に誘われました。
お菓子の連敗記録が止まる気配は、ありませんでした。
『この世界のお菓子は不味い。』という結論になりそうな気がしてきました。
夕食後、「プリンの作り方を教えてほしい。」と、調理を担当している先輩がやって来ました。
教えてあげました。
何もせずにプリンが食べられる生活に、期待が膨らみます。
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午前中の格闘術の訓練を終え、昼食を食べます。
昼食にはプリンが付いていました。
大騒ぎになりました。
私は感激しました。
何もせずにプリンを食べられる生活をげっと!しました。
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王宮の図書室で本を読んでいると、またメイドさんにお茶に誘われました。
プリンが出ました。
感激しました!
しかし、何もせずにプリンが食べられる生活に、直ぐに危機が訪れました。
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上司に呼ばれました。
「明日はプリンが食べられません。」と告げられました。
なんでも、寮と王宮とで材料を奪い合うことになってしまったからだそうです。
なるほど、戦争ですね。
違う?
策を考えてある? 完全勝利が可能? 私にしか出来ない役目がある?
ふ。やらせていただきましょう。
我々の完全勝利の為に。
私の役目は、いつものお茶会に参加し続けること?
なるほど、敵情視察ですね。
プリンは出ますかね?
出す様に要請する?
敵方ですよね?
ああ、こちら側の人間が、既に入り込んでいるのですね。
ありがとうございます。
我々の完全勝利の為に、頑張ります。
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今日もお茶会に誘われました。
プリンが美味しかったです。
上司のところへ行き、報告します。
「プリンが美味しかったです。」
「………………。」
…敵情視察でしたね。
「そう言えば、何を観察すればいいんでしょうか?」
『いつものお茶会に参加し続けること。』としか言われていなかった事を、思い出します。
「男の人は居なかった?」
「気が付きませんでした。」
「………………。」
「………………。」
「出来るだけ男の人と会話をしてちょうだい。」
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変な指示か出ましたが、「分かりました。」と言って、退室しました。
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今日もお茶会に誘われました。
プリンが美味しいです。
しかし、プリンに気を取られていてはいけません。
寮の先輩方の為に、プリンを勝ち取らねばならないのです。
『出来るだけ男の人と会話をしてちょうだい。』という、上司の変な指示を思い出します。
男の人を見ます。
見覚えが有る気がします。
昔、蹴り上げた憶えが有るのは、私の気の所為ですよね?
今、私の周りに居るのは、『昔、蹴り上げたかもしれない誰か』と『寮の先輩方より強そうなメイドさんたち』。
普通に考えれば窮地なのですが、私はプリンを作り上げた功労者。
死地に送り込んでいい様な人間ではありません。
うん。状況が分かりません。
こちらから話し掛ける事は出来ませんでしたが、あちらから話し掛けられたので、『会話は出来た。』と言っても良いと思います。
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上司のところに駆け込みました。
「説明してください。」
上司が泣き落としを試みました。
殴り掛からなかったのは、羽交い絞めにされたからです。
殴り掛かろうと思った時には、既に身動きが出来ませんでした。
対応が早過ぎはしませんかね?
王宮勤めには必要なスキルですか。
貴族の方とかを押さえ付けるのに、痛みを与えずに動きを封じる必要が有る。と。
「この人たちは敵側では?」
あ、違いますか。
そう言えば、王宮勤めの方も寮に居ますよね。
当たり前ですよね。寮なんですから。
メイドさん同士が敵対している訳ではなく、プリンが王宮内で消費され過ぎるから、寮の方へ材料が回せないだけ?
ふむふむ。
で、お菓子作りをする場所を一本化したい?
ふむ?
その為に、新しくお菓子作り専用の建物を建てたい?
ふむふむ。
その運営をこちらでやれば、寮の方にもプリンを回せる様になる?
ふーん。
建てればいいんぢゃないでしょうか?
その、お菓子作り専用の建物とやらを。
”それ”と”私に与えらえた役割”とは、どう繋がるのでしょうか?
考えます。
考えます。
「つまり、私があの『昔、蹴り上げたかもしれない誰か』を殺して、埋めて、その上に建物を建てる。と?」
全然違う?
うん。私も自分で言っていて、『おかしいな?』と思いました。
上司から作戦を伝えられます。
私が、あの『昔、蹴り上げたかもしれない誰か』にお願いして、建物を建ててもらう?
意味が分かりません。
そんな事で建物が建ちますかね? 建ちませんよね。
「そもそも、私である理由も無いですよね?」
そんな事はない?
私がお願いした方が、早く建物が建つ?
………………。
「つまり、脅迫ですね。」
…なんですか? その『もう、それでいいや。』みたいな顔は。
「ともかく、私がお願いすればいいんですか?」
おねだりする感じで?
「はぁ、分かりました。やります。」
おねが…、いえ、おねだりするんだそーです。
<>
翌日。
今日もお茶会に参加してます。
プリンが美味しいです。
私は、自分に与えられた使命を果たします。
『お菓子作り専用の建物を建ててほしい。』という話をしました。
「私に任せてくれ。」
男の人はそう言ってくれました。
「よろしくお願いいたします。」
そう言って、頭を下げます。
私は、心の中で首を傾げます。
こんな事で良いのでしょうか?
翌々日には、地面を掘り返す作業が始まっていました。
<>
いつも通りの生活を送っています。
つまり、午前中は格闘術の訓練。午後は王宮の図書室で読書。
そして、お茶会に誘われれば、それに参加する。
そんな生活です。
今までと少し違うのは、寮の近くの空いていた場所に、建物が建てられている事です。
この建物。もの凄い勢いで建てられています。
本当に、もの凄い勢いなので不思議に思っていたのですが、魔術師の方々も建設に参加していました。
ゴーレムを重い物を運ぶのに使っているのです。
また、柱を立てたり、梁を渡したりするのにも活躍している様です。
お菓子を作る為の建物に、ここまでするなんて、皆お菓子が好きなのですね。
その割には王宮で食べたお菓子は、不味かったのですが。
お菓子好きの人が多ければ、お菓子の味は良くなっていくものだと思うのですが…。
少し不思議です。
<>
昼食後、上司に「何か新しいお菓子を作って。」と、言われました。
「はぁ、分かりました。何か作りましょう。」
そう言って、私は寮の調理場に向かいました。
何を作るか考えます。
以前、上司には、プリンを作ろうとして方針転換をした、クレープとホットケーキの中間の様な物を食べさせましたね。
あれにあんこを乗せれば、”どら焼きっぽい何か”になるのではないでしょうか?
ちょっと、やってみましょう。
先ず、豆が有るか探します。
2種類の豆が有りました。
一つは大豆っぽいですね。時々スープに入っています。
もう一つ、緑色の小さく丸い豆が有りました。
こちらは食べた事が有ったでしょうか?
味を思い出せません。
どちらかと言えば、大豆っぽいやつの方が、あんこになりそうです。
こいつを茹でて、潰して、砂糖を混ぜれば、白あんっぽくなるでしょう。
早速、取り掛かります。
豆を茹でている間に、例のクレープとホットケーキの中間の様な物を焼きます。
茹で上がった豆を潰し、砂糖を混ぜて、クレープとホットケーキの中間の様な物に塗り、もう一枚重ねて六等分に切ります。
食べます。
微妙でした。
他の豆でも試してみたいですね。
上司にこれを食べさせて、「他の豆も試したい。」と言って、豆を買ってもらいましょう。
甘い匂いに誘われてやって来たリリスの口に一切れ放り込み、上司の元に向かいます。
「有った物で作りました。微妙な味です。」
そう断ってから、食べさせます。
「他の豆も試したいので、色々な豆を買って下さい。」
豆を買ってもらえる事になりました。
退室して、今日も王宮の図書室に向かいました。
<>
図書室の前でお茶に誘われました。
もちろん付いて行きます。
プリンが食べたいからです。
いつものテーブルには、あの男の人も居ました。
彼にお礼を言います。
「凄い勢いで建物が建てられていて驚きました。」
男の人は嬉しそうです。
男の人は上機嫌で、色々な話をしてくれました。
お茶会は夕暮れ近くまで続きました。
本を読む時間はありませんでした。
ちくせう。
<>
建設中の建物がまた大きくなっていました。
日に日に大きくなるというのは、凄い事なのではないでしょうか?
昼食後、寮の調理場に来ました。
10種類の豆が届いていました。
その中に、小豆っぽい豆が有りました。
希望が持てます。
今日は、この小豆っぽいのと、他の豆を一つ茹でてみましょう。
昨日と同じ手順で作ります。
出来ました。
小豆っぽいのは、小豆っぽい味でした。
やったね。
もう一つの豆も、まあまあの味です。
茹で方や味付けを工夫すれば、もっと美味しくなるかもしれません。
昨日と同様に、クレープとホットケーキの中間の様な物に塗り、もう一枚重ねて六等分に切り、リリスの口に一切れ放り込み、上司の元に向かいます。
「昨日のより、かなりマシです。」
そう言って食べさせます。
上司も満足してくれている様です。
やったね。
「作り方を紙に書いてちょうだい。」
そう言われたので紙に書きます。
豆の名前を知りませんでした。
豆の名前を上司に教えてもらい、豆の茹で方と味付けの改善案なんかも書いて渡しました。
「王子様とは会話が弾んでいる様ですね。」
上司にそう言われました。
「………王子様?」
上司が固まります。
生きているのか不安になったのですが、羽交い絞めにされたので確認のしようが有りません。
相変わらず対応が早いですね、ここのメイドさんたちは。
「お茶会に男の人が居るわよね?」
固まっていた上司に、そう訊かれました。
「はい、居ますね。」
「その方に、建物を建てるのをおねだりしたのよね?」
「はい、お願いしましたね。」
「その方が、王子様です。」
「へぇー。」
上司は机に突っ伏してしまいました。
生きているのか不安になったのですが、私は羽交い絞めにされたままです。
上司の頭のてっぺんを見ながら、ふと、思い付いた事を訊きます。
「建物の建設が始まったのですから、もう任務は終了ですよね?」
「まだおねだりする物が有るから続ける様に。」と、言われました。
ああ、建物だけではお菓子を作れないですしね。
まだ、完全勝利とは言えないですね。
「では、今日もお茶会に行ってきますね。」
そう言って退室し、王宮へ向かいました。
<>
建物の高さが、かなりのものになった頃。
王宮の図書室で本を読んでいた私のところに、上司からの使いの方が来ました。
『用が有るので来てほしい。』とのことでした。
重い本を片付けるのを手伝ってもらい、上司のところへ向かいます。
途中、建設中の建物の前を通ります。
作業員の方々が、横になって休憩しています。
のどかな昼下がりの様です。
あちらこちらで魔術師の方々とゴーレムが倒れています。
まるで戦場の様です。
いやいやいやいや、大変です!
倒れている魔術師の一人に駆け寄ります。
気絶している様です。
寮に人を呼びに行きます。
この時間ですと訓練場に居るでしょう。そこへ向かいます。
リリスが居ました。
建設現場の惨状を伝えます。
リリスは顔を”にまにま”させると、周りの先輩方に声を掛け、全員を連れて建設現場に向かいます。
気絶している魔術師の方々が、寮の一室に運び込まれました。
リリスに、「上司に呼ばれてるんじゃないの?」と言われました。
そうでした。
リリスに後を任せ、上司のところに向かいます。
上司に、「王子様にお渡ししてね。」と、手紙を手渡されました。
「………私のところに呼びに来た方に、届けさせれば良かったのではないですか?」
私が渡す事に意味が有る?
はぁ、そうですか。
「最近、そんな事が多いですね。(ニッコリ)」
「ええ、そうね。(ニッコリ)」
諦めて王宮に向かいます。
負けた様な気がしたのは、私の気の所為です。
そう言えば、なぜリリスは、私が上司に呼ばれていた事を知っていたのでしょう。
変な笑顔も気になります。
リリスが変なのは、いつもの事ですね。
<>
手紙を手に、いつもお茶会をしているところに向かいます。
お茶会は準備中でしたが、既に王子様は来ていました。
王子様、暇なんですかね?
上司からの手紙をお渡しします。
読まれています。
王子様に、とても感謝されました。
手紙をお渡ししただけなのに大袈裟ですね。
呆れる私のことなど気にせずに、王子様は、バタバタと走り去って行きました。
その後を、護衛のメイドさんが二人、追い掛けて行きます。
スカートを軽く摘み、まったく音を立てずに走って行きます。
すげぇ。
王子様たちを見送った後で、お茶会になりました。
今日もプリンが美味しいです。
<>
翌日。
お茶会の席で、王子様に改めてお礼を言われました。
手紙をお渡ししたお礼は、既に言われましたよね?
「ポーションを増産する事にしたので、魔術師が倒れる様な事は、もう無いだろう。」と、王子様が言います。
護衛のメイドさんの表情が少し固まった気がしましたが、私の気の所為でしょう。
先ほどのお礼は、倒れていた魔術師の方々への対処の件だった様です。
なんでも、メイドの寮は男性の立ち入りが厳禁なのだそうで、そこに運び込まれたのは前代未聞の出来事だったそうです。
「でも、目の前で倒れていたら、そうしますよね?」
当たり前の事を言ったら、王子様は感激したっぽい表情になりました。
大袈裟ですね、王子様は。
呆れてしまいましたが、プリンが美味しかったので、どうでもいいです。
<>
ある日の昼食時。
隣に座るリリスが話し掛けてきます。
『魔術師団を壊滅させた魔性の女』なんて言葉が耳に入りました。
ふと、最近の建設現場の様子を思い浮かべます。
あれ以来、魔術師の方々が倒れる様な事は無かったはずです。
そう思い、「”壊滅”なんて表現はおかしいでしょ。」と言います。
なんでも、ポーションを製作する部署では、バタバタと人が倒れているんだそうです。
何処からそんな情報を仕入れてくるのやら。
先日の一件で、魔術師の一人と仲良くなった先輩が居るんだそうです。
ああ、あの時のリリスの”にまにま”顔は、そういう事だったのですね。
昼食後、王宮の図書室に向かいます。
そう言えば、先ほどの”魔性の女”とは、何の事だったのでしょう?
<>
ある日の朝食後、上司に呼ばれました。
上司が私に言います。
「王宮で働きたくない?」
私が何か言う前に、さらに続けます。
「王宮のメイドさんたちの訓練の見学が出来るわよ。」
ほう。
寮の先輩方よりも強そうな、王宮のメイドさんたちの訓練の見学ですか…。
私が強くなる為のヒントが有るかもしれませんね。
なかなか良いですね。
うん。なかなか良いですね。
「なかなか良いですね。」
気付いたら、そう言っていました。
すぐに王宮のメイド長のところへ、連行されました。
連行でした。
怒涛の展開で、歩いた記憶が有りません。
床に足が着いていた記憶すら無いのは、私の気の所為ですよね。
「午前中は訓練。午後は勉強や読書とお茶会が仕事です。よろしくね。先ずは、訓練の見学をしてちょうだい。」
怒涛の展開に流されながら、メイド長がそう言うのを聞きました。
そして再び、怒涛の展開で訓練場に連行されました。
やはり歩いた記憶も、床に足が着いていた記憶も有りません。
ここまでの展開に頭が付いていけずに、フラフラします。
目の前で訓練をしている、王宮のメイドさんたちを見ます。
組手をしています。
…組手ですよね?
手が見えませんが、”がががどがっがががっが”と音がしているので、組手だと思います。
うん。私の知っている組手と違う。(呆然)
別の方を見ます。
棒を使って打ち合っているのでしょうか?
互いの間合いが遠いので、そうだと思います。
棒らしきものは見えませんが、”ガガッツガゴガガゴゴガキッゴガギ”と音がしているので以下略です。
隣に居る案内役の王宮のメイドさんを見ます。
ニッコリ
目の前のこの光景は、ここでの日常なのでしょう。
寮の先輩方と違って、王宮のメイドさんたちには、挑もうという気にすらなりません。
今まで、多くの人を蹴り上げたりしてきました。
人とか、自称神様とか、王子様とか。
普通でないモノが、かなり混ざっていますが、それは置いといて。
王宮のメイドさんたちの訓練の様子を見て、『自分はただの暴れん坊だったのではないか?』と、そう思いました。
( 注 )
ここで言われている『王宮のメイドさん』の『王宮』は、『王族の住む部屋や玉座の間が在り、政務が行なわれている建物』の方です。
寮で訓練をしているユリや、寮の先輩方は、二軍的なメイドさんたちです。
ユリも、寮の先輩方も、王宮の敷地の外から見れば、『王宮のメイドさん』になってしまいますが…。
分かり難くてすいません。
<>
トボトボ王宮内を歩いています。
職場である王宮で迷子にならない様に、道を憶える為です。
メイドさんが騎士に絡まれていました。
膝下までのスカートを履いています。
戦闘訓練を受けていない”普通のメイドさん”の様です。
戦闘訓練を受けている”普通でない方のメイドさん”は、つま先まで隠れる長いスカートを履いていますから。
騎士にムカついたので、ぶちのめしました。
ええ、ただの八つ当りです。
ぶちのめした奴をその場に放置して、トボトボ歩き続けます。
なるべく早く、道を憶えたいのです。
後ろで礼を言う声と、「憂いのある瞳が…。」とか、「すてき。」とか聞こえて来ますが、耳を素通りしていきます。
<>
王宮内を一通り歩いたと思います。
大勢ぶちのめしました。
騎士とか、貴族のボンボンっぽいのとか。
一緒に付いて来てくれていた案内役の王宮のメイドさんに訊きます。
「この王宮はどうなっているんですか?」
「構造ですか? ゴミですか? 陛下のズラの事ですか?」
唐突にぶち込まれた最後のヤツも気になりますが、それは置いておきます。
「ゴミの方。」
「普段は取り押さえるか、取り押さえるどさくさに、イイヤツをぶち込むかしてます。」
「甘やかし過ぎだったのでは?」
「ボンボンはもちろん、騎士も貴族と繋がったりしていて、面倒な事になりますので。」
『そうかー、めんどうなのかー。』
まぁ、ぶちのめすことしかしませんが。めんどくさいし。
いい時間になったので、昼食に行くことにしました。
<>
昼食を摂っています。
案内役の王宮のメイドさんに、気になった事を訊きます。
「ヅラについて詳しく。」
「ぜひ一度、直接見ていただきたいです。見たら笑います。」
ほうほう。
「今、誰が一番最初に、陛下の前で噴き出すのか、賭けをしています。」
「ユリがそうなったら、なかなかイイ倍率になりますよ。来たばかりですから。」
「あなたは、誰に賭けているのですか?」
「私は賭けていません。親の総取りになると睨んでいます。」
ほう。
「例えば、リリスが陛下に「ズラがズレてますよ。」とか言って、全員が噴き出すとか。」
「ぶふっ」
リリスならやりそうだ。
ぜひ見たい。
玉座の間に、リリスを放り込む方法を考えよう。(黒い笑顔)
<>
昼食後、図書室で本を読んでいます。
朝から私に付いてくれている、案内役の王宮のメイドさんも一緒です。
「ここに居ても暇じゃないですか?」と、訊きます。
「きっと、ここが一番楽しいです。(ニッコリ)」
良く分からない返事が返って来ました。
「期待されても、図書室では暴れませんよ。」
そう言ったのですが、私がそう思っていた時間は、短かったです。
<>
「ここに居たかー! この無礼者めー!!」
図書室にやって来て大声を出す馬鹿が、現れました。
読んでいた本から顔を上げて、馬鹿を見ます。
あ、騎士だ。王宮でたくさんぶちのめした事がある♪
「………ふぅ。」
溜息が出ました。
ぶちのめしました。
全員。
30人くらい居ましたかね?
出入口が塞がりそうです。
凄く邪魔です。
「ゴミが邪魔だから、人を呼んで来ますね♪」
私に付いてくれている案内役の王宮のメイドさんが、”山”を乗り越えて行きます。
わざわざ一番高いところを登らなくても、いいと思います。
まぁ、自分でもそうしますから、何も言いませんが。
<>
人が大勢来て、片付けてくれました。
王子様も来てますね。暇なんですね、この人。
「ご無事でしたかっ?」
「はい? なんともないですが?」
『弱かったから。』とは、言わない方が良いでしょうね。
アレでも騎士だったし。
「迷惑を掛けて申し訳なかった。」
王子様が、ただのメイドに頭を下げました。
『八つ当たり出来てちょうど良かったです。(すっきりした笑顔)』とは、言えない雰囲気ですね。
「…オキニナサラナイデクダサイ。」
私は、そう言いました。
<>
騎士団で、大粛清が行われたんだそうです。
図書室で読書中の若いメイドに対して、大勢で押し掛けたんだそうです。
へぇー。
日頃の行いの悪かった者たちを一斉に解雇し、騎士の数が半分以下になってしまったそうです。
ふーん。
そう、私に教えてくれたリリスは、笑い過ぎて、息も絶え絶えになっています。
「騎士団を…、か、壊滅させた女…。ブフフフフ…。」
「魔術師団に続いて…、くくく…、騎士団も。あはははーー。」
リリスがおかしいです。
リリスがおかしいのは、いつもの事ですね。(笑顔)
<>
あの建物が完成しました。
素晴らしい建物です。
『お菓子作り専用の建物を建ててほしい。』と、そう王子様にお願いした記憶が有ります。
お菓子を作る為に作られた建物にしては、巨大過ぎると思うんですがっ!
私を唆した上司は、この巨大過ぎる建物を見ても、特に驚いていない様子です。
おかしいですよねっ。
この巨大過ぎる建物。
調理場の他に、倉庫、研究室、試食室、大試食室、保管室、資料室、調理道具試作室が在り、上の階には寮も在るんだそうです。
寮は、お菓子作りの為の人員を増やす為に、必要なのだそうです。
この巨大過ぎる建物を見ると、建てていた時に魔術師の方々がぶっ倒れたのも頷けます。
さて。
私は隣にいらっしゃる王子様に、何て言ったら良いのでしょうか?
難問です。
難問過ぎて、体が震えます。
「す、素晴らしい建物デス。…カンゲキデス。」
私は、何とかそう言いました。
王子様も、この建物の完成をとても喜んでくれました。
<>
上司に呼ばれました。
上司の部屋に来てから気が付いたのですが、王宮勤めになったので、私の上司はメイド長のはずですよね。
我々の完全勝利の為に、まだ、やる事が有るんだそうです。
そうですよね。
まだ、建物が完成しただけでした。
我々の完全勝利の為に、私の使命を果たしましょう。
「やりましょう。で、何を?」
畑が欲しい?
小麦と豆を作る?
ああ、あの小豆っぽいやつですね。
ふむふむ。
果樹園も?
プリンに果物が乗っているのを想像しなさい?
なるほど。
いいですね。(笑顔)
「それらを王子様にお願いするのですか?」
おねだりですか?
「あの巨大過ぎる建物を建てたばかりで、予算とかの問題が生じるのではないですか?」
騎士が沢山解雇されたから大丈夫? 今が好機? 予算を奪い合っている? 今しかない?
やたらと力説しますね。
仕方がありませんね。
お菓子の原料を作る為の畑と果樹園が欲しいと、おねだりをするんだそーです。
<>
お茶会で、王子様に「お菓子の原料を作る畑と果樹園が欲しい。」と、おねだりっぽいことを言いました。
「そういう話になるのではないかと思って、良さそうな土地を探させておいた。すぐに取り掛かろう。」
そう言ってもらえました。
「よろしくお願いいたします。」
そう言って、私は頭を下げました。
翌朝。
沢山のゴーレムが何処かに歩いて行きました。
リリスが、「ポーションの製作がー」とか、「魔術師団がまた壊滅だー」とか、なにやら不穏な事を言っています。
私の耳には、ナニモキコエマセンデシタ。
<>
メイド長に会っています。
前の上司に頼まれた事が有るからです。
『午前中の訓練の時間を、お菓子作りの研究に充ててもらえないかしら?』と、お願いされたのです。
私は、王宮に異動になってから、あまり格闘術の訓練をしていません。
心が折r…、いえいえ、何となくです。そう、ナントナク。
気分転換に、楽しくお菓子作りをするのもイイカモシレマセンネ。
「美味しいお菓子を期待しています。(ニッコリ)」
メイド長から、あっさりと許可が出ました。
許可が出たと言うよりも、『美味しいお菓子が出来たら持って来てね♪』と、言われた気がしますが。
王宮の建物を出て、”でっかい建物”に向かいます。
そこの研究室を使わせてもらえる事になっています。
歩きながら、何を作るか考えます。
だんごが頭に浮かびます。
『だんご → 大福! → いちご大福!!』
そんな考えが頭の中に浮かびました。
いいですよね、いちご大福。
よし、今度はだんごを作る事にしましょう。
材料を考えます。
米でしょうか? もち米でしょうか?
…この世界に有りますかね?
一応、倉庫に行きますが、まだ、ほとんど物が有りません。
仕入れ担当の方に相談しようかと思いましたが、”米”をどう説明すれば良いのか分かりません。
どうしましょうか?
自分で市場に行くしかないですよね。
いや、だんごは今回見送って他の物に…。
いやいや、一度だんごを頭に思い浮かべてしまったので、他の物を考えるのは難しいですね。
よし、市場に行きましょう。
早速、外出許可をもらいましょう。
前の上司に相談しました。
外出許可は出ましたが、「明日にしなさい。」と、言われました。
「お茶会があるでしょ。いきなり欠席はよくありません。王子様がいらっしゃるのですよ。」
「王子様より、だんごの方が大事です。(キッパリ)」
「………………。」
「………………。」
「お茶会は最優先です。」
私は、首を傾げます。
最優先?
そんなに大事ですかね? あのお茶会。
「お茶会は最優先です。」
もう一度言われました。
大事なことなのですね。
ぬう。
仕方がありません。外出は明日です。
「分かりました。外出は明日にします。」
退室して、でっかい建物に戻りました。
<>
でっかい建物の倉庫に向かいます。
何が有るのか確認します。
まだ食べた事の無い豆が、いくつか有りました。
茹でたり、蒸したりして、味を確認しましょう。
茹でたり、蒸したりしました。
砂糖を煮詰めて水あめっぽいのを作り、蒸した豆を絡ませました。
漠然と甘い豆のお菓子が出来るかと期待していましたが、微妙な物が出来ました。
ぬう。
いくつかリリスの口に放り込み、前の上司のところへ持って行きます。
「微妙な物が出来ました。」
さっさと退室して、昼食を食べに行きました。
<>
お茶会です。
「明日は、市場に行くので参加出来ません。」と、告げます。
「私が案内しよう。」
王子様がそう言います。
護衛のメイドさんの表情が微妙に固まるのを感じました。
私、「市場に行く。」って言いましたよね?
王子様が案内出来る様な場所ではないですよね?
王子様、どれだけ暇なんですか?
そんな考えが頭に浮かびます。
この暇な王子様に、何と言ったら良いのでしょうか?
「明日は畑の視察をお願いいたします。」
護衛のメイドさんが、そう言います。
助かります。
ありがとうございます。
「いや、私が案内しよう。」
「………………。」
空気を読もうか、王子様。
私が、なんとかしなければっ。
「私、畑の方も気になります。王子様には畑の視察をお願いしたいですぅ。」
自分でも信じられない声が出ました。
「私、早く仲間たちに、美味しいお菓子を作って上げたいんですぅ。」
死にたくなる様な声が出ました。
「そうか、あなたは仲間想いなのだなっ。」
「分かった。私は、明日は畑の視察に行こう。」
「よろしくお願いいたしますぅ。」
「うむ、一日でも早く、畑と果樹園を完成させる様に指示して来よう。」
護衛のメイドさんの表情が固まるのを感じました。
「では、明日の仕事も片付けていただかなければなりませんね。(ぴくぴく)」
「うむ。」
「すまないが、今日はこれで失礼する。」
やる気を出している王子様が、去って行きました。
私は、凄く心にダメージを負いました。
プリンを一つ多くもらえました。
<>
今日は市場に行きます。
道案内役にリリスが付いて来てくれています。
門のところで、二人のメイドさんが待っていました。
いつも、前の上司の護衛に付いていて、羽交い絞めにしてくれる方たちです。
「「付いて行きます。」」
「護衛はいいの?」
「「ユリに付いていれば一緒です。」」
つまり、私を羽交い絞めにする事以外に、護衛の仕事が無いということなのでしょう。
「「仕事もいつもと一緒です。」」
つまり、私を羽交い絞めにする事が仕事ということなのでしょう。
ほう。
「「王都の平和は、私たちが守ります。」」
「二人は、私の事を何だと思っているのかな?」
「「ユリです。」」
なんとなく、心に突き刺さる返事が返って来ました。
ぐう。
気分が”もやっ”としますが、まぁいいでしょう。
そもそも、私には、この方たちを、どうする事も出来ませんし。
ちくせう。
<>
馬車に乗って市場に向かいます。
馬車の中で二人に訊きます。
「私を羽交い絞めにする時、対応が早過ぎる気がするんですけど。」
「訓練の賜物です。」
「そもそも、暴れる前に押さえ付けないと、意味が有りませんから。」
「何でいつも、何かしようとしているのが分かるんですか?」
「訓練の賜物です。」
「相手が何を考えているのかを、考えているからですね。」
「あの拘束から抜け出す方法って、有るんですか?」
「有るよ。だけど、お勧めはしないよ。」
「なんで、お勧めしないの?」
「痛くするから。」
「?」
「いつも痛くないのは、痛くない様にしているから。」
「それは痛くする方法を知っているから。だから痛くしない方法も分かる。」
「抜け出されそうになったら、痛くする。」
「だから、お勧めはしない。」
「前に、リリスが『ぎゃー。』って言った。」
「前は、リリスが一番の問題児だった。」
「リリス以上の逸材が、存在するなんて。」
「「世界の不思議。」」
「ぐう。」
<>
市場を見て回ります。
米っぽい物を探したり、お菓子を探したり、お菓子の材料になりそうな物を探したりします。
米っぽい物は有りませんでしたが、米を挽いたっぽい粉が有りました。
それを購入し、配達をお願いします。
そう言えば、あの”でっかい建物”は何と言ったらいいのでしょう?
リリスたちに訊きますが、「正式な名称は無いのでは?」とのこと。
お菓子作りの為の建物ですが、建物が巨大過ぎて目的と実態が乖離し過ぎているので、”お菓子作りの為の建物”と言うと、却って分からなくなりそうです。
”王宮内のメイドの寮の近くのでっかい建物”に、配達をお願いしました。
<>
歩き回って疲れたので、市場の近くの喫茶店に入りました。
お茶とお菓子を注文します。
お菓子の勉強の為です。
納得出来る理由ですね。うん。
出されたお菓子を食べます。
微妙な味です。
ぬう。
食材が集まる市場の近くには、美味しい食べ物が有るのものだと思っていたので、少し意外でした。
甘味が足りない気がしました。
ある可能性に気が付き、リリスでない方のメイドさんたちに訊きます。
「もしかして、砂糖って凄く高かったりします?」
「高いですね。」
私、今まで沢山使ってきましたよ。
悪い事をしてしまいましたね。
反省しなければなりません。
<>
砂糖の値段が高い理由を訊きます。
南隣の国からの輸入品だからだそうです。
砂糖は南の方でしか生産されていないそうです。
砂糖の生産を、この国でも出来る様にしないといけないのでしょうね。
そう思いましたが、この国で砂糖を生産して、砂糖の値段が安くなってしまうのは困るんだそうです。
砂糖が安くなって、甘いお菓子が沢山食べられる様になるのは、良い事ですよね?
意味が分かりません。
説明してくれました。
この国は、北に森が有り、魔物が居て、さらにダンジョンも有るとのことで、魔石や魔道具を輸出しているんだそうです。
一方、南隣の国は、森は在りますが魔物は少ないそうで、魔石や魔道具を輸入しているんだそうです。
その輸入の対価として、砂糖などを輸出しているんだそうです。
もし、砂糖の値段が安くなってしまうと、魔石や魔道具を輸入出来なくなり、最悪の場合、北の森やダンジョンを得る為に戦争を仕掛けられる恐れが有るんだそうです。
砂糖が高い事にも、良い面が有ったのですね。驚きました。
高い砂糖を沢山使う事は悪い事なのか訊きます。
使わないで余らせてしまうと、砂糖の値段が安くなってしまうんだそうです。
保管場所にお金が掛かり過ぎる様になってしまうと、安くしてでも手放そうとするんだそうです。
砂糖の値段は、高過ぎても、安過ぎてもダメで、今の値段で安定しているので、今の値段が良いのだろうとのことでした。
図書室の本だけでは得られない知識も有るのですね。
勉強になりました。
<>
今日は、だんごを作ります。
昨日市場で買った、”米を挽いたっぽい粉”を用意し、道具を用意し、段取りを確認します。
焼く方法に問題が有りました。
ここのコンロ。
鍋でお湯を沸かすのには問題は無いのですが、焼くのには向いていない気がします。
魚を焼く”焼き網”みたいな物が有れば良いのでしょうか?
その様な物は無い様です。
後で、調理道具試作室に要望を出しておきましょう。
さて。
焼くのがダメだとなると、茹でましょうか? 蒸しましょうか?
ふと、温泉街などで見る、蒸し饅頭を思い出しました。
蒸し饅頭に方針転換です。
小豆っぽい豆を甘く煮て、潰して、あんこを作ります。
米を挽いたっぽい粉に水を足して、練って、薄く伸ばします。
薄く伸ばした物であんこを包み、蒸し器で蒸しました。
あんこの入ったシュウマイの様な物が出来上がりました。
ぬう。
思っていたのとは違いました。
食べます。
あんこの入ったシュウマイの様な味でした。
…まぁ、いいか。
リリスの口に一つ放り込み、前の上司のところへ持っていきます。
と、思いましたが、メイド長の分も必要でしたね。
数が少々足りません。
改善点などを考えながら、もう一度作ります。
やっぱり、あんこの入ったシュウマイの様な物が出来上がりました。
ぬう。
もう、これでいいや。
リリスの口に一つ放り込み、前の上司のところと、メイド長のところへ持っていきました。
「美味しい。」と、言ってもらえました。
<>
以前、王宮の案内をしてくれたメイドさんに会いました。
挨拶をした後、「ズラの賭けが面白くなってきました。(笑顔)」と、言われました。
なんでも賭けの対象が追加されたとのこと。
追加されたのは、『リリスが何かをして複数の者が噴き出す。』と、『ユリが何かをして複数の者が噴き出す。』の二つ。
親の総取りが無くなりそうだったので、この二つは、6割を親が取り、4割を配当とするんだそうです。
「私に期待されても、何もしませんよ。」
「ええ、分かってます。(ニッコリ)」
分かっているのか、分かっていないのか、良く分からない返事が返ってきました。
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いつもの様に、王宮の図書室で本を読んでいました。
いつもの様に、お茶会に呼ばれました。
いつも、お茶会をしている場所。
そこに、初めて見る男の人が居ました。
王子様が、「父上です。」と言いました。
笑顔で、「こんにちは。」と言われました。
男の人の頭に何か乗っていたので、手に取って調べてみたらヅラでした。
なんだヅラか。
元在った場所に置きました。
ああ、挨拶をしないといけませんね。
スカートを軽く摘み、きちんとした礼をします。
「初めまして陛下。ユリです。」
「「「「ぶふっ!!、あはははははは!!」」」」
なぜか、メイドさんたちに爆笑されました。
あれ? 礼が変だったでしょうか?
よく分からず、戸惑います。
陛下は顔を引き攣らせて、小走りで、何処かに行ってしまいました。
護衛のメイドさんたちが、バタバタと追い掛けます。
王子様と、王子様の護衛のメイドさんたちも、バタバタと追い掛けます。
護衛のメイドさんたちは、いつもは音を立てずに走るのに、どうしたのでしょうか?
お腹でも痛いのか、少し背中を丸くしています。
心配です。
テーブルに目を向けると、メイドさんたちが突っ伏して、肩を震わせています。
テーブルの脇で膝を突いて、肩を震わせているメイドさんも居ます。
「あそこまでして…、普通に挨拶…。くくく…。ありえない…。ぶふふ…。」
「くくく…。さすが…リリス以上の…逸材。くふふふふ…。」
「あははは…、お腹いたい…。くくくく…。」
そんな声が聞こえます。
皆さん、しばらく動かれなかったので、私がお茶を淹れました。
今日もプリンが美味しいです。
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賭けの決着が付いたんだそうです。
ああ、そうですね。
後になって気が付きました。
うっかり、やらかしてしまいました。
ですが、悪いのはヅラです。
私ではありません。
うん。
笑いを堪える日々から解放されたと思えば、腹も立たないのではないでしょうか。
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お茶会で、陛下のことが話題に上がりました。
陛下は、引き篭もっているんだそうです。
陛下の仕事は、王子様が代わりにやっているんだそうです。
だからあれ以来、お茶会に王子様が来ないんですね。
納得です。
賭けの裏話的な話を聞きました。
リリスを玉座の間に放り込む事を考えていた人たちが(私の他にも)居たのだそうですが、リリスを見付つける事が出来なかったとのこと。
『居てほしくない時には居るくせにー。』とか言っていたとか。
うんうん。リリスがおかしいのは、いつもの事ですね。
私がお菓子を作った時には、なぜかいつも居ますけどね。
今日もプリンが美味しいです。
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今日もお茶会です。
来客があると教えてもらいました。
先日の賭けで勝った人たちが、お礼をしたいのだそうです。
お礼をしていただく様な事はしていないのですが、「お遊び的なモノなので、何も考えずに気楽に付き合ってあげて下さい。」とのことでした。
数人のメイドさんたちが来ました。
一人だけ、おかしな格好をした人が居ます。
リリスがおかしいのは、いつもの事ですね。
白い髪のヅラを被り、白いヒゲを付けて、白い布を体に巻き付けた様な服装をしています。
私が何か言う前に、「大地の精霊ぢゃ。」と、リリスが言います。
メイドが仕事中にしていい格好ではないと思いましたが、”大地の精霊”なら良いのでしょう。
リリスの横に立つメイドさんに目を向けると、両手の上に小さなクッションを持ち、その上に紙で出来た無駄に立派な宝冠が在りました。
周りのメイドさんたちに促され、私は、大地の精霊風のリリスの前で片膝を突き、頭を下げます。
厳かな声で、リリスが言います。
「そなたに、宝冠を授ける。」
続けて、厳かながらも、ふざけた感じで、リリスが言います。
「王を倒したぁそなたがぁ、もう王様でぇぇ、いいんぢゃね。」
「「「「ぶふっ!」」」」
周りのメイドさんたちが噴き出しました。
私も笑いを堪えます。
でも私、倒してないからね、王様。
私の頭の上に、紙で出来た無駄に立派な宝冠が載せられました。
「ありがとうございます。」
周りのメイドさんたちが拍手をしてくれました。
皆さんノリがいいですね。
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そのまま、お茶会をしています。
紙で出来た無駄に立派な宝冠は、私の頭の上に載ったままです。
「ぜひ、そのままで。」と、メイドさんたちに言われたからです。
頭に宝冠を載せたメイドというのは変だと思うのですが、周りの反応を見ると、おかしいと思っている人は一人も居ない様です。
うん。おかしいですね。
例の賭けの話になりました。
メイドさんの一人が、あの不幸な出来事を再現します。
皆さん大笑いします。
私も大笑いしてしまいます。
自分のしでかした事とは言え、おかしな事をしたものです。
あの時、メイドさんたちが爆笑したのも頷けますね。
うん。
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おかしな格好をしたリリスも、一緒にお茶をしています。
おかしな格好をしたままなのは、「ぜひ、そのままで。」と、私が言ったからです。
『賭けの最中に、リリスを探していた人たちが見付けられなかった。』という話をします。
リリスは、「工房で宝冠作ってた。」と、言いました。
「ああ、そんなところは探さないね。」と、他のメイドさんたちが言います。
”工房”とは、どんなところなのでしょうか?
私も行った事が有りません。
”工房”は、魔道具を作ったりしている場所だそうです。
リリスが居るとは思われない場所ですね。
それどころか、関係者以外は入れない場所の様な気がしますが。
「何で、そんなところで?」
「余計な人が来なくて、作業に集中できるから。」
「お前が、その”余計な人”だろっ。」
「リリスだし。」、「リリスだから。」、「リリスらしい。」
他のメイドさんたちは、気にしていない様子です。
うん。おかしいですね。
さすがリリスです。(笑顔)
ふと、頭から宝冠を取って、リリスが作った”それ”をじっくりと見ます。
紙で出来た無駄に立派な宝冠です。
無駄に立派なのに、紙で出来ているとすぐ分かり、豪華さと安っぽさが混在しています。
すげぇ。
さすがリリスです。
おかしな事を、平気でやり遂げてしまうところが。(笑顔)
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工房で作っているという魔道具について考えます。
魔道具を使っているところを見た記憶が無い気がしましたので。
そう思ったのですが、私の髪と瞳の色を変える魔道具を、前に貰っていましたね。
大分前の事だったので、忘れていました。
それ以前の私の髪の色を、誰も気にしていなかったですしね。
”死神”とは何だったのか。(しばらくぶり、2回目)
工房では、これまで色々な魔道具を作ってきていたそうで、所有する魔道具の数と種類がとても多いのだそうです。
もし、それらを使ったら、余裕で魔術師団を蹴散らせるくらいなのだそうです。
それほどまでの大量の魔道具は、メイドには必要が無いと思うのは、私だけでしょうか?
不思議に思っていたら、そのことについても教えてくれました。
昔、人手不足だった時は、メイドたちを、王様たちを守る最後の砦にしなければならなったのだそうです。
その時から、メイドたちに戦闘訓練をさせていたそうなのですが、それと共に、戦力不足を補う為に魔道具作りも始めたのだそうです。
それ以来ずっと、魔道具を作ったり、開発をしてきたそうで、その為、今も大量の魔道具を所有しているのだそうです。
売り払うのには危険な魔道具も多くて、あまり減らないのだそうです。
『売り払うのには危険な魔道具』とやらに、少しだけ意識が向きましたが、危なそうな気がしたので、それ以上の事を訊くのは止めました。
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お茶会をしているところに、王子様が来ました。
久しぶりにお会いします。
おかしな格好をしたリリスや、頭に宝冠を載せたメイドに、王子様も特におかしいとは思っていない様です。
うん。おかしいですね。
王子様が、お茶を飲みながら愚痴を零します。
なにやら、お疲れのご様子ですね。
お疲れのご様子の王子様を見て、引き篭もっている陛下に、少しイラッとしました。
「引き篭もっている王様なんか、王様じゃない。」
「もう、王子様が王様でいいでしょ。」
頭に紙で出来た無駄に立派な宝冠を載せたメイドが、凄く偉そうな事を言います。
「はっ。」
そう言って、王子様が片膝を突きました。
王子様もノリがいいですね。
王子様は走り去って行きました。
護衛のメイドさんたちも追い掛けて行きました。
その日の夜、陛下の退位が発表されました。
………………。
私…、また何かやらかしましたか?
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翌朝の朝食時。
隣に座るリリスが、テーブルに突っ伏して笑っています。
「王様を退位させたメイド…。くくくく…。」
リリスがおかしいのは、いつもの事ですね。
「さすが…、メイド界の…、隠し切れてない…秘密兵器…。くくく…。」
おかしな事を言わないでほしいです。
私は、ただのメイドです。
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あの騒動からしばらく経ちました。
今日のお茶会は、何故か参加者が多いです。
メイド長や、前の上司も居ます。
しばらくぶりに、王子様もいらっしゃいます。
その王子様。
ただのメイドの前で、片膝を突いています。
そして、「結婚してほしい。」とか言っています。
ただのメイドに。
………………。
へ?!
なんで?
どうして?
どうしてこうなった?
分かりません。
まったく分かりません。
よく分からない状況に、おろおろしてしまいます。
メイド長が、「後は、私たちが。」とか言っています。
王子様は去って行きました。
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メイド長に言います。
「王子様がおかしいですっ。」
メイド長が固まります。
いつもなら生きているのか不安になるのですが、今の私の心の内は、それどころではありません。
もう一度蹴り上げれば、王子様が正気に戻る気がしました。
ですが、羽交い絞めにされたので、追い掛けて実行する事が出来ません。
ぬう。
念の為、メイド長に確認します。
「もう一度蹴り上げれば、王子様は正気に戻りますよね?」
「ダメです。」と、言われました。
ぬう。
メイド長に、「王子様と結婚してほしい。」と、言われました。
何でなんですかねぇ。
私は、ただのメイドですよ?
私が王子様と結婚しないと国が滅ぶと、言われました。
何で国が滅ぶんですかね?
おかしな事を言いますね。
私がメイドさんたちに好かれているから?
意味が分かりません。
もし、王子様が他の人と結婚して、その人の性格が悪くて、メイドさんたちと喧嘩したらどうなるか?
メイドさんたちがぶちのめして、王子様もどこかにやって、私を王様にする?
騎士団も魔術師団も、メイドさんたちの敵ではない?
ああ、うん、そうですね。
国が滅びましたね。
………………。
もし、私が王子様との結婚を拒んだら?
王子様なんか要らないねって、王子様をどこかにやって、私を王様にする?
国が滅びましたね。
………………。
あれ? この国、終わってません?
そんな事は無い?
私が王子様と結婚すれば大丈夫?
いや、そう言われても、『はい、そうですか。』とは、なりませんよね?
そこをなんとか?
メイド長と他の人たちが、ただのメイドに頭を下げます。
………………。
どうしてこうなった?
<>
寮の自分の部屋に居ます。
結婚の話を考えます。
説明を受けた結果、分かった事が有ります。
私が王子様と結婚しないと国が滅びます。
………………。
分かったけど分かりません。
分かったけど分からない事が分かりました。
………………。
うん。分かったけど分かりません。
………………。
困りました。
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この国から逃げたら、どうなるのでしょうか?
寮の先輩方からも、王宮のメイドさんたちからも、逃げ切れる気がしないですね。
王様になったら、どうなるのでしょうか?
『めんどくさそう。』という事ぐらいしか、思い付かないですね。
陛下が引き篭もった時、王子様がお茶会に来れなくなっていましたね。
王様になると、お茶会に参加する事も出来なくなるんですね。
そうなると、プリンが食べられませんね。
国が滅んだら、やっぱりプリンが食べられませんよね。
………………。
………………。
………………。
<>
王子様と結婚する事にしました。
プリンが食べたいからです。
そう言ったら、メイド長が何か言いたそうにしていましたが、結局、何も言わなかったので、どうでもいい事だったのでしょう。
王宮のメイドさんたちも寮の先輩方も、とても喜んでくれたので、良い選択だったんだと思います。
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勉強をさせられています。
王子様…、いえ、即位されたので、今はもう陛下ですね。
陛下と結婚する為には、必要な知識や礼儀作法などが、色々と有るんだそうです。
毎日、大変です。
毎日、逃げ出したくなります。
毎日、羽交い絞めにされます。
ぬう。
毎日、プリンを食べて、勉強を頑張っています。
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養子に出されました。
そう言っても、書類上の話ですが。
陛下と結婚する為には、それなりの身分が必要とのことでした。
メイド長が、書類上の母親になりました。
旦那さんが貴族だったのですね。知りませんでした。
それ以降も関係はあまり変わりません。
これまでと同様、護衛のメイドさんたちに、普通に羽交い絞めにされています。
ぬう。
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結婚式です。
前日まで、沢山勉強させられた所為で、既にフラフラです。
偉そうな人の前で、片膝を突きます。
私の頭の上に、ティアラが載せられました。
『以前にも、こんな事があったなぁ。』と、疲れてボンヤリした頭で考えました。
結婚式は、初めてのはずなのですが。
沢山勉強させられて疲れているから、変な事を考えたのでしょう。
ぼーっとしている間に、結婚式は終わりました。
ふぅ。
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王妃になりました。
何もしなくても、毎日プリンが食べられます。
むしろ、『何もしないでくれ。』的な事を、陛下に言われます。
失礼ですね。
ふと、今までに、私の周りで起きた出来事を振り返ります。
………………。
………………。
陛下の言う事も、もっともだと思いました。
ぬう。
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なにごとも無く、平穏無事な生活が続いています。
国が滅ぶという事もありません。
有り難いことです。
お菓子作りの方は、すっかり軌道に乗った様です。
畑での、お菓子の原料作りも本格化しました。
果樹園は、もう少し掛かるとのことです。
他の場所に、牧場がいつの間にか作られていました。
そう言えば、プリンを作るのに牛乳が必要でしたね。
牧場の一角には、鶏舎も作られているそうです。
プリンを作るのに、卵も必要でしたね。
私が知らない内に、思っていた以上に大事になっていました。
………最初の建物からそうでしたね。(笑顔)
今日もプリンが美味しいです。
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間も無く子供が産まれます。
男の子だったら、名前を『ガイ〇ン』にすると、同意を取り付けています。
楽しみです。
女の子でした。
ちょっとだけ残念に思いましたが、可愛いかったので良しとします。
この子は、シルフィと名付けられました。
< 第一部 完 >
( 注 )
”王宮”という言葉について、以下の二通りの意味で使われています。
・王族の住む部屋や玉座の間が在り、政務が行なわれている建物。
・上記の建物を含む、外壁で囲まれている敷地の内側のすべて。
メイドさんたちは、自分が居る場所でどちらの『王宮』なのか察するので、特に問題は無いのです。
2019.03.25
一部の表現や漢字、ルビや括弧や句読点などを見直しました。
少し、追記したりしましたが、お話は変わっていません。
2019.03.27
一部の表現や漢字、ルビや括弧や句読点などを見直しました。
少し追記しました。結婚式の様子をちょっとだけ。
お話は変わっていません。
2019.04.05
少し追記しました。
工房と宝冠の話が出たところに、魔道具を大量に所有しているという話を追加しました。
後で出てくる『魔術師団もメイドさんたちの敵ではない』という一文の理由を書いている箇所がありませんでしたので。
(働かされ過ぎによって)壊滅はしていたのですけどねー。
第二部は、いつになるか分かりません。
凄く短くなってしまうかも。