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続 存滅の柱〈終極編〉  作者: 茶谷 創懐(くらふと)
第四話 記憶の空白
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JKコロシアム オン スクール

第四話 記憶の空白


あれから二年後。創我飛と亜空幻は幻の家で同居していた。

消失したはずの電気が復興しているのは、電圧を変える装置、変圧器を分離する

セーフモードが正常に作動していたからだ。

これにより、一時的に電気が使えるようになったのだが、今日限りのようだ。

明日からは電気が使えなくなるのだった・・・。


記憶に空白がある。僕には高校生からの記憶しか残っていない。

それより前は・・・ダメだ。何も思い出せない。

一体、僕はどこで生まれ、どんな家庭で育ったのだろう。

これまで人生を本能のままに生きてきた。

二度目? そんな気がしないでもない。

「また石化しちゃったよ。ふふっ」

亜空幻の甘美な声音で、創我飛は考察の世界から現実の世界に返った。

リビングのソファーで彼女とクイズ番組を観ていたんだった。

確か「記憶力が試されるクイズです」とナレーションしたところまで観たんだっけな。

テレビ画面にはクイズ番組の優勝者が涙声で喜びを体現していた。

「考え事? 仕事関係とかで悩みでもあるの? 魂抜けていたけど」

幻の声にはかすかな怒りを感じた。恐らく僕のことを心配してくれていたのだろう。

彼女に杞憂させてしまったことは謝らないといけないと思ったが、

それよりも返答しなければ。仕事関係で悩みなどない。

本の装丁は好きでやっているし、仕事仲間ともうまくやっている。

でも考え事をしていたのは事実だ。

「どうしても思い出せないことがあってね。あと、杞憂させてごめん」

「思い出せないことって何? 私たち夫婦なんだから、何でも言い合える関係になりましょ。

で、何が思い出せないの?」

こんなことを話したら、変人扱いされないだろうか。

でも何でも言い合える仲っていいよね。割り切って話しますか。

「私たち高校生のときに付き合ったよね。

――幻が相槌を打った。――

それより前の記憶がないんだ。

その記憶の空白を思い出そうとすると、脳のブレイカーが落ちるというか、

まあ石化しちゃうんだ」

幻はあまりに浮世離れした告白に、たじろぎ、目を泳がせている。

多分、飛の云いたいことを理解してあげようと、必死になって脳内を詮索しているんだ。

本当に根から優しい性格なんだな。幻は。

そして幻が出した答えはこれだった。

「記憶喪失していたんじゃない?」

飛はこれ以上幻の脳をフル稼働させてはいけないと思った。

「そうかもな。それしか考えられないよな」

飛はそう言って、テレビに気を紛らした。

幻は電子ゲームを二台、尻の下から出した。

そして片方を飛に渡した。

「一緒に戦おう。JKコロシアム オン スクールで!」


突然のゲームに一瞬身体が固まってしまったが、電子ゲームを開いた。

「高校生の時から飛君と戦いたかったんだ」

今日の幻はテンションが高い。

電気を使える最後の日だから、存分にゲームで楽しまなきゃ。

そう幻に教えられた気がして、考え事ばかりしているつまらない自分を一旦捨てた。

そしてゲームに真っ向に臨んだ。

「格ゲー(格闘ゲームの略)か。ほう、全部女子高生キャラじゃん!」

幻は小柄で自称アイドルの女子高生、沙由梨を選択し、

飛はドS系お嬢様女子高生、美佳を選択した。

戦闘画面に切り替わる。

流石に遊び慣れている幻が優勢だった。

開始数秒で飛の選んだ美佳の体力ゲージが半分になってしまった。

すると美佳が闘気のオーラをまとった。

飛は何か反撃できないかと、ボタンを適当に押した。

美佳が沙由梨を鞭で引っ叩く。

沙由梨の体力ゲージが逓減していく。

沙由梨が逃避行動をとる。

美佳はダッシュで追いかける。

戦闘曲がかなりのアップテンポで流れていて、なかなか激しいエフェクトや効果音が

二人のイチャイチャした戦闘を盛り上げた。

沙由梨がマイクを取り出し、聞きなじみのない歌を熱唱した。

美佳の体力ゲージがなめらかに逓減していく。

美佳は飛び蹴りを決めた。


KO!


幻の沙由梨が勝ったみたいだった。

敗者や勝者の余韻に浸る時間はなく、すぐさま第二ラウンドが開戦した。

こうして、二人は思う存分、電気のある日常を満喫した。





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