其の名はミスティア
改稿です。
・・・あれ!? 痛くない。をかけてくれた。
『嫌ですわ、、そんなに見つめられると火照ってしまいます。』
そう言われて私は慌てて目を逸らした。
『私はミラと申します。貴女がお目覚めになるのをずっとお待ちしておりました』
『えっ! ずっとですか・・・?』
『はい、まずは我が主にお会いになって下さい。こちらへ』と案内され、私は長い通路を行くミラさんについて行く。
そして開けた場所に出たと思ったら、そこには物語に出てくる王様が座る、立派な玉座に黒髪を短く整え、黒と金色の豪奢な服を着た男性が腰かけていた。
『ようこそ冥界へ、俺はこの冥界を統べる王をやってるヘルだ。歓迎するよ、ヴァルキュリア』
えっ? 冥界?
私はその人が言っている事がすぐには理解出来なかった。
それに最後に言った言葉が気になる? ヴァルキュリア?
『ははっ! 当然だが理解出来ていない様だな。まあ俺は優しいから一から説明してやろう』
そう言うとヘルさんは笑みを浮かべながら、語り始めた。
『いいかっ、まずお前は一度死んだ。自分がどうやって死んだかは理解しているだろう?』
私はその問い掛けに頷く。そうだっ、私は死んだ筈だ。それがどうして・・・・・・
『その時偶然だが俺がその瞬間を見ていてな。おまえの人生を読み取った所あまりにも報われないから気に入ってその魂をこっちに転生させたのさ、それにこっちの事情もある』
何故頬っておいてくれなかったのか。
その余りにも身勝手な理由を聞いて、私は憤慨した。
『頼んでもいないのに、何で生き返らせたんですか!!! それに事情って何です!!!』
私が憤りながらそう問い掛けると、ヘルさんは口元を釣り上げて更に残忍な笑顔を浮かべ、答える。
『オーディンってクソメガネの女が治めるヴァルハラって世界があるんだが、そこがどうにも不穏な動きをしていていなぁ。これは推測でしかないんだが、もしかしたら冥界に攻め込んでくる可能性があるんだ』
『攻め込んで来るって、せっ戦争ですか?』
平和な日本では到底身近に感じることがない、戦争という言葉に私は思わず聞き返してしまう。
『ああっ!下手をしたら人間界も巻き込んだ大戦になる。それに備えておく意味で、優秀な戦士の魂が欲しい。だからお前を戦士の魂を集めるヴァルキュリアとして転生させたんだ』
『ええぇっ!!! そんなこと言われても私、戦いなんて』
慌てながら断ろうとすると、
私、屋上から飛び降りたはずなのに。
そしてここどこ?
目を覚ますとそこは荘厳さを感じさせる神殿のような場所だった。
私は恐る恐る体全体を確認すると、屋上から飛び降りたのにもかかわらずどこにも怪我等ない。
どうしたものかと考えていると神殿の長い通路の様な所から、こちらに向かってくる足音が聞こえた。
足音が徐々に近くなり、そして足音が正体を現す。
『お目覚めですか?』
そう言葉を発したのは私と同じ年頃のメイド服を着た女性だった。
髪の色は日本ではありえない艶のある紫色、瞳の色は黄金色、全体的に妖艶な印象が感じられる雰囲気の女性で、引き込まれる様な魅力に溢れている印象だ。街を歩いていたら、10人が全て振り返る美貌だろう。
私が雰囲気に飲まれていると、女性が苦笑しながらも声
『言っておくが拒否権はないぞ。それにお前の記憶も預からせてもらった。お前は自分が何故死んだのかは覚えているみたいだが、自分が誰なのか? 自分の家族は? 年は? 思い出せるのか?』
そう問われ、私は自分の事を思い出そうとした。
思い出そうとした・・・
だが頭に靄が掛かった様に何も思い出せない。
大事な、絶対に忘れてはいけないことなのに。何よりも大切な、私を形成している全てだった筈なのに、思い出せない。
気が付くと自然と目から涙が溢れてきた。
それは止まらない。トマラナイ。
胸が締め付けれるようだ。
「かっ!返して下さい!!! いやっ!!! 何でこんなに苦しいの!!!!!!」
私は涙ながらに訴える。
ヘルさんは私のそんな様子を笑みを浮かべ見ながらこう答えた。
『いいねぇ、そんな顔が見たかった。絶望に歪んだ顔をなぁ。だが俺もそんなに鬼じゃあないからお前がヴァルキュリアとして使命を果たすなら、お前の記憶と願いを一つ叶えてやろう』
『記憶と願いこと・・・?』
『ああっそうだ。お前の願うことを一つだけ叶えてやろう』
『だから俺に従え』
心が沈んだ私にはその言葉に従うしか道は無く、肯定の意味で頷いた。
『では今からお前はミスティアと名乗るがいい』
ヘルさんはそう答えると私に手を翳す。
すると私の視界が光に包まれた。