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俺の家に着く前にフーアを下ろす。下ろした瞬間鋭く刺さるビンタをされた。
「今度この様な真似をすればただじゃおきませんわ」
「おや、お嬢様は以外と初心でいらっしゃる。もしかしてそういう事は彼氏にでもやってほしかった……」
バチン。またビンタをされた。やはりこいつは冗談が好きではないらしい。
俺は周りを見渡し追っ手がないか確認し彼女を部屋に入れる。何も知らない人が見ると如何わしい事をやろうとしていると勘違いするであろう。
「汚い部屋。ろくに掃除してませんわね」
「へえへえ。で、改めて話を聞かせ貰ってもいいか?無報酬でここまでやったんだ。いいだろ?」
「貴方が勝手にやった事でしょう。だがもう護衛もいませんし絶対に口外しないと約束するなら聞かせてやりましょう」
フーアが一息つく。
「まあ、わかってはいますが私は命を狙われています。理由も言わなくてはなりませんか?」
「もちろん。そこまで言ってくれんと俺も護衛がしににくなるからな」
「仕方ありませんね。……少し失礼」
そう言ってフーアは下を向きコンタクトを外す様に目の方に手を入れるただ、取れたのはコンタクトではなく目そのものだが。
取れた目玉は彼女と同じ金色の目をしていたがやがてそれがふっと消え去り真っ白な球体に変わった。
「義眼か。気づかなった」
「当然です。私の母が作った特別なものです。ここには大事なデータが入っております」
「という事はそいつが追っ手が欲しがっていたものか」
「ようやくわかりましたか。もうちょっと早く理解してほしかったのですが」
「本当上から目線だなあんた」
「当然です。私はアークボルト社の武器開発を担当していますから」
俺は突然現れた驚愕の真実に目を疑った。
「なんですか?こんな小娘が武器を作るのはおかしいと?」
「いや……別に」
「言っておきますがあのアークボルト弾を開発したのは私なのです。他にも父が作った武器の改良や富裕層向けの護身武器の製作、色んなものに関わっていますの。人を殺すしか能がない貴方と違って私は数々の傭兵や軍が欲しがる商品を作ってきました。わかります?わからないなら私が作った商品の売り上げや会社の貢献度とか資料を交えて3時間ぐらい話てあげますがどうでしょうか?」
フーアは時々声を荒げて一気にまくしたてた。
「あー、その、なんというかうん。すごいなー」
「貴方適当に言ってるでしょう!?そうですね。やはりここは私の凄さを知るために6時間ぐらい話であげませんと……」
「それはともかくこの義眼一体何が入っているんだ?」
実際に6時間も話込まれたらたまらない。俺は話題をそらす事にした。
彼女は不満気な顔をしていたが6時間も話してその間に追っ手が来たらどうするといったら渋々こちらの話に答えてくれた。
「……この目にはアークボルト社で主に私の作った武器の設計図のデータが入っていますの。中にはまだ公開していない新型の武器もあります」
「他社にでも漏れたら大変だな。もしかしてその追っ手も他の武器会社の奴が仕掛けたのか?」
「あら、察しがいいわね。その通り。追っ手はボンゾウ社。父がまだ若い頃資金を融資したところみたいです」
「あそこか。あの『グッド・コスト社』よりも低品質の武器作ってる会社だな」
「あら、よくわかりましたね。ただ銃を撃てば満足する人間だと思いましたが」
「こっちも武器の良し悪しで仕事の成果が変わるからな。カタログもよく見ている」
火星だけで働くなら彼女のような撃つだけを考えるだけでもそれなりにやっていけるが俺たちの場合は様々な星々に仕事をするのでその環境にあった武器を考えなければならない。
性能重視か、耐久性重視か。その選択を間違っただけでも死ぬ可能性がぐっと高まるのだ。
「ボンゾウ社は昔父が考案した武器のパーツを作っていたのですが予想以下の低品質だったらしく三ヶ月で契約を打ち切ったらしいわ。恐らくそれに逆恨みして……といった感じですかね。あの会社借金で首かまわらなかったといいますし」
「借金がたまってどうしようもなくて会社を襲って設計図を強奪しようとしたのか。変に勇気があるな」
「全くどうしようもありませんね」
「だが奴さんもかなり本気だ。腕の立つ傭兵も雇っているみたいだしな。いっそボンゾウ社を訴えて社会的に殺した方がいいんじゃないか?」
「殺すのに何ヶ月かかると思っているんですか。私は明日にでも殺されるかもしれないのですよ?」
「そうだな言ってみただけだ。という訳でここからはビジネスの話だ。俺を護衛にするとして幾ら払う?」
「20Cで」
「ふざけるな」
「実力もまだ知らない奴に払う金なんてありませんわ。これでも多いくらいです」
「じゃあ出来高だ。追手を撃退する度に2万。これでどうだ?」
「……できるのならいいでしょう。できるのなら、ね」