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Piece  作者: なっちゃん
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はめ込まれていくpeace

ペンを走らせているといつの間には時間が過ぎていく。俺は一度書く手を止めて椅子に座ったまま大きく伸びをする。

「失礼します。」

執務室の扉越しに部下の声が聞こえた。俺は「入れ。」と一声、そして扉が開く。

「少佐、コーヒーと仕事をお持ちしました。」

「気が利くね、コーヒーだけ置いといてくれ。」

「それは出来ませんね。」と部下は軍事書類と報告書の詰まったファイルを机に置いて退出する。

 俺は部下の持ってきたコスタリカコーヒーを啜りながら呟く。

 「もう少し貴方達と同じ部隊に居たかった。」

翌朝、06:00

2度目の最悪な目覚めの後に、凝り固まった体を解し傷の処置と物資の確認を済ませる。相変わらずハイカロリーかつマズイ野戦食を水で飲み下す。

「その食い方は水溶きだな。」

?PM2それって何ですか?

「餌の喰いが悪い家畜、特に豚とかの出荷前に無理やり体重増やすために使う荒業だ。」

「俺は出荷前の家畜ですか?」

不機嫌な表情作るのも面倒なので無表情に淡々と返す。

「俺ら全員国の家畜じゃないか?それも屠殺場に運び込まれる直前のな。」

散々な言われ様なので何か反撃をと思っていたら、副隊長に割り込まれた。

「楽しいお喋りは終わりだ、移動するぞ。」

余り楽しく無いのですが。視線と表情だけで反論してみる。

「何してる?行くぞ。」

やっぱり無意味でしたか。


09:00

「後3000m程で谷の出口だ、これが最後の休息になる。」

副隊長の指示に歩き疲れた隊員達は口々に文句や愚痴を言いながら岩陰に腰を下ろす。俺も軽食と傷の処置を済ませて早朝からの行軍で疲労が溜まった太腿を揉み解す。小休止の途中、SS1がスカーH(LB)に取り付けたテレスコピックサイトを覗き込み谷間の隙間から例の駐屯地を確認出来るか試している。

「防衛設備が幾つか確認出来ますが、駐屯地の全容を把握することは出来ません。」

報告を聞いて隊員が口を開いた。

「面倒だけどもう一回山登って、反対側に行くか。」

顔の嫌悪感を隠そうとしない隊員たち、ソレでも反論はしない。この人たちはコレでもでも敵の背後に回るのはこれが一番確実だと気づいているのだ。

「それじゃ、15分ぐらいしたら登山開始。」

う~す。時間も少し有るので、もしもの為に備えてM249のフィードカバーを開けブラシを使って薬室に残ったカーボンを掃き出す、こうやって少しでも排莢や装弾不慮のリスクを軽減する。気休めにしか成らないと掃除が終わってから気付く、だけど隊長や軍曹に煙草がある様に俺にも戦場に持ち込む気休めがあっても良いだろう。ついでに残りマガジンの数も頭に叩き込んでおく。

「時間だ、山登るぞ。」

全員がユックリと腰を上げる。「そんじゃ、仕事に行こうか。」

「誰も(行ってらっしゃいと)言わないのが何とも寂しいね~。」

「ここは自宅じゃねーだろ。」

今回の抜けた発言はゲーデが発した物だ、ソレに対して隊長そして背中越しに右手を掲げて手刀の形にしがゲーデの頭を叩きながら黙らす。て前に振り下ろし。「行くぞ。」のハンドサイン、ソレを確認した隊員達が動き出す、PMが先頭、その後ろにRM2右翼に一定間隔開けてSS1とRM3、左翼も同じくSS2とRM1、後方に副隊長とゲーデ、中央は俺と隊長。この隊の標準的な陣形だ。


出来るだけ登り易いルートで山頂を目指す。気温はソコまで高くないが、強い日差しのせいで体が火照る。ソレでも歩き続ける。

「山頂が近い、PMが先行して山頂と向こう側の索敵。」

副隊長が歩調を緩めず無線に話しかける。

「了解です。」

短く、事務的な返事。

「他は緩やかに前進、敵に気を付けろ。」

次の指示には誰も返事をしない。姿勢を低くして岩陰に隠れながら不規則なリズムで前進する。

「山頂に歩哨を発見、4人いる。」

無線から押し殺した低い声が聞こえてくる。PM2の声だ。続いて副隊長

「敵に動く気配はあるか?」

「優雅に葉巻とか楽しんでますよ。」

これはPM1だ。

「そのまま監視しとけ、動く様なら追跡、これからRM1とRM2を向かわす。動かない様なら可能な限り生け捕りにする。」

「了解。」

「SSの2人は少し離れた所に潜伏して援護狙撃の用意、他は待機だ。」

「了解。」


「配置に着いた、どうする?」

少尉からの通信に今度は隊長が答ええる。

「殺さず静かに。」

「仰せのままに。」

冗談粧した返答と共に通信は途絶えた。


「クリア、上がって来てください。」

PM1から通信があったのはアレから約15分後の事だった、時間をかけて、他の隊員と連携して同時に4人を排除するのにここまで丁寧にする必要があるのだろうか?

「基地潜入前の予行演習みたいなもんだな。」

頂上に登りながらRM3が教えてくれた。

「一人で同時に複数の相手沈めるのは難しいからな、道中に一回息を合わせといた方がいいんだ。」

山頂に着いた、ソコには1つの死体と3人の捕虜が捕らえられていた。

「隊長、仕方なく一名ナイフで殺しました。」

PM2が至極残念そうな表情で報告してくる。無言で頷いた隊長はPM1に俯せに押さえ込まれた捕虜に歩み寄り問い掛ける。と思いきや頭部を思いっきり蹴り飛ばす。

「いきなりですね。」

隊員達の言葉に隊長は

「まずはノリで一発。」

無茶苦茶なノリでした。そのまま2回3回と蹴りまくる。ソコにSS2が口を挟む。

「隊長、斜面にトーチカを発見、拷問ならその中でやりませんか?」

蹴るのを止めた隊長は顔を上げて指示をする。

「敵影は?」

「複数確認」

「よし、多少の発砲は許可する、速やかに制圧しろ。」

「了解。」

眼下には岩と砂の中に土嚢をドーム状に積み上げたトーチカらしき物が確認出来る。

「見付からない様に壁のある側面から接近して中にグレネードでも投げ込め。」

制圧作戦に分隊支援火器は使いにくいので俺はゲーデやSSと一緒に少し離れた所から周囲の警戒をする。ソレでもトーチカの方が気になって自然とそっちに視線が行く。

トーチカの裏、出入り口側に向かうPMの2人と少尉、PMがカラビナで腰から吊ってあるM26A1グレネードを外して安全ピンに手を掛ける。前面でも軍曹とRM3が何時でも投げ込める様にグレネードを手に取る。そして俺の横で手首を拘束した捕虜にハイパワーの銃口を向ける隊長が無線に告げる。

「俺のカウントに合わせてピンを抜け、いいな。」

「うっす。」

「3、2、1、殺れ。」

少尉以外の4人がピンを抜き、ひと呼吸置く、そして前後からトーチカ内に放り込む。突然のことに驚いたトーチカ内が慌ただしくなる。投げ込んでから約3秒後、ほぼ同時に爆発、立て続けに小爆発、トーチカ内の弾薬が誘爆したのだろう。だが音はあまり響かない、トーチカの形状が爆発音を閉じ込めているのだ。そして少尉が先行して突入、PMが続く。

その後に銃声は一発もしなかった。内部の敵は全て爆死したのだろう。肝心のトーチカは無事のようだ。

「オールクリア。」

無線は無感情に状況終了を告げる。



俺は捕虜をトーチカの天井から吊るす。トーチカの内側にはドーム状に積んだ土嚢が倒壊しないように木製の柱と梁で補強してある。頑丈な作りのトーチカに少し関心し、グレネードの爆発で倒壊しなかった理由も解った。そしてトーチカ内にあったロープを使い捕虜の腕を縛り、つま先が床から僅かに浮く高さ梁からに吊り上げる。

「一応国際法で捕虜への拷問は禁じられてる。だが俺達はソレを意図的に無視する、いいな。」

PMの2人、軍曹、少尉、SS1の5人が警戒の為に外に出たのと同時に隊長が告げる。ゲーデとSS1はトーチカ内を物色している。そしてもう一言。

「歴史を作るのは常に勝者だ。結果勝ったならある程度の非道は肯定され、記録には善行として記載される。」

「結局、俺達は勝ち続けなければ明日はない。」

長くなりそうな隊長の演説をRM3が無理やり終わらせる。俺の視界の端に収穫物を確認して顔の端を嗜虐的に歪めるSS1が見えた。

「SM、今回はお前も立会え、一回は経験しといた方がいい。」

副隊長が俺の肩をに手を置きそう言った。俺は口の端を引き結んで首を縦に降る。

「まず1人目はどうしよっかな~。」

ゲーデが楽しそうに向かって一番左に吊るされた捕虜に歩み寄る。顔に腫れが見える、隊長が先程蹴ったヤツだ。

「取り敢えず、お前の所属部隊を教えてくれるかな?」

問診をする医者の様な優しい口調でゲーデが問い掛ける。捕虜1(仮)は身動き一つせず、沈黙を守る。ゲーデは捕虜1の上半身の野戦服をナイフで裂いて裸体を検め、裂いた野戦服を目隠し変わりに捕虜1の顔に巻く。そして後ろに控えるRM3に顎で指示を出す。

「SM、お前注射器持ってたよな?」

俺のところに来たRM3が捕虜に聞こえない様に耳元で囁く。ゲーデは捕虜をサンドバッグの様に殴りまくる。

「未使用の抗生物質のが1つあります。」

「今すぐ使うか俺に渡せ。」

急かされて急いで取り出す。そして左手に少しだけ打ち込む。打撃音とうめき声がだんだん大きくなる。

「残りは捨てるぞ?」

「どうぞ。」

RM3は注射器の中身を足元に全て出した後、ピストンを抜いてシリンダーの方をSS1に渡す。SS1はシリンダーの中に灰色の粉末を入れて水に解く。再びピストンを填めて針を上に向けてピストンを少し押し込みシリンダー内の気泡を完全に抜く。

「ゲーデ、彼は今何が欲しいと思う?」

少し息の上がったゲーデにSS1が問い掛ける。

「皮膚に複数の注射痕がある、しかも静脈に集中してる。そしてトーチカ内のにあったアッタッシュケースからソレが出てきた。」

「流石に簡単過ぎたかな?」

ゲーデが「馬鹿にするな。」とSS1の頭を叩く。そして打撃やナイフでの暴行で傷だらけにになった捕虜1の目隠しを取りながら、注射器をチラつかせる。

「君にはコレが必要なんじゃないか?」

イブに禁断の果実を奨めるサタンの様にゲーデは優しく、包容力のある笑顔で自分の顔の高さまで注射器を持ち上げる。

「人は薬物に勝つことは出来無い、一度ハマると抜け出せない沼の様にな。」

俺の横でRM3が呟く。この人は軍人より詩人の方が向いてると時々思う。


ソコからは完全に此方のペースで尋問が続いた。いや、捕虜1の拷問を見ていた、向かって一番右の捕虜3(仮)が捕虜1以上のヘロイン依存症だったのだ。

捕虜3は、麻薬史上最強、死に至る程の禁断症状に苦しみ、そして、涙と鼻水、唾液と大量の汗を撒き散らしながら「ヘロインをくれ!早く!!」と身をよじり喚いた。

「お前の所属部隊は?この質問に答えれえたら射ってやる。」

SS1の質問に捕虜3は禁断症状に耐えながら一息に答えた、頷いたSS1は捕虜3の右上腕部の裏側にヘロインの注射をする。静脈注射なので効果が出るのが早い、捕虜3はヘロインの与える途轍もない快楽と陶酔感に酔い、譫言の様に知っている事を全て話した。

壁際で様子を見ていた副隊長は実に不快そうな表情で他の捕虜に向かって「他に知っていることは?」と問い掛ける。捕虜は「これ以上は知らない。」と絞り出すように言った。当然、この3人の捕虜はもう用無しになる。SS1は3人の後ろから捕虜の喉、頚動脈を切り開く。

そして俺達は拷問部屋として使われたトーチカを出て警戒に出ていた軍曹達と合流して再び歩き出す。時刻は16:24を刺していた。作戦開始前日の不思議な緊張感が俺の足を前に出し、ここまで来たら必ず生き残ると言う決意で踏み込む。明日で戦局は大きく動く、そして多くの血が流れる。

「敵を殺すのは銃でも兵士としての技量でもない、俺自身の殺意だ。」

腹は座った、明日の夜は荒れる、そして俺たちが英雄になる、その為に今は目的地まで歩く。


peaceを読んで頂いてありがとうございます。

趣味と暇潰しで書いているので、小説としては至らぬ処も多々有りますが、これからも宜しくお願いします。

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