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Piece  作者: なっちゃん
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puzzleの枠組み

今作品が初投稿となります。軍隊物なので登場人物は男性ばかりですが、興味のある方は是非読んで下さい。


誤字等ありましたらご指摘願います。

「クリア」

何だこいつらの強さは。掃除でもしているかのように敵を沈めてやがる。

 俺たちは今祖国と敵対しているA民主主義国の小規模軍事施設に潜入、制圧するのがこの隊の任務だ

「さて任務完了、帰るぞー。」

「うゎ帰のダリー。」

「なら、そこの死体君にでも添い寝してもらえ。俺らは、前線基地のベッドで、疲れ取るけどな。」

遠足の帰り道を思わせるような軽いジョーク。いつ敵の増援が来てもおかしくないこの状況の中で、立っているのがやっとなくらい緊張しているのは俺だけか?

「スカウト・スナイパー1、2(SS1,SS2)敵の増援来ているか?」

 副隊長、中尉の索敵指示

「こちらSS1、北東の山岳に車列を発見1小隊規模、武装している。距離2000m、こちらに接近中。隊長指示を。」

「あー、どうしょうか。SS2俺らのいる施設の北東に続く道、その近く林あったよな?」

「はい西側に。」

「よし。SS1,SS2道を狙える位置につけ、そこSM(分隊支援兵)の2人、道の正面、施設の塀でアンブッシュ、5人は、例の林に隠れる。俺について来い、残り2人遊撃見方の邪魔にならない所からから鉛弾叩き込め。」

「十字砲火すね。」

「了解。行くぞ、新人。」

俺は、先輩の後に続いて走った。あまり撃ってないM249のマガジンが重い。俺と先輩は、塀側のアンブッシュ。正面から二丁の分隊支援用軽機関銃で敵の車列を正面から串刺しにする役目だ。

無線から隊長の静かな声が聞こえてくる。

「スタンバイ……スタンバイ」

 「行くぞ、ファック!!」


戦闘中、俺はただ正面に居る敵を片っ端から5.56mmの的にしていった。

「リロード」

先輩の冷静な声。それに「スイッチ」と慌てて応じる。こうやって交互にマガジンを交換しながら途切れることなく一人ずつ叩き込む。

 約5分後、拍子抜けするくらい簡単に戦闘は、幕を下ろした。俺は、ただ真っ直ぐ車列の先頭から5.56mm弾を約550発ぶち込んだだけだった、軍隊では、それなりに知れた話だが、目の前の敵を撃てる兵士は、全体の約8割。2割の兵は、サボるか、ビビって撃てないかだ。俺は、明らかに後者だった。この作戦全体で撃てたのは、マガジン3個分、600発だけだった。1分間約750発の性能があるハズだが途中でジャムらして復帰まで先輩に代わりに撃ってもらっていたからだ。それで射撃のリズムが狂ってもリロードの早い先輩は焦ることなくフォローしてくれた。

「終わりだ。新人帰るぞ、急げ。」

「はい。」

力ない返事と共に弾が有り余って重いバックパックを背負い直しLAV兵員輸送車に向かって歩き出した。


 翌日 今日は、作戦予定は入っていない。だけどすべきことは沢山ある。

銃の整備、装備点検、弾の補給、その他消耗品の補給。でも俺は何一つやる気を出せないまま基地のベッドの上でカーキ色のテントの内側をただ無為に眺めていた。同室のっと言うか、同じテントの先輩たちは、既に整備を終え、消耗、欠損した物資をリストアップしていた。

「おい新人、さっさと起きて足りない物資書け。そこで残弾数えている暇人君が俺らの補給リストまとめて兵站科に提出するから。」

「そりゃないぜ、軍曹。タダ働きはしない、飯でも奢ってくれるのなら行ってやるよ。」

「生きて帰れたらな。」

「なら、死なれないように守ってやる。その代わり奢りはフルコースな。」

「俺の財布の心配は無しかい?」

「敵さんを殺しまくって勲章でも貰え、しばらくは金に困る事は無いからな。」

 俺は思う、こいつら死ぬのが恐ろしく無いのだろうか?何でいつ爆撃されるか分からないこの場所でこんな会話ができるのだろうか

「不思議そうな顔をしているな。」

「隊長、何故ここに?」

驚いて声が裏返る

「そんなことはどうでも良い。それより(何故あいつらは戦場でも平気か)ってことだろ?」

「はい。でも何故それを・・・」

言い終わるより早く隊長が口を開いた

「絶対負けない、死なない自信があるからだ。敵に見つかっても相手の銃口が自分に向く前に仕留める技量と自信があるからだ。それだけ死にたく無いんだよあいつらは。死にたくないから殺す、ただそれだけだ。あいつらは兵士の何たるかをよーく知っている。だから強い。」

「つまり、相当な自信家ですか?」

 乾いた笑い声とともに隊長は踵を返していた。かすかに「それは無いな」と聞こえたような気がした。

まだ軍歴の短い俺にはこの事が全く理解出来なかった。「生きたい」このためだけにわざわざ戦場まで来る先輩たちの真意が…

その日の夕方20:00に作戦前のブリーフィングへの集合指示が出された。先輩たちの後についてテントを出る。ここでも先輩たち(戦闘狂)は楽しいジョークに大声で笑いあっている、どうしたらこの人たちの会話を止める事が出来るのだろうか?作戦のことより先輩のことが気になる。

「集まったな。」

隊長の一声と共に銃声が聞こえた。響いたと表現するには余りに小さすぎる。隊員達を黙らすために隊長が発砲したのでは無い。直ぐに近くで連続した銃声が続く。だとしたらなんだ?自軍の射撃?敵襲?

「発砲音が一発だけ、敵の狙撃だな。」

自軍の反撃と思われる銃声がつづく中、無線に手を伸ばす部隊長に続いて副隊長もこう言った。

「見張りの奴ら今更撃っても敵は逃げているのに。」

「だいたいこの暗闇で敵に撃っても当たる訳ないだろ。」

心底だるそうに軍曹がつぶやいた。隊長は何処かと状況の確認をしながら普段んのやる気のない顔を険しくして無線でのやり取りを続けている。

「弾の無駄使いだ。」

「だよなーその弾は国民の血税で購入されているのに。何でそんなにバラまくかなー。」

自軍に対しての手痛い駄目出し。本当に容赦ない人たちだ。

「なぁ隊長、さっきの狙撃のことだが銃声が小さすぎないか?あれじゃ1km狙撃クラスだぞ。」

少尉のセリフに険しい顔のまま隊長が無線機の通信を切りながら答えた。

「確かに。少尉の言う通りだ、しかも撃たれたのはこの基地の副司令と来たもんだ。」

「副司令だと?ですが高官は司令室と宿泊用のプレハブ小屋以外居ないだろ?」

「スカウト・スナイパーの二人組、この状況、どう見る?」

珍しく真剣な隊長のトバッチリとも取れる質問に四六時中真面目で無口なスカウト・スナイパー組の(SS1)が一切動揺せずに答える。

「プロのから見ると相手も素晴らしい技術の持ち主だろう。狙撃の時間帯から考えて副司令は多分、宿泊場所に戻る時にでも狙撃されたのであろうな。」

スカウト・スナイパー(SS2)の方も続いて解説を入れた。

「銃声から察してアレはドラグノフです。有効射程距離600mのセミオート狙撃銃、本来なら長距離精密狙撃ではなく中距離支援狙撃用に設計された物です。今回の狙撃は実に900m。あの銃でこの距離は常識で測れば無理です。[嫌がらせのつもりで副司令に撃ってみたら初発から当ててしまった。]と仮定したら考えられます。」

すかさず少尉の質問。

「お前らの狙撃技術をもってしても無理か?」

途端に隊員から失笑が飛んだ。

「お前バカだな~何でそんな頭で二等兵から昇進出来たんだ?」

「軍曹、俺の素晴らしい戦果知ってるでしょう。単に強いだけですよっと。」

軽い調子で自慢する少尉を副隊長が視線だけで黙らせてこう続ける。

「話を戻すぞ、SS1、SS2の2人、お前らの最大射撃可能距離は?」

「「約900mです。」」

うぁ~息ピッタリ~と関心する隊員、いや待て驚くところソコですか?普通900mの方でしょ。

「「「「「「「「マズイな。」」」」」」」」

なにこれ!!!!状況理解出来ていないのは俺だけ?不安になって辺りを見回す。だけどあっさり見付けられた。何と言うか…トンデモないアホズラが1人いた。少尉は何もわかっていない、と言うか自分で理解しようとしていない。

「あの~バカにも分かる様に説明して貰えないっすか。」

呆れた様に頭を抱える副隊長を横目に軍曹が答えた。

「敵は持ち銃の+300mの距離を狙撃出来る。ここまではいいな。」

「「おう」」

チャカリ返事に便乗。

「うぉ~い、何で新人まで便乗してんだよ。まぁいいで、ウチのスナイパーは有効射程距離800mの銃を使って約900mの狙撃が出来る。」

「「??」」

分からん。全く分からん。

「あぁ~察し悪いなお前ら。だから敵が俺らと同じ銃使うと約1100m狙撃が出来る可能性が出てきて、俺たちじゃ勝てないの。」

分かったか、と吐き捨てるように呟いて軍曹は席に座り直した。そして今日の本題は?と言うかの様に顎で隊長の方を指した。

「そんじゃ仕切りなおして明日からの長期制圧任務の概要の説明はダルイから省略してっと、全員、装備A+aで07:00に機体番号7-12ブラックホークのところに集合、以上。」

*装備AのAは、ただ長期野戦任務に適した装備で来いってだけで+aは、そのままその他個人的に必要なもの…ホントいい加減なんだから。先輩から聞いた話だと少し前の作戦で少尉が日本製の週刊誌持って来ていたらしい、しかも日本語版の。


 昨日の騒動で基地内が慌ただしくする翌朝07:00

「さーて、行きますか。」

「うーい」

 ブラックホークに乗り込んだところで部隊構成員のおさらいをしておこう、隊長、副隊長、少尉RM2、RM1軍曹、RM3(RMはライフルマン)、SS1、SS2、いずれも上等兵のPM1、PM2(PMはポイントマン)、直属の先輩でSM1、俺がSM2

隊長もダラけてるけど軍曹、少尉の二人の方がもっと酷い。ブラックホークに乗って直ぐに軍曹はメキシコ産の葉巻に着火してボケーと窓から外眺めてるし、少尉にいったては船漕ぎ出すし、PM1の上等兵は野球好きなのか向かいに座ってPM2にスカーLのマガジン投げてキャッチボール?なんか始めるし、グレネードよりマシか。こいつらの頭はどうなってんだよ、本当に遠征=遠足と勘違いしているんじゃないだろうか。

 時計を確認すると09:23、隊長がやっと動いた。そして何ともダルそうに指示を出した。

「これより約00:30後に目標に到達する。作戦概要は(A民主主義共和国の拠点を潰す。)以上。」

 いや、流石に端折りすぎだろ、と思ってたら副隊長から追加の指示があった、まず安心。

「この辺りは敵の拠点が点在する。他にも我々に敵対する武装勢力も存在するとの情報もある。我々の任務は、(この地域のこちらに敵対する勢力を一掃する。)事だ。そうして友軍の進行の際の障害を排除する。」

 待て待て正気か?たった11人で数量不明の敵と複数の拠点を潰すのか?

「うーい」

 おーい、俺の気持ちも汲み取って下さいよー。何で返事しちゃうかなこの戦闘狂達は。ヘリは山岳地の低空を飛行している。外の景色を眺めために窓の方に振り返ってみた。植物がり少ない高山、今度来るときには観光でもしたみたいなーとか思うぐらいにいい眺めだなと思った直後、轟音と共に激しい衝撃、体が宙に浮く刹那の浮遊感、何が起こったか分からないまま床に直撃、直ぐにまた浮遊感今度のは少し長かった。思い切り床に叩き付けられる。多分エレベータのゴンドラを吊っているワイヤーを切ったらこうなるだろうと言う有様だった。意識が朦朧としていく、遠くで聞こえてるのは銃声かな?すぐ近くではミニミの発砲音、まぁもうどうでも良い事だけど。光と音が小さくなっていく、俺の人生も終わるのか?あーぁ考えるのも怠くなってきた……完全に意識が途絶える。


「イッ」

「やっと起きたか。マズイ事に低空飛行してたブラックホークが山の斜面に墜とされた。」

 あれ?何で軍曹が?事態が飲み込めずキョロキョロしてる姿が観に触ったのか左手に持った葉巻を首筋に押し付けてきた。

「残念ながらお前の天国行のチケットは俺が破っといた、ようこそ地獄へ。」

 この時の軍曹の横顔は忘れることが出来ないだろう、実際出来なかった。獰猛さの欠片もない戦場に居る40過ぎのオッサンがこんな顔が出来るのか?と言うほど満ち足りた、楽しそうな笑顔だった。そして急に笑顔を引っ込めると真剣な顔でこう言った。

「お前の直属の分隊支援の先輩な、真っ先に墜落したヘリから出て敵の進行止めてたんだけど、俺らがヘリから離れて直ぐにグレネード貰って吹っ飛んだよ。」

 敵見方の銃声が山地に響いて不思議なメロディを奏でている中軍曹は続ける。

「状況整理出来たか?つまり、敵の待ち伏せにあってヘリが大破、墜落で一名グレネードでおそらく爆死、現在3方向から攻められて壊滅の危機ってこった。」

 ここまで説明されたら嫌でも分かってくる。実際、次に何を言われると予想がつくと本当に嫌になってくる。でも二の句を待ってくれる軍曹ではない

「この部隊で最強の対人兵器を持ってるのはお前だ、お前のミニミが無いとアレだけの敵を抑えるのは無理だ、この状況どうにかするぞ、いいな」

 軍曹の真面目な言動に圧倒される。でもこんな状態でも何故か頭が冴えていく、なんだろうこの高揚感は、人間死に瀕したとき思いがけない能力を発揮すると言われているがこのことなのだろうか。

「了解しました。」

これが地獄の試練なら超えて見せる。今なら出来そうな気がする。その時無線式ヘッドセットに通信が入った、隊長の声だ。

「SS1、SS2は俺と一緒に斜面下側からの敵を抑えろ、RMの3人は斜面上からの敵、PM1,PM2とSMは正面潰せ。」

 隊長の冷静な声、この人は焦りと無縁なんだろうか?こんな事考える余裕も出来てきた。

「「「「「「「「イエッサー」」」」」」」」

「ファック、ファック!!」「SMぶちかませ、足止めしときゃPMで仕留める!!」「グレネード!!!」「RM2より全体へ、一旦引いてから単独で側面叩く。」RM2は少尉だ、あれ?何故単独行動?「了解、仕事してこい。」これは、隊長の返事だ。無線越しに多量の情報が入ってくる。だけど怒号や悲鳴は無線から聞こえてこない。冷静さを持ちつつ銃声にかき消されないように大声でのやり取りが続く。「キツイな、副隊長、空爆要請してください!!」「わかっている。」弾丸が頭上を掠めた。気にせずマガジンがカラになるまで撃ち尽くす。

「SMリロード」「おう!」PM2の力強い返事、PM組の援護射撃。止まないスコール(銃擊)自分が盾にしている岩にも大量の弾丸が突き刺さる。

「副隊長より全コマンドへ、近くにいたF15イーグルが残り約5分で到着する。もう少しの辛抱だ。」

 その時斜面上方で敵の態勢が崩れた。少尉が敵の側面から打ち込んだ、これなら行ける。それにしても少尉の動きは迅速かつ正確だった、どこにどう動けば勝てるかのカンがの多くの戦闘の中で磨かれたのだろう。こちらが優勢になった。敵の数はざっと見方の10倍以上いそうなのにこちらがここまで戦えているのは個々の戦力が規格外に高いからだろう。少数精鋭とは正にこのことだろう。

「隊長から全コマンドへ、斜面を登って山の反対側に行け。UAVの観測だとそっちには敵影がない。」続けて副隊長「配置変更だ、SMが下からの敵を抑えろ、SS1、SS2は直ぐに上がって集合地点を確保しろ。RMは全員で山頂への道を開けろ。PMは引き続き正面抑えろ。」「「イエッサー」」

「RM1,3,は俺について来い、RM2も山頂に来い、そこから射撃。」「了解。」「敵が多すぎるぞ。」「隊長、基地の奴らにUAVのLAW撃たせて下さい、敵がビビってる間に抜けてやる。」「聞いたか副隊長、俺からの指示として連絡入れろ。」「了解。」「隊長よりRM1とRM3に、お前らだけでも先に突破しろ。」「うーす。」「任せて下さい。」「援護射撃は俺らに任せろ。」

UAVの発射したLAWの66mmHEAT弾の着弾、その爆発音がオーケストラのシンバルの様に転調の合図となった。

「イッキに抜けるぞ!!」「走れ!」「行けるぞ!続け!!」

戦場に大きな動きがあったが俺の頭には隊長が少尉に出した単独行動許可に対する疑問が渦巻いた。


少尉の日記より

俺の階級は少尉、二等兵からここまで登るのはそれほど難しくなかった。初陣の奇襲戦は身方死亡者無しの大勝、2戦目は山狩り、途中でゲリラの奇襲に遭って多数の死亡者が出た。あの時の分隊長が出した撤退命令を俺は故意に無視して単独で襲撃者を潰しに行った…結局、身方は俺を見捨てて撤退、取り残された俺は文字通り孤軍奮闘し、この戦いで50人を超える敵を撃破したのだけど命令無視、不当単独行動等の規律違反により軍法会議で裁かれ…る事は無かった。会議中にたまたま傍聴席にいた一人の軍人が報告された俺の戦闘力に魅入って会議の中心の高官たちに向かって啖呵切った。俺の行動の全てに置いて責任を負うことと引き換えに俺の免罪と管理権限の引渡しを高官に要求した。当然、その場での受諾は無かった、だけど数日後独房に居る俺のもとにあの時啖呵切った軍人が監守と共に来た。そして俺の処遇の話をしだした。「お前の経歴を洗ってみた、入隊時の学力考査のポイントは壊滅的、ただし、体力、判断力、その他戦闘技術のポイントは文句無しの同級生トップ。間違いないな?軍隊ってのは何か一つの事が出来るヤツの集まりで出来ている。むしろ何でも出来るヤツは1班に2人居れば十分だ。、狙撃が出来るヤツ、潜入が得意なヤツ、CQBの得意なヤツ、CQC以外マトモに出来ないヤツ…これらが多数のピースが集まって一つの部隊、パズルが出来る、俺がテーマ「軍」の対策パズルの端っこの制作担当だ、完成させるのは上官だが材料はお前ら一般兵だ、お前らピースはずっと変わらず同じ色で輝いてろ、ソレだけならバカなお前でも出来るな?」「あぁ、分かったよお前のパズルの中で輝いてやる。」この時は未だ隊長の言葉の意味が今ひとつ理解出来なかったが唯一つ、この人は俺を縛らない、だから俺はこの人に付いて行こうと、ソレだけは理解できた。この後から5つの作戦に参加した、その戦果には、俺を嫌った高官共も納得するしか無かった、その結果が今の階級なのだ。



目の前には敵、手元にはM249ミニミ。マガジンも残り多くない、リロード、構える、バラまく、200発中約150発程リズム良く撃って一旦射撃を止める。リロードと勘違いして遮蔽物から頭を出した敵を正確に狙う。数人殺して今度こそリロード、同じことを繰り返す。今まで足ひっぱてきた新人が殿軍と言う大役を任されていると思うと自然と気持ちが高ぶってくる。でも調子に乗らない、乗ると殺される。3回目のリロードをする頃には敵もなかなか撃ち返して来なくなった。それでいい。

「SM、PM1、PM2聞こえるか。」

「「「アイサー」」」

「今から山頂に来い、こちらから援護射撃するから変に蛇行するなよ。

「やっと撤退か。」「残業代払え!」「文句言うな、オラ走れ。」

PM組の愚痴が無線越しに聞こえてくる。俺も走らなきゃ。敵に背を向ける、そしてダッシュ。

こんなにキツイ坂道ダッシュはいつぶりだろう?足は軽いけど全く前に進んでいない気がする。何かが左手に当たった、M249が腕から溢れそうになるがスリングを肩に掛けているので落とす事はない。何があったのか確認している暇はない。斜面下から敵の銃撃、斜面上から見方の応射、文字通り銃撃戦の中を走って行った。

身方のとこまで来れた。極度の安心感で脱力してしまう。

「俺たちの勝ちだ。」

隊長が呟いた。直後上空をF15イーグルが通過する。

「おら、しっかり掴まれ。」

えっ、何?と思った時には軍曹に担がれて反対側の斜面に降りて行った。いや、正確には俺を担いだ軍曹は斜面を滑り降りていた。と思ったら途端に地面に抑えつけた。隣ではいつの間にか合流していた少尉が頂上を背に座り込んでハンドガン、ブラウニング・ハイパワー・カスタムを空に向けて1発撃った。祝砲のつもりだろうか?考えるより先に壮絶な衝撃が2回立て続けに襲ってきた。F15イーグルの投下したMk84が爆発して敵を殲滅したのだろう。軍曹に促されて上を見上げれば空高くまで黒煙が上がっていた。ふと自分の手元に目線を落としてみると左手が血に染まっていた、単純な事だ、流れ弾が左手の小指の付け根を刳り獲っていた。それでも痛みが感じられない、エンドルフィンでも多量分泌されているのだろうか。

「おうおう大量出血じゃねーか。」

「軍曹、呑気に観察してないでお前のサバイバルキット内のメディクセット渡せ。」

 傍にいた副隊長が俺の左手を取りながら軍曹に要求した。

「自分の使えよ。」

副隊長が軍曹に向かって右手を手を突き出して。

「早くしろ、でないとお前のせいで隊員が死ぬぞ。」

「わーたよ、少し待て。」

「待たん、直ぐに出せ。」

 一回小さく舌打ちをしてからほらよっと投げて寄こす…本当にただの上官と部下なんだろうか?でも、さも当然と言わんばかりに他人の荷物使うなよ…それでも副隊長の処置は早かった。元衛生兵なのだろうか?、傷口を洗って消毒と止血剤を塗って、器用に縫合する。

「隊長、今後の指示は?」

「そうだな~短時間に山狩りして、その後に野営準備のためにここを離れる。SM1の死体は見つかったとしても諦めろ、荷物になる。」

「う~す。」といつも通りのやる気ない返事とともに隊員たちはトゥーマンセルで動き出した。

小一時間、俺は時折聞こえてくる銃声を聞きながら自分の左手を押さえて澄んだ水色にMk84が巻き上げた砂塵と黒煙のグラデーションが描く不思議な空に魅入っていた…取り込まれそうな程不思議な戦場のアートに。

「そんな物の虜になるなよ。高い料金払うことになるぞ。」

いつの間にか索敵を終えた隊長に声を掛けられて正気に戻った。

「結局SMの死体は見付からなかった。」

そうですか。流石にこの知らせには肩を落とすしかない。

「移動するぞ、今夜の野営地までしばらく歩くことになる。」

「はい。」

この時、体調に声かけられてなければ俺も戦闘狂の仲間入りをしていただろう。独人だったら直ぐに正気を失う……戦場にはそれだけの魔力があった。


移動中は至極短調なモノだった。セオリー通りの移動方でヘリの墜落地点から北に約5kmの岩場で一夜を過ごすこととなった。仲間を失った後の静寂は夜闇と共に重く隊員達を包み込んだ。


軍曹の思い出話1

俺は民族解放軍の小隊長の息子として産まれた。物心付いた時には既にゲリラ戦法と銃の打ち方を仕込まれていた。7歳の時から本格的に戦闘の英才教育を始めた。内容は至極シンプな射撃から建物内に複数配置されたターゲットを制圧しながら移動する実践的な物まで、応用でモグラタタキ風に出てくるターゲットを使って射撃練習もしたことがある。この訓練は敵が視界に入ったら脊髄反射レベルの速さで反応して射殺するための訓練だが、敵身方の判断をする前に殺してしまうと言うデメリットもある。俺はソノ癖で既に複数の友軍と民間人を殺してきた、そう言えば、俺と同じ訓練を受けた仲間がいたな、俺が23の時に戦場で別れて以降、連絡すらとってない。アイツらは何処に居るんだろうか。


お世辞にも安眠出来たとは言えない翌日の朝、ただハイカロリーなだけの野戦食で朝食をとり次の目標に向かって移動を開始した。

PMの2人が先頭に立って索敵と進路指示を出しながら進んでいく、目的地はまだ遠いい。

何キロ歩いただろうか、昨日の銃創が熱をもって痛む、歩きながらモルヒネの錠剤を飲んだが効果が出るまではもう少し我慢が必要だろう。明らかに戦闘の形跡が残る少し広い十字路の近くまで進軍したその時前を歩いていたPM1が道の反対側に向かって叫んだ。

「誰だ!!出てこい!!」

続けてPM2も少しドスの効いた声を上げた。

「両手を頭の上に挙げてゆっくりとだ!」

通常交差点や橋は偵察や襲撃に適した地形だ、当然隊員も皆臨戦態勢をとる。俺も反射的にしゃがんでM249を構える。道を挟んで向かい合うソレはイラつかせるほどゆっくり…と言うかのんびりと大破したトラックの影から出てきた。戦場に似使わない格好、山歩きで汚れた燕尾服に少し解れた山高帽、明らかに可笑しい。俺の視界の左隅に地面に向かって唾を吐く副隊長が写った、後ろ姿なので表情は読めないが普段はこんな事はしない神経質な上官がどうしたのだろう?まさか知り合い?十字路に張り巡らされた緊張は副隊長の悪態であっさり霧散した。

「ギーネにでも案内してくれるのかい?燕尾服の死神ゲーデ

こちらに歩いてくる男に隊長の挨拶、ゲーデと呼ばれた男はやけに笑顔で返答した。

「死地を超えたらギーネに連れて行ってやるよ。その前に酒と葉巻出せよ。」

「葉巻なら軍曹が持ってる。アルコールはこれでいいな。」

そんなこと言いながら副隊長が自分のバックパックから消毒用のアルコールのボトルを男の顔面に投げつけた、よく見たらボトルのキャプ外してるし、軍曹は葉巻に火を付けてこっちも投げつけるが男は笑いながらボトルを避けて葉巻の着火点をキャッチ?慌てて咥えなおしてボトルを拾い直し副隊長に返却。常勝の兵である上官たちが手荒い歓迎をする彼は何者なのだろう?

「お~い全員に通達、これからこの部隊にゲーデも動向することになったから皆さんよろしくね~。」

はぁ?まさか先輩の代理?いつも道理隊長の説明不足の言葉に幾つも疑問符が残る。

「お前らの誤解の無いようにゲーデについて説明する。その前にここは危険だから少し移動しよう。」

いつもながら副隊長のフォロー、イラついていても状況判断は適切だ。


移動後、SSが見張りに立ち、俺たちは謎の男に付いての説明を受けた。

「彼はウチの諜報部の人間だ、上から降りてくる極秘命令の伝達と報告をしてる。元軍人だからそれなりの戦闘力もあるから護衛とか考える必要は無いむしろ流れ弾当てろ。」

副隊長の説明に続いてゲーデも真顔で話し始める。

「今回の任務は難易度と機密性の高い任務だ、敵地に潜入するから制空権を確立するまで空爆や戦闘ヘリからの援護砲火は無い。またUAVの飛行も無い、これは情報隠蔽のためでもある、理解して欲しい。」

おいおいこれじゃ増援の可能性はほぼゼロだろ、俺たちの生存率はかなり低くなる。

「最後に本作戦の目的を説明する。本作戦は、自国空軍と協力して行う。この先に駐屯している機甲師団の裏手に周り空軍基地に奇襲を仕掛けて制圧、又は破壊。途中にある基地等は極力制圧する、そうすることで此方の空軍の受ける被害を軽減して、制空権を確保する。質問は?」

「はい。」

「なんだSM」

「敵と戦闘を起こせば我々の存在が敵に露見します。道中の戦闘は控えた方がいいのでは?」

「見つかる前に潰す。それまでだ。」

「未確認の部隊に攻撃されたら心理的な打撃も期待できるし身方の進軍も楽になる、一石二鳥だろ。」

「遂行出来るだけの実力がこの部隊にはある。」

何故か皆さん殺る気満々なんですけど…まぁそれが俺たちの仕事なんだけど…

「他に質問は?」

「ここまでの戦闘で弾薬の残量が少なくなっています。補給等のアテはあるのですか?」

PM2の質問にゲーデは柔かに笑って答えた。

「この先の谷間にある小さな集落まで補給物資を運んで来てある。心配するな、もし敵が来てもそう簡単にバレないように隠してある。」

「よーし、ゲーデに索敵やらして移動開始。」「谷間かよ~下山ダリ~。」

隊長、それは無茶じゃ無いですか。いくら恨み有るからって一番危険な仕事任せるとか何考えてんの!

「あぁ良いよ、索敵得意だし、上から道案内も頼まれてるし。」

あっさり引き受けるんだ…隊長に引けを取らない自由人だな~この人。

俺たちは土と岩に覆われた殺風景な戦場をまた歩き出した。


軍曹の思い出話2

昨晩の話の続きを少し思い出した、俺と同じ訓練を受けたのは俺を含めて男が3人女が1人、そのうち男が一人RPG-7の爆風を直撃してバラバラ、後の3人は未だ消息不明、女の方は、蛇みたいな性格と戦い方をする正確悪い奴だった事しか今は思い出せない。この国の民族解放、独立の為に戦った最強の少年兵部隊も俺の中から色褪せて行く。

俺自身国を独立させる為に戦って、あれから19年、今は国を守るために軍隊やって、A民主主義国と手を組んでる反政府軍とも殺りあって、この混乱状態の戦場を生きて帰れるかね~

あっそうだ、ついでにゲーデについて少し解説しておこう。ゲーデとは南米ハイチ周辺の民間伝承に登場する燕尾服と山高帽を着た死地への案内人、すなわち死神、今俺たちの案内やってるコイツも仕事の時は大概燕尾服を着て、俺たちみたいな少数精鋭部隊に極高何度で高死亡率の秘密指令を伝達、案内、と真面目に仕事をやていて付いたアダ名がゲーデという訳だ。


「もう少しで目的地に着くぞ、間隔を広めに取って移動する。」

ゲーデの先導は完全にPMのソレだった、どうやら元軍人と言うのは本当らしい。

「おーし、PMの2人も前に出ろ、3トップで視野広く保て、集洛からの奇襲を警戒しろ。」

「うっす」

PMの3人が警戒しながら約50m進み個別に潜伏、集合地点の確保、そして確保後に中盤のRM3人と隊長、副隊長の5人がそれぞれPMの所まで移動して待機しながら前後の警戒、最後にSSと俺が集合地点に移動するのと同時にPMが新たな集合地点の確保の為に移動を開始する……張り切って進軍と下山した割に集洛からの反撃は無し、と言いますか完全に無人の廃屋が建ち陳ぶだけの寂れた所だった。

「SSの2人は周囲の警戒、しばらくしたらPMと交代してくれ。」

油断ない副隊長の警戒指示に「うーい」とダルそうに返事しながら警戒のために周囲の建物の屋根の上に登って行った。

「こっちだ、ついて来てくれ。」

ゲーデの手招きに隊員たちが続いて一応警戒しながら進んでいく。と言っても案外近くにあるレンガ作りの廃屋の一階部分に一台のピックアップトラックが乱暴に駐車してあった。

「お~い、集まれよ。死神ゲーデからのささやかなプレゼントだ。」

すっかりアダ名が板に付いている案内人ですな~

「おぉ~お前いい仕事するな~。」

軍曹がピックアップトラックの荷台に近寄りながらゲーデの下準備について素直な感想を口にする。

「戦闘食にサバイバルキット、予備のマガジンと5.56mmNAOTO弾、カールグスタフM2と弾頭、その他諸々の消耗品、あっ電気信管に送電ケーブルまであるじゃん。」

軍曹が新しい遊び道具を見つけた子供のように目を輝かしながらプレゼントを物色していく。

「これで後はスタンガンとC4かクレイモアでも有れば完璧なんだけどな~」

周囲の警戒のために外にいるSS以外の隊員達もトラックに近づいて個別に必要な物を補給していく、俺も取り敢えずM249の弾薬を補充と何時もより多めに持っていくことにする。

「PMの2人、お前らは多めにグレネード持っていけ、後ワイヤーセットな、RMの3人は他の隊員より食料と水を少し多く持っていけ、PMとSSの荷重負担を少しでも軽くしたい。」「C4みーっけ。」「クレイモアもあったぞー。」

いつも道理副隊長が指示を出しながら自身も物色に加わる。

「SM、お前はバックパックにコレ入れとけ。」

ほれ、と副隊長が左手に痛み止めと抗生物質の注射を射ってた俺に向かって1枚の半透明なプレートを差し出してきた…一応上官命令なので仕方なく受け取ってバックパックの内側から入れてみる、あっ結構ピッタリはまった。

「副隊長、お前はカールグスタフの弾頭運んでくれ、ゲーデが砲手やれ、お前らは今から砲撃組な。」

「了解。」

「いいよ。」

隊長の指示にいつの間にか燕尾服から俺たちと同じ乾燥地用山岳迷彩に着替えて壁際でMP5のマガジンに弾込めしていたゲーデが顔を上げて軽い調子で返事をする。

「他はいつも通りの隊列で行くから皆さんソコのところよろしくね~。」

真面目な話から一転ダルそうな口調に戻った隊長はノンビリとした動きで廃屋の外へ出て行った。そしてよく晴れた昼下がりの空を眺めて何か考え事をしているかの様に棒立ちになって紙巻タバコに火を付ける。その横を警戒交代のためにPMの2人が通り過ぎたのを隊長は気づいたのだろうか?


一通り装備確認が出来た頃、SSと交代して警戒に出ていたPMから無線に着信があった。

「こちらPM2、隊長、招待状出した覚がえないのにお客さんがこっち向かって進軍して来てますよ。」

「何人ぐらい来そう?」

「3個中隊ぐらいですかね、A国所属の部隊のようです。迎撃しますか?」

「いや、集洛の中に入れてくれ、相手が狭いところにいる方が面倒見やすい。」

「と言いますと、伏擊からの挟撃ですな。」

最後のは、RM3が横から口出ししたのだ、続いて副隊長

「なら、不要な物資を有効活用しよう。」

その時、SS2の目がマジになった。

「隊長、副隊長、この伏擊、私に作戦の提示をさせて下さい。」

SS2が自分から口を開いた、俺が知る限り初めてのことじゃ無いのか。

「いいだろう、伏擊と嫌がらせについてお前は天才的だからな。」

え、この人そんな人なの?

「SS2より全員に通達、まずは、余った物資の置いている廃屋を破壊出来るように爆発物を配置してくれ、物資の中に送電ケーブル、電気信管があったろ、カールグスタフのHAET‐551弾頭でIED作ろう。後は発電機が有れば良いのだけど…」「C4もあるぞ。」

「スタンガンで良ければ俺が持ってるぞ。」

「ほれ」とゲーデが腰のポーチから軍用のスタンガンを取り出した。

「ソレ借りるぞ。」「おいおいコレは拷問用なのに。」

SS2がゲーデの腰からスタンガンを引っ手繰りながら続きの指示を出す。反論は勿論無視。

「RMの3人でC4を敵の車両通過予想位置周辺に仕掛けろ、IEDと少量のC4で廃屋を飛ばす、極力見付からない様に隠せよ、信管経由でケーブルに接続しとけ、ケーブルは廃屋の裏手に集めろ、そこでケーブルを1つに纏めてスタンガンで適正電圧を加える。」「クレイモアはどうする?」「勿論ありったけ使う、これも電気信管で有線接続して空き地の周囲に隠しとけ。」

余り物を餌に敵を爆撃するとかホントタチ悪い人だな…

「SMもて伝え、手順道理ピックアップトラックの燃料タンクにC4取り付けろ。」

「えげつない。」

「何か言ったか?」

やべっ、つい心の声が…

「いえ、何でもないです。」

SS2は「あっそ」と言った風に顔を背けながら「炸薬の方は少なめでいい、タンクを破壊、引火出来るだけの量が有れば十分だ。」とも付け加えた。

取り敢えず俺は、バックパックを降ろして狭いトラックの下に潜り込んで、指定された作業に取り掛かった。流石に狭いだけあって単純作業なのに無駄に苦戦しながらC4の設置を終えてトラックの下から這い出した時には既に他の隊員達の姿が無かった。

「SM、聞こえるか?もう少しでお客様が到着するからさっさとお迎えの位置に着け。」

「あ…はい。」

無線から聞こえてくるSS2の声に反射敵に返事してしまう。そう言えばさっきから車両のエンジン音がハッキリ聞こえてくる。

「裏口から出て安全な所まで離れた建物の屋根に上れ、お客様はスグそこだぞ。」

俺は足元に置いていたバックパックとM249を拾い、走りながら背負いM249のスリングも左肩から斜め掛けにする。裏口から出るときに元々この建物の構成物と思われる日干しレンガに躓いて足が縺れたが、どうにか転けずに次の一歩を踏み出すことが出来た。

俺が指定された場所に到着したのと最初の客人が例の廃屋の前にあるちょっとした空き地に車両を停めたのはほぼ同時だった、急いで伏射姿勢を取りM249の低倍率スコープを右目で覗き込み状況を目視で確認する。敵の車両は…明らかに定員オーバーのテクニカルトラックが12台、その内高射砲装備が6台、2台が122mm野戦砲を牽引、残りがブロウニングM2装備の軽量型、テクニカルだけで100人弱、大型トラックが3台、これは兵員と物資の輸送用だな、弾薬と食料、歩兵をテンコ盛りにしている、60人ぐらいかな?最後に…これが一番危険度が高いな、南アフリカ製の歩兵戦闘車-ラーテル60、主力装備は60mm後装式迫撃砲、手早く排除しないとガチでヤバイな。

「お客さんがお店の商品に気付いたようだ。」

俺の位置からは確認出来ないが、無線からの情報に依ると車両から降りた数人が例の廃屋に入って行ったらしい。

「SS2、歓迎の花火だ、盛大に上げろ。」「ゲーデと副隊長はカールグスタフでラーテル狙え、アレがマトモに動いたらマズイ。」

隊長と軍曹の声が無線越しに聞こえてくる、

「了解、任せてくれ。」

俺から見て右手の方向、建物の屋根から小さい噴煙が上がる。

そしてまず、カールグスタフのHEAT‐551弾がラーテルの右斜め上方に命中、装甲貫徹力400mmの弾頭が20mmしかないラーテルの内部に潜り込み炸裂、そして立て続けにトラップの爆音、最初の一発で廃屋の一階部分が崩れ落ちる、当然中に入っていた数人は当然爆死だろう、スコープのレンズ越しに突然の爆発に混乱する敵がようやく態勢を立て直した頃にもう一発、この音の感じはクレイモアだな、M4電気信管と発火用ワイヤーリールで継れ有線式になったクレイモアをPM1近距離からが起爆させたのだ、そして空き地を囲むように多数配置されたソレから放たれた1つ当たり700個の鉄球が容赦なく敵の肉体と武装、車両を抉りとる、その中の運の強い鉄球がトラックやテクニカルの燃料タンクに食い込む、そして引火、ガソリンの爆発が砂塵や鉄塊と共に客人の魂も巻き上げていく。

「全員、まだ撃つなよ。」

「了解。」

隊長の指示に少し疑問が残る、爆発で巻き上げられた砂塵で視界が悪くなっているが今敵を叩くのが最上の策ではないのか?

「SSの2人、この砂塵の中でも狙撃が可能か?」

軍曹の問いに「精度は落ちますがこの距離なら当てる事は出来ます。」と2つの声が重なる。

「よし、出来るだけ戦力削れ。」

「了解です。」

俺の目では砂塵の中の人影を見つけることは出来無い。だが銃声が一発する事に既に爆発で半減かそれ以上の被害を受けて散り散りに反撃してくる敵軍から確実に命が消えているのが手に取るように分かる…約200mの狙撃にしては近距離だが悪条件の中、狙撃手はここまで正確な狙撃が出来るモノなのだろうか。いや、彼等なら可能だろう歩兵として一人当たり敵の撃破数が最大の兵種、しかも、煙幕内での射撃訓練経験のある彼等なら不可能では無いだろう。反撃を試みて敵が1人射撃をすると1つの命が死神達によって刈り取られていく……射撃の度に?あぁマズルフラッシュか、砂塵の中で僅かに光る極小の光の粒から敵の居場所を特定して弾く。単純だが高レベル戦闘技術だ。死神から逃れて路地に逃れても包囲している友軍が確実に刈り取る。15分経過幕引きだ。

「終了です。」

「多方の脅威は排除しました。」

「よし、ゲーデとSS以外は敵の制圧に当たれ。」「うーす。」「重いからバックパックは置いといていいぞ。」

俺も近くに居た少尉と合流して制圧確認のために例のトラップエリアに足を踏み入れた。そして、徐々に風に流されて薄れていく砂塵の中に浮かんだ地獄を俺は目にすることになった。ソコには砂と鉄の上に黒々とした血が染み込み、血の匂いよりも濃い死の香が立ち込めていた。

「おい、まだ生き残りが居るかもしれないから気抜くな。」

少尉の声にハッと我に返る、慌てて周りを見回して索敵をする。少尉の肩越しに何か動くモノが見えた、次の瞬間にはソレが勢い良く少尉の背中に向かって走しり込み、歪な形状をした鈍器を振り上げた、俺は少尉が邪魔で迎撃出来無い、だが異変を察した少尉は回れ右の要領で反転しながら自分のスカーLのストックを攻撃者の右脇に叩き込む、人体が

軋む不快な音が響く、この打撃で敵が怯んだ隙に振り抜いたスカーを引き戻して右足で踏み込みながら体重の乗ったストックでの突き降ろしを胸骨の上部に押し込む様に打つ、今の打撃音では確実に粉砕骨折だろう。少尉は手早く左肩に装備している多目的シースナイフを抜いて足元で胸を押さえて藻掻いている敵に向かって投げる、でも何故わざわざスロウイングナイフで止めを?

「これからも激戦が続く事になる、消費する弾丸は少ない方がいい。」

「あぁそれでですか。」

少尉は敵の腹部に深々と刺さったナイフを抜いて敵のズボンの裾で血痕を拭ってさやに戻す。

「制圧を続けるぞ。」

「はい。」

作業のために歩き出す前に足元にある鈍器のような物を再度確認してみる、おそらく機関部の破壊されたFALのウッドストックだろう、壊れた武器を振り翳してまで戦うだけの理由が彼にはあったのだろうか?今の俺には理解出来無い事だ。

「こいつらはA国の武装工作員だろうな、この廃墟は国境線沿いだが、まだウチの領土内だ、しかもこの谷を抜けたら直ぐにA国領内に入れる。大軍を通すのは地形上難しいが、山岳兵の拠点にするなら申し分無い所だ。」

「敵より少し早く到着出来たのが幸いでしたね、ここに防衛施設でも作られたら厄介ですから。」

「子供の頃の「駆けっこ」に勝った時みたいな気持ちだな。」

「言えてます。」

と、制圧中にも聞こえてくる冗談混じりの会話は軍曹とRM3だろうか?こんな会話聞いてたらヤル気無くすわ~。

「粗方掃除が終わったな。」

無線から隊長の声、続いてSS2

「スコープ越しでも生存者は確認出来ません。我々の完勝です。」

「全員集合、場所は集洛のA国側だ。」「「「うーす。」」」

また移動かよ、取り敢えず荷物の回収のために一旦戻るために少尉と共に踵を返した。


集合後、ブリーフィング

「これから谷を抜けて12000m先にあるA国空軍基地に向かいコレを制圧する。コレにより友軍がこの地区の制空権を確率し、後の作戦の足掛かりになる。」

ゲーデさん、今まで散々無茶殺ってきたけど、1分隊で空軍基地落とせとか無理だろ。左手の包帯を取り替えながら視線での抗議を試みる。

「空軍基地なら陸軍基地よりマシだな。」

少尉の思考は楽観的過ぎるだろ、危機感認識用のプログラムに欠損でもあるんじゃないか?

「なお、現在地と目的地の間にA陸軍の機甲師団の駐屯地が在る様だ、コレとの戦闘予定は無い。敵の索敵網を回避しながら進軍、師団の裏手に回って空軍基地に向かう。」

「隠密作戦だな。」

あの~質問いいですか。

「なんだ。」

「作戦中、または作戦終了後空軍基地の援軍に機甲師団が援軍に来るのでは?そちらの対応も検討しなくてはならないかと思います。」

「それについては問題ない、我々が空軍基地の攻撃を開始したのと同時刻に自国空軍が動く、機甲師団が援軍のために防衛用の駐屯地から何もない平地に出たところをTu‐22M爆撃機とAH‐2戦闘ヘリで駆逐する。どちらも他国のお下がり品だがないよりマシだろう?既に日取りと時間も指定されている今から約50時間後だ。」

「金のない小国は苦労するな。」

今度はPM1が口を挟む。

「これって俺らが囮に成るってことだよな?」

「わざわざ嫌なこと言わないで下さいよ。」

頼むから。とRM3が気難しい顔をする。

ちなみに、俺たちが装備している兵器の殆どがベルギーのFN社が宣伝用にと格安で提供してくれた最新装備や、在庫処理の為に放出した旧式や不評品を使っている。


「ブリーフィング終了、目的地に着くまで発砲は控えろ。状況開始。」

本来隊長のセリフを副隊長が横取りして進軍開始。

谷底を進軍するのは危険と言うことで山腹を進む、日差しが強い割には気温の上がらない高地を延々と歩き続ける。こんな事していると趣味で登山しているヤツの気が知れなくなる。背中の荷物が殺しの道具じゃなければ少しは楽になれるのかもしれない。どうでも良い事を考えながら歩き続ける。


19:00

日が沈んで肌寒くなって来た頃に副隊長が口を開いた。

「この辺はシベリアオオカミの生息地に程近い、奴等は人を襲うことは少ないが念のため夜間も交代で見張りに立つ必要がある、少し早いがここで野営にしよう。」

続いて軍曹が岩陰に腰を下ろしながら指示する。

「SSの2人は最初の見張りをやってくれ。2時間後に適当なやつ2人起こして交代させろ。」

俺も手近な岩陰に移動してバックパックから厚手のジャンバーを取り出して着込む、そして、手元が完全に見えなくなる前に左手の容態の確認とマズイ食事を済ませる。


「起きろ、次はお前の番だ。」

低く囁くような声と肩を揺すられる感覚で俺は目を覚ました。冷たい岩にもたれて寝ていたので体の節々が痛む。時計の針は1:03を指していた、どうやら4組目らしい。

「おはよう、寝心地はどうだった?」

RM3が俺の隣に腰を下ろしながら聞いてくる。

「実現不可能な世界平和を本気で願うぐらい劣悪でしたよ。」

軍人にあるまじき発言と悪態を付きながら場所を開けると、RM3は笑ってこう返してきた。

「確かにな、この国のお偉いさんは社会福祉の充実より対局の事に金をつぎ込んでやがる。」

「{政治家は子供の教育より戦争が好きだ。}どこかで聞いたことがあります。」

「それは去年の新聞記事じゃないか?国費の内訳について記者が書いたジョークだろ。」

「よく覚えていますね。」

素直に感心すると、「記憶力はいいんだよ」と言って寝てしまった。取り敢えず今夜の仕事仲間の所に行ってみる。

「よく寝れたか?」

「お陰さまで腰を痛めました。」

社交辞令の様なやり取りの後、少尉は胸ポケットからアルミ製の容器を取り出した、そしてその容器から自分の手の甲に粉末状の物を出して「お前も要るか?」と差し出してきた。「結構です。」得体の知れないものは受け取る気になれない

少尉は、「そか。」と言ってその粉末を鼻から吸い込む。

「それ、何ですか?」

2時間黙っとくのも退屈なので話しかけてみる。

「嗅ぎタバコだ。知らないのか?」

「粉末だからコカインとかヘロインみたいな物かと思いましたよ。」

「流石にこの国でもそれは違法だろ。」

冗談混じりの会話もスラリと流された。次に何を言おうか迷っているうちに少尉が唐突に口を開いた。

「俺も元々はヘビースモーカーだったんだけどな、2年前に結婚してからコレに切り替えたんだ。煙が出ないから周りにソコまで迷惑掛からないだろ。」

「そうですね、俺もアノ煙は好きじゃ無いですから。」

「ソレが非喫煙者の反応だろうな。」

夜空を見上げながら話す少尉の横顔は少し淋しげに見えた。ついでなのでもう少し聞いてみる。

「少尉は何故戦うのですか?」

「記者みたいな事聞くんだな。」

例のアルミ容器を胸ポケットに押し込みながら誂う様な口調で返してきた。

「興味本意なので、気に障る様ならいいです。」

少尉は少しの沈黙の後にこう言った。

「戦わせたくないからかな。」

と、言いますと?

「俺らの世代でこの闘争を終わらせたい。」

その為に進んで前線に?俺の質問に少尉は肩に掛けたスカーLを掲げてこう言った。

「殺す事しか出来無い道具持たされて国を守れとか言われてもな~、だからせめて俺の身内(国)を脅かす奴らは駆逐したいんだよ。」

何かの復讐心からですか?

「おいおい、そんなに他人の心境とか分析するな。女に嫌われるぞ。」

「少尉は男だと聞いていますよ。」

「お前冗談通じないな~。」

流石に呆れられた、当然の気もするけど。会話が途切れた手持ち無沙汰に夜空を見上げてみる。ソコには高山ならではの澄んだ大気と砂金の様に輝く星空が見えた。



「時間だ、次は隊長とゲーデでも起こそうか。」

「はい。」

俺はゲーデの肩を揺すりながら「交代です。」と言った。

「ご苦労さん。」

ゲーデは立ち上がりながらそう言って、一回背伸びした後に空を見上げて「綺麗なモンだな。」と呟いた。




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