学校案内Ⅱ
放課後、渋々咲々宮に学校案内をする私。
講堂。
「ここは、講堂。全校集会とかみんなが集まって話をするときに使う場所。」
「へぇー。なんか作りが凝ってるなぁ。」
「そう…ね。無駄に金を使ってるって感じ。」
「それ、俺も思った。」
「あんたと意見が合うなんて…。不吉だね。」
「おい、こら。俺は不幸の塊じゃねぇよ。やめろ、そういうの。」
「私にとって、イケメンはいつだって不幸しか運んできてくれないわ。」
「……ご愁傷さま?」
「誰も死んでないわよ。」
体育館。
「体育館。」
「それだけ?」
「それ以上言いようがないわ。」
「まぁ、そうだけどさ。」
「昼休憩は自由に使っても大丈夫よ。」
「へぇ。分かった。」
これが最後。
このゲームのなかで、一番重要な場所。
恋の始まりと、その恋の決着がつく場所。
校舎の隅にある古い時計塔。
「ここが、時計塔。」
「へぇ。古いな。」
咲々宮は、時計塔を見上げながら呟く。
視界の隅に次の行動の指示が出る。
いつもは無視していたけど、まぁいいか。
私は、指示通りに話始める。
「この時計塔にまつわる話、知ってる?」
「え、そんなのあるの?知らねぇ。」
咲々宮の視線を感じる。
気づかない振りをしながら、一歩前へ出て時計塔を見上げた。
「昔、ここは女学校だったらしいの。そこの生徒がね、先生に恋をしたの。でも、その生徒には許嫁がいて。それに、二人は先生と生徒で。誰もがその恋が実るはずがないと思った。だけど…。」
「だけど…?」
「色々な偶然が重なって、見事その恋は実った。でね、その恋の始まりと生徒が先生に告白した場所がこの時計塔の前だったの。だから、この場所で告白すると恋が叶う。…なんていう話とありきたりなジンクス。」
「ふぅん…。」
興味なさそうな相づち。
そのまま、無言で時計塔を見つめる。
「なぁ。」
「なに?」
突然、話しかけられた。
つい、咲々宮の方を見てしまう。
「気づいていると思うけど。俺、お前と同じ転生者なんだよね。」
「それで…?」
頭痛に苛まれながら、目をそらせない。
まるで、魔法にかかったようだ。
「俺、お前のこと知ってる気がするんだ。お前の前世の名前は夕崎真菜、だろ?俺の前世の名前は、」
「逢河透。」
自然と口からその名前がこぼれ出た。
逢河透。
中学から一緒で何かにつけて勝負を仕掛けてきていたやつ。
イケメンだから関わりたくないって思いながらも、いつも彼の言葉にのせられて勝負を受けていた。
思えば、こいつのせいで保健室へいく回数が増えた気がする。
「やっぱり、真菜だったんだ。」
咲々宮が嬉しそうに笑う。
私は、我にかえって目をそらした。
ぎ、ギリギリセーフ。
頭はいたいけど、倒れるほどではない。
「なんで、わかったの?」
「んー、直感?見た瞬間もしかしてって思って…。」
「だから、昼休憩きたのね?確認しに。」
「あぁ。んで、確信して放課後にからかいにまたいった。」
「…最低。」
睨み付けてやりたかったけど、生憎見ることができない。
見たら、気を失うだろう。
隣から、笑い声が聞こえる。
殴りたい衝動をおさえ、問いかける。
「私とあんたは前世で知り合いだった。それで?」
「別に。確認したかっただけ。」
「あっそ。」
「ただ、主人公をやめるという目的は阻止させてもらう。」
「はぁ!?」
咲々宮の言葉に、驚き咲々宮を見てしまった。
あ、やば…。
そう思ったが最後、私は意識を失った。
あーあ、最近特に簡単に意識を失ってる。
体が弱ってるのかな…?
ぼんやりとそう思った。
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