学校案内Ⅰ
今回はほとんど、会話文です。
本編が始まって一週間がたった。
転校生、咲々宮冬夜が俺とのイベントをさっさとやれといいに来る以外は平和だ。
最近の悩みは、咲々宮冬夜が私をからかうためかよく突っかかってくる。
正直、うざい。
そんなに、私の苦しむ姿が見たいかあの野郎。
このドS。本性出すの早すぎんだよ。
昼休憩や放課後に楽しそうに近づいてくるな。
とにかく、最近の私は内心穏やかではいられなかった。
そして、今日放課後。
遂に、私の方がおれてイベントの学校案内をすることになった。
…二人きりで。
彩月は運悪く用事があって仕方なく。
私が絶望にうちひしがれている時の咲々宮の笑い声は忘れない。
あの美形の顔を思いっきり殴ろうかと思った。
そんなことやったら、私もダメージ食らうけどね。
イケメンの顔をバッチリ見てしまうわけですから。
まぁ、そんなこんなで嫌々案内することになった。
…あーあ、いつになったら主人公をやめられるやら。
* * *
食堂。
「あー、ここが食堂。日替わりAセットが一番人気。」
「お前のイチオシは?」
「え?うーん。…君にオススメなのはこの日替わりBセット!」
「どう見ても他のより高いだろーが!!」
「デモ、ホカノヨリモオイシーヨー。」
「嘘つけ。棒読みで信用性ゼロだよ。」
「む…。しゃーない。これはどうかな?」
「なになに?大盛りどんぶりうどんセット…?…炭水化物ばっかじゃねーか!!体に悪いわ!」
「じゃあ、これ。」
「レディースセットって女しか無理だから!俺、男だから!」
「これは?」
「肉ばっかいらねーよ!!真面目にしろ!」
保健室。
「ここ保健室。ナイスバディーな先生、アンナ先生が主に男をマッテルヨー。」
「…男じゃなかったっけ。保健室の先生。」
「うん。よく知ってるね。安井靖先生。正真正銘♂。心は♀。つまり、オカマ。」
「お世話になりたくねー。」
「イケメンだったら、診察という名目で襲われるよ間違いなく。」
「調子が悪くても絶対来たくねぇな!!」
第二理科室。
「滅多に使われない第二理科室。」
「案内する意味なくね?」
「いやいや。滅多に人が来ないのに鍵が常に開いている教室だよ?咲々宮は知っといた方がいいでしょ?」
「…………。」
「男女の営みが頻繁に行われる場所で有名だよ?ここからは常に女子のあえぎ声がーーー。」
「俺の顔を見る覚悟はあるか?」
「ぎゃぁぁぁぁぁ!?イケメンの顔なんてみたくない!!ごめんなさい!ふざけすぎました!謝るから頭を押さえる手を離して!私、死んじゃう!」
「……ふん。お前が俺をからかうなんざ、百年早いわ。」
職員室。
「ここが、職員室。ここの学園、残念なイケメン美少女が多いのよね。先生が特に当てはまる。」
「ふぅーん。なんで?」
「さあ?知らない。知ってても教えるわけないでしょ。あんたなんかに。」
「…あっそ。いちいち腹立つなぁお前。
…で、残念なイケメンは大丈夫なわけ?」
「え?あーたぶん。残念だなって思うとイケメンだって意識しなくなるんだよねー。」
「へぇー。お前の体質変なの。」
「うるさい。」
図書室。
「ここ、図書室。色々な本がおいてあるの。」
「ふぅん。どーでもいー。俺、本なんか興味ねぇし。」
「咲々宮のイベント、最初らへんはほとんど図書室なんですけど?」
「知らねぇよ。俺、本読んでたらいつの間にか寝てるタチだし。」
「……キャラ崩壊してるじゃん。」
「お前だけには言われたくない。」
絶対に咲々宮の顔を見ないように気を付けながら、学校案内をして行く。
一週間溜まりにたまった恨みを晴らすかのように喧嘩腰で話してみたりしながら歩いていく。
さらっと流してはいけないような話題も早くこいつとおさらばしたいためスルー。
あともう少しで終わる。
だから、あともう少しの我慢。
もう一話、続きます。