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Cherry blossoms

作者: 紫苑 奏

初めて会った時のことだった。


『奇麗ですね。桜……よく言うじゃないですか、

桜の下には死体が埋まっているって……

こんなに奇麗なんだもの、もしそれが本当なら、

この木の下に埋められているのはきっと美しい人でしょうね』


八笑(やえ)が、私にそう言ったのは。

不思議な子だな……そうも思いはしたが初対面の人に意見するのも面倒に思えたので、

私は、深く考えず「そうですね」と、答えた。


その後、

八笑とは、偶然席が隣になったことも関係し、すぐに仲良くなり、そうして出会いのことなど忘れてしまっていたのだが、今回の騒動のこともあり、ふと。思い出したのだ。



高校に入学して4度目の春を迎えようとしたときだった。

私の友人である、斎藤八笑(さいとうや え)が自宅の桜の木の下で自殺した。


他の住宅からは少し離れたところにある一軒家には誰も訪れることはなく、

当然第一発見者は、八笑の唯一の友人である私だった。

早咲き桜の木の下で、彼女の桃色のほおと、白いワンピースに染みる赤が、

まるで桜の花びらのようだった。


家具は全て処分され、それが計画的な自殺であることはおのずと知れた。

ただ二つだけ、

桜材でできたテーブルと、その上に乗った白い紙、一枚だけが残されていた、


もっともそれを遺書と呼んでよいのかは定かではないけれど。


それには私に向けられた言葉など存在せず、

それどころか、自分自身のことさえも書かれてはいなかった。

ただ白い紙の真ん中に、「木の下には母が埋まっている。私が殺した」とだけ書かれていた。

その言葉通り、桜の下には女性の死体が埋まっていた。

けれど、何年も前のもので、すでに風化が始まり、何の証拠も残っておらず、

それが他殺であるのか、自殺であるのか、はたまた事故か、病気かそれは分からなかった。


父親は今だ行方不明で、何時からいないのか、生きているのか、死んでいるのかも分からないということは、ニュースで知ったことだ。


数字の8に笑うと書いて八笑。八笑はその名の通り良く笑う子だった。

けれど彼女のまとう不思議な雰囲気のためか友人はできず、

学校ではいつも私と行動を共にしていた。

周りの人間から見れば間違いなく仲の良い友人同士に見えただろう。


だが、今思えば、実のところはどうだったのか、私自身も、良く分からなくなってしまっていた。


なぜなら、自ら命をったった八笑も、母親を殺したかもしれない八笑も、

私の知る八笑とは全く違う人物だったからだ。


『ねぇ、奏。。。幸せってなんだと思う?

―――私はね、毎日、奏に「おはよう」って言うの。。。それが、たまらなく幸せ。』


作者短編しか書けません……


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