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村を早く起こしすぎた雄鶏

スイスの小さな山あいの村に、フェルディナントという雄鶏がいた。

飼い主は、年老いたマルタだった。

フェルディナントは、立派な雄鶏だった。

大きな赤いとさか。

弓なりに広がる尾羽。

張った胸。

そして、これから重要な会議を開こうとしている者のような姿勢。

何よりも、朝というものを非常に真剣に考えていた。

毎朝、五時四十五分になると目を覚ました。

止まり木から降りた。

納屋を出た。

そして屋根へ上がった。

すぐには鳴かなかった。

まず待った。

山の向こうに最初の淡い光が現れるのを見た。

村の家々の窓が、少しずつ明るくなるのを見た。

それから役場の時計にも目をやった。

長針が、ゆっくり十二へ近づいていく。

そして、きっかり六時。

フェルディナントは首を伸ばし、くちばしを高く上げた。

「コケコッコー!」

少なくとも、人間にはそう聞こえた。

フェルディナントとしては、もっと正式なことを告げているつもりらしかった。

皆さま。

新しい一日を、ただいま正式に開始いたします。

村人たちは、時計よりフェルディナントを信用していた。

パン屋のハインリヒは、最初の一声を聞くと生地をこね始めた。

羊飼いのヨーゼフは、二声目のあとで羊小屋の門を開けた。

銀行家のヴィルヘルムは、たいてい三声目でようやくベッドから出た。

最初の二回は、あくまで事前通知だと考えていたからだった。

フェルディナントは職務に忠実だった。

霧の濃い朝には、いつも以上に胸を張った。

姿勢を正しくしていれば、村が朝の中へ迷わず入っていけるとでもいうように。

雪の日には、屋根へ上がる前に足についた雪を丁寧に振り落とした。

雨の日には、その雨もあらかじめ朝の予定表へ正式に組み込まれている、という態度を崩さなかった。

どんな天気でも、朝は時間どおりに始まった。

ところがある午後、一人の行商人が村へやってきた。

二十個の最新式目覚まし時計を持っていた。

どれもよくできていた。

表示は正確。

音量は調整できる。

音楽も選べる。

目覚まし音は五種類。

行商人は広場で宣伝した。

「どんな雄鶏より正確ですよ!」

村人たちが集まってきた。

ハインリヒは、小さな鈴の音で起こしてくれる時計を選んだ。

学校教師のサムエルは、小鳥のさえずりが流れるものを選んだ。

一日の始まりに自然への理解を深めるのは、教育上よいことだと考えたからだった。

ヴィルヘルムは、いちばん高価な機種を買った。

毎朝、低く落ち着いた声で、

「時は金なり」

と告げる目覚まし時計だった。

ヴィルヘルムは、それを七時に設定した。

「そのほうが、少し多く持てるからな」

マルタも時計をいくつか見たが、何も買わなかった。

「うちにはフェルディナントがいるからね」

行商人は笑った。

「昔ながらのものにも味はあります。でも、進歩は止められませんから」

そのときフェルディナントは、広場の噴水の縁にいた。

村人たちが新しい目覚まし時計を抱えて帰っていくのを見ていた。

それから首を回し、納屋の屋根を見た。

屋根は、いつもどおりそこにあった。

フェルディナントは、なぜかしばらくじっと見つめていた。

翌朝。

村じゅうで、驚くほど多くの音がいっせいに鳴り始めた。

ある時計は笛を吹いた。

別の時計は行進曲を演奏した。

ハインリヒの鈴は、あまりにも陽気に鳴ったので、彼は時計を小麦粉の袋の下へ押し込んだ。

別の家からは、海の波の音が聞こえた。

海は村から何百キロも離れていたので、その時刻くらい静かにしていたかったのではないかと思われた。

サムエルの部屋では、電子音の小鳥たちがさえずり始めた。

窓辺にいた本物の小鳥が何羽か鳴くのをやめた。

耳を澄ました。

そして飛んでいった。

ヴィルヘルムの寝室では、厳かな声が告げた。

「時は金なり」

ヴィルヘルムは毛布を頭までかぶった。

「今日は節約する」

六時。

フェルディナントは、いつもどおり納屋の屋根に立っていた。

空は明るくなり始めていた。

いくつかの窓には、もう朝の光が映っていた。

役場の時計の長針が十二へ届いた。

何も間違っていなかった。

フェルディナントは胸を張った。

「コケコッコー!」

しかし村では、鈴が鳴り、行進曲が流れ、機械の小鳥が歌い、存在しない海の波が打ち寄せていた。

誰もフェルディナントを見なかった。

誰も彼の声を気に留めなかった。

フェルディナントは、しばらく屋根に立ったままだった。

自分の仕事は、きちんとした。

ただ、村のほうが聞かなかった。

宿屋の前では、行商人が朝食を食べていた。

家々から聞こえてくる騒がしい音を聞き、満足そうにうなずいた。

「技術ですよ」

彼は言った。

「進歩は止められません」

フェルディナントは行商人を見た。

長いあいだ。

まったく動かずに。

雄鶏なので、それ以外に反対意見を表明する方法はなかった。

その意見表明は、ほとんど昼まで続いた。

その夜、フェルディナントはあまりよく眠れなかった。

止まり木の上で、ときどき片目を開けて暗い外を見た。

あの新しい機械たちは、自分を待たずに鳴れる。

六時より早く鳴るようにもできる。

もし自分が朝を告げる前に、みんながもう起きているのなら。

自分が屋根に上がる意味は、どこにあるのだろう。

星が少しずつ薄くなり始めるころには、フェルディナントなりの結論が出ていた。

もっと早くすればいい。

ずっと早く。

そこで翌朝。

フェルディナントは五時四十五分には起きなかった。

四時に起きた。

屋根へ上がった。

山々は、星だらけの空を背に真っ黒だった。

明かりのついた窓は、一つもなかった。

フェルディナントは胸を張り、首を伸ばした。

「コケコッコー!」

いくつかの家に、ぱっと明かりがついた。

ハインリヒはベッドから飛び起きた。

急いでパン屋へ下りた。

窯に火を入れ、最初のパンを入れた。

それから窓の外を見た。

真っ暗だった。

「まだ夜じゃないか」

ヨーゼフは羊小屋の門を開けた。

羊たちは、いつものように外へ出た。

そして星を見上げた。

止まった。

ヨーゼフが先へ行くよう手を振った。

一頭も動かなかった。

羊たちは普段かなり多くのことに協力していたが、夜明け前の明らかな行政上の誤りにまで従うつもりはなかった。

ヴィルヘルムはフェルディナントの声を聞いた。

枕元の時計を見た。

そして反対側を向いた。

「時間だって、たまには間違う」

そうつぶやいて、また眠った。

フェルディナントは屋根に立っていた。

前より早く人を起こすことには成功した。

ただし、誰も特に喜んでいるようには見えなかった。

翌朝は三時半。

その次は二時十五分。

そしてさらにその次の夜。

フェルディナントは、ついにもう一段階早くすることにした。

きっかり真夜中。

村じゅうが眠っているなか、フェルディナントは納屋の屋根へ上がった。

役場の時計が十二回鳴った。

フェルディナントは姿勢を正した。

「コケコッコー!」

窓という窓が開いた。

どこかで犬が吠えた。

ハインリヒはボウルを落とした。

サムエルは寝間着姿のまま通りへ出てきた。

手には暦を持っていた。

いったい何日が始まったのか確認する必要があると思ったらしい。

まもなく、マルタの家の前に人だかりができた。

「お宅の雄鶏、とうとうおかしくなったぞ!」

ヴィルヘルムが言った。

マルタは納屋のほうを見た。

「おかしくなんかなってないよ」

「真夜中に朝だと叫んだんだぞ!」

「仕事を取られまいとしてるんだよ」

しばらく誰も何も言わなかった。

みんなでフェルディナントを見た。

屋根の上で、彼は少しうつむいていた。

いつものような立派さは、あまりなかった。

「じゃあ、クビにするつもりはないって言ってやってくれないか」

ハインリヒが言った。

マルタは腕を組んだ。

「自分たちで言いな。競争相手を買ってきたのは、あんたたちなんだから」

そこで村人たちは納屋へ向かった。

フェルディナントは中へ引っ込み、止まり木の上で入口に背を向けていた。

ハインリヒが一歩前へ出た。

「フェルディナント。ちょっと聞いてくれ」

フェルディナントは動かなかった。

「おまえは立派な雄鶏だ」

フェルディナントは翼の下の羽を一本、整え始めた。

サムエルが咳払いした。

「もちろん、目覚まし時計は便利です」

フェルディナントは、さらに壁のほうを向いた。

あまりに強く向いたので、どういう骨格ならそこまで向けるのか、少し不思議なくらいだった。

ヨーゼフが考えた。

「でも、目覚まし時計には、普通の朝といい朝の違いはわからない」

フェルディナントが、ほんの少し頭を上げた。

「狐が来ても教えてくれないしね」

マルタが言った。

「虫も食べない」

ハインリヒが付け加えた。

これは、それまで誰も考えていなかったが、かなり実用的な点だった。

ヴィルヘルムだけは黙っていた。

みんなが彼を見た。

ヴィルヘルムは上着を整えた。

「まあ」

ようやく言った。

「納屋の屋根の上に立たせた場合、目覚まし時計はそれほど堂々とは見えないだろう」

フェルディナントが、ゆっくりこちらを向いた。

ヴィルヘルムは急いで付け加えた。

「純粋に客観的な観察だ」

村人たちは顔を見合わせた。

やがて、誰かが簡単な試験をしてみようと言い出した。

翌朝、フェルディナントと目覚まし時計に、同じ仕事をしてもらう。

きっかり六時に村を起こす。

複雑な採点もなし。

委員会もなし。

予選もなし。

六時。

ただそれだけだった。

その晩、参加する家では目覚まし時計を慎重に合わせた。

時刻を確認した。

電池を確認した。

役場の時計とも合わせた。

ヴィルヘルムは電池を二度確認し、二度目の確認が実施されたことについて書面での確認を求めた。

それから村は眠りについた。

夜中。

山の向こうから雷雨がやってきた。

風が雨戸を揺らした。

雨が屋根を激しく打った。

谷の片側から反対側まで、雷の音が響いた。

村の端では、稲妻が送電線の近くへ落ちた。

明かりが何度かちらついた。

電圧が不安定になり、電子機器のいくつかがおかしくなった。

設定を失った時計もあった。

何事もなく動き続けたものもあった。

一台は完全に止まった。

一台は正午を表示し始めた。

別の一台は、前の木曜日の天気予報を夜通し何度も読み上げた。

電池式のものまで一つ故障した。

なぜなのかは、最後まで誰にもわからなかった。

ヴィルヘルムの高価な目覚まし時計は、長いあいだ黙っていた。

そして四時半になったころ、突然明かりがついた。

「時は、金かもしれません」

そう告げた。

それから自分で止まった。

明け方近くになると、雷雨は少しずつ遠ざかっていった。

雷鳴も谷の向こうへ消えていった。

雨は弱くなった。

山の向こう、雲の下に細い淡い光が現れた。

五時四十五分。

フェルディナントが目を開けた。

止まり木から降りた。

納屋を出た。

濡れた屋根へ、慎重に上がった。

空気には雨の匂いが残っていた。

羽の一枚に水滴がついていた。

フェルディナントは体をひと振りして、それを落とした。

そして待った。

山の上の空が少しずつ明るくなった。

いくつかの窓に、朝の気配が映り始めた。

雲がゆっくり切れていった。

フェルディナントは動かなかった。

首を伸ばした。

尾羽を高く弓なりに保った。

役場の時計の長針が、十二へ近づいていた。

そして、きっかり六時。

フェルディナントは翼を広げた。

「コケコッコー!」

一声だけだった。

はっきりしていた。

力強かった。

そして、正確だった。

声は広場を越えた。

屋根を越えた。

細い路地を通り抜けた。

橋のほうまで届いた。

ヴィルヘルムの寝室では、高価な目覚まし時計が突然光った。

「時は、必ずしも金ではありません」

そう告げた。

そしてまた黙った。

村が目を覚ました。

ハインリヒはパン屋へ下り、窯に火を入れた。

ヨーゼフは羊小屋の門を開けた。

サムエルはやかんを火にかけた。

マルタは窓を開け、納屋の屋根を見上げた。

そしてフェルディナントに、小さくうなずいた。

ヴィルヘルムは最初の一声でベッドから出た。

そのことは誰にも言わなかった。

その朝、少し遅くなってから、行商人が故障した目覚まし時計を一つ持って広場へやってきた。

表示を調べた。

それから、屋根の上で静かに羽を整えているフェルディナントを見た。

「なるほど」

行商人は認めた。

「自然にも、いくつか利点はあるようですね」

「もちろんさ」

マルタが言った。

「電池がいらないからね」

目覚まし時計は、その後も村に残った。

便利な道具だったからだ。

ハインリヒは、あまり熱心に鳴りすぎないかぎり、小さな鈴の音を気に入っていた。

サムエルも小鳥のさえずりを使い続けた。

ほかの家でも、行進曲や笛や海の波が朝になると鳴った。

ヴィルヘルムも、やがて時計を修理してもらった。

ただし、フェルディナントにも正式な役目が与えられた。

村議会は彼を、

一日の始まり担当主任

に任命した。

職務内容は、正式な文書にまとめられた。

村を起こすのは一度だけ。

六時より前に始めないこと。

ストライキ、および一日の開始時刻を無断で変更する行為は禁止。

雷雨の際は、フェルディナントが責任を持って対応すること。

村の書記が納屋までやってきて、規定を声に出して読み上げた。

フェルディナントは胸を張って聞いていた。

読み終えると、書記は止まり木のそばの小さな台に書類を置いた。

フェルディナントは身を乗り出した。

村の公印を調べた。

そして、ひとつつついた。

書記は、それを同意として記録した。

納屋には新しい看板が取り付けられた。

そこには、

公式朝開始サービス

責任者 フェルディナント

と書かれていた。

その下に、マルタが少し小さな字で付け足した。

苦情は朝食後に受け付けます。


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