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ものぐさ坊主の覚え書き ―戦国の村を眺めながら―  作者: てきてき@tekiteki


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13/14

元年 師走

雪が降った。


朝、寺の戸を開けると

境内が白くなっていた。


夜のうちに

静かに降ったらしい。


雪というものは

音を立てぬ。


だが

積もれば道を塞ぐ。


寺の裏へ回る。


冬になると

毎年同じことをする。


村を見る。


煙を数えるのだ。


屋根の上から

細い煙がいくつも上がっている。


煙のある家は

まだ生きている家だ。


煙の出ぬ家は

やがて荒屋になる。


一つ

二つ

三つ


……二十ほど。


去年と

あまり変わらぬ。


それなら

よい年なのだろう。


戦国では

減らぬ年が

よい年だ。


昼になると

小僧どもが雪を集めていた。


境内の隅に

城を作っている。


枝を槍にして

雪の城を攻める。


一人が倒れ

一人が勝つ。


だが

倒れた者は

すぐ立ち上がる。


子供の戦は

何度でもやり直せる。


本当の戦では

そうはいかぬ。


夕方

囲炉裏の前で

小僧どもが粥を食っている。


芋と

稗と

粟を入れた粥だ。


白い飯ではない。


それでも

椀はすぐ空になる。


寒い日は

温かいものが

ありがたい。


数えてみると

小僧は九人いる。


春には

八人だった。


途中で

二人減り

三人増えた。


寺というものは

人を減らすのが

なかなか難しい。


春の手記に

こう書いた覚えがある。


「小僧を二人減らすべし」


……無理だろう。


来る者は来る。


追い返せぬ。


囲炉裏の火が

弱くなった。


薪を一本くべる。


火が上がり

煙が屋根へ登る。


煙は

屋根を守る。


火は

人を守る。


寺の裏から

もう一度村を見る。


煙が

いくつも上がっている。


二十軒ほど。


去年と

あまり変わらぬ。


それなら

よい年だったのだろう。


戦国の世では

減らぬ年を

豊作という。


来年も

煙が残ることを祈る。


ただ一つ

確かなことがある。


来年も

飯は足りぬだろう。

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